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「でも、どうしても勇気がでないの」桜は言う。
「手紙を受け取ってもらえなかったり、その場で断られたらって思うと、どうしても怖くなってしまって。だからお願いします。鈴さん。小森桜の一生のお願いだと思って、この手紙を律くんに届けてください」
そう言って桜はその場で土下座する。
「ち、ちょっと、桜! そんなことしないでよ!」
鈴は慌てて、そんな桜を元の姿勢に戻させた。
「……手紙、渡してくれる?」桜は言う。
「……わかった。届ける」
そう言ってしぶしぶ鈴は桜のラブレターを秋山律に届けることになってしまったのだった。
小森神社から帰る際、玄関のところで桜はとてもいい最高の笑顔で鈴のことを見送ってくれた。
鈴は笑顔で桜に手を振って、それから小森神社をあとにした。
石階段を降りた鳥居のところで、鈴は大きなため息をついた。それから桜か受け取っら大切な桜の恋の告白が書かれたラブレターを鈴は見る。
……二年前とは立場が逆になってしまった。
二年前。律と初めて出会った場所がここだった。
当時のことを思い出して、鈴はちょっとだけ、寂しそうな笑顔で笑った。
「どうした池田鈴。私らしくないぞ」
鈴はそんなことを自分自身である池田鈴に言う。
それから鈴は「うーん」と言って、大きな背伸びをして、笑顔になって元気に夕暮れの街の中を自分の家に向かって歩き出した。
帰り際、夜に律に電話をして、明日の放課後、学校の屋上で律に桜の手紙を渡そうと、そんなことを鈴は頭の中で考えていた。
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