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「私、初めて会ったときから、律くんのことが好きだったの」と少し間を置いてから、嬉しそうな顔でもう一度、桜は恋の告白をした。
「初めてって、あの石階段のところでの話?」鈴は言う。
「そう。あの石階段のところでの話」桜は言う。
「もう二年も前の話。あのとき、あの場所で、私は律くんに恋をしたの」
桜はそう言ってから、庭に咲いている自分と同じ名前をした桜の花を見つめた。
……鈴も、同じように桜の花を少しだけ眺めた。
すると、ちちっと庭で小鳥が鳴いた。
その声を合図にして、二人は部屋の中で再び向かい合った。
「告白する方法はどうしようかって、すごく悩んだんだけど、……考えた末に手紙を渡すことにしたの。つまり、ラブレターだね」
そう言って桜は前もって用意していた律へのラブレターを巫女服の中から取り出して、そっと畳の上に置いた。
真っ白な便箋に包まれた手紙。その手紙には赤いハートマークのシールが貼ってあった。
一目でそれが恋文だとわかる、わかりやすいラブレターの特徴を持った手紙。
それは初めて、鈴と桜と律が会ったときに、三人の中心にあった律の友達が書いたという桜宛のラブレターの特徴とよく似ていた。いや、その手紙は鈴の思い出の中から、ひょっこりと桜がその手紙を見つけ出してしまったかのように、鈴の覚えている当時の手紙と本当にそっくりだった。
鈴はじっとその手紙を見つめる。
この中に、桜の愛を込めた律へのメッセージが入っているのだ。
「真剣に悩んで、本気で書いたの」桜は言う。
「うん」鈴はそう返事をする。
「鈴は私の律くんへの告白、応援してくれる?」桜は言う。桜はとても真面目な表情をしている。
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