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「もちろん。だって私たち友達じゃん」鈴は桜に即答する。

「ありがとう」桜は言う。

 それから桜はいつもの表情に戻ると、安心したようににっこりと笑った。

 鈴も同じように、にっこりと笑う。

 そうか。よかった。ついに桜も自分の口から恋の告白をするという直接的な方法ではないにしても、律に手紙を渡すことで恋の告白をするつもりになったのか。

 うん。そうか。よかった。よかった。

 鈴はお茶を一口飲んだ。

「それでね、実は鈴に一つお願いがあるの」

「なに?」鈴は言う。

「この手紙を、鈴の手から律くんに渡して欲しいの」桜は言う。

「え? 私が?」

 鈴はまた驚いてしまった。

 私が律に桜の恋の告白を書いたラブレターを渡す。つまり私が二人の恋のキューピット役になるということだろうか? それを桜は私に望んでいるということなのだろうか?

 隠そうと思っていたのだけど、動揺が大きすぎて、それが鈴の態度に出てしまう。

 戸惑っている鈴を見て桜は「……だめかな?」と弱った声で鈴に言う。

「……ううん。別にだめじゃないよ」鈴は言う。

「ただ、急な話だったから少し驚いただけで、……でも、桜さ。こういう手紙はやっぱり自分の手で直接、相手に渡したほうがいいんじゃないかな? そのほうが律くんも喜ぶと思うし、桜だって、せっかく決意をして、勇気を振り絞って、その手紙を書いたんでしょ?」

「うん」鈴の言葉に桜は頷く。

「なら、やっぱり手紙は桜が直接、律くんに手渡したほうがいいんじゃないかな?」と鈴は言う。

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