第20話 多摩縦走と時坂峠と筋肉
ロードバイクを買ってから、毎週末にライドするのを楽しみに生きている今日この頃。
知り合いのかずさんから一緒にライド行かない? との誘いがあったのでホイホイと誘いに乗り、多摩縦走ライドと相成った。あんな事が起こるとも知らずに……
当日、立川集合で待ち合わせ場所にいくとそこには細マッチョと化したかずさんがいた。
聞けば最近筋トレとダイエットにハマっているとのこと。
「筋肉は裏切らない」
どっかで聞いたことあるセリフを言いながら笑うかずさんを見ながら、男は三十路を過ぎると己の体を顧みて何かをせずにいられなくなるのだろうか? という疑問を抱きながらも人の事は言えぬとつぶやき、サドルにまたがりペダルを踏みこみ立川を出発。
それにしてもこの日は季節外れに暑く夏を三か月ばかり先取りした感がある。
途中コンビニで補給をしているとかずさんが何やら怪しい粉を持ち出しボトルに入れている。
「あ、BCAA試してみます?」
なんか聞いたことがある筋肉に良いやつだ。
やはりトレーニングとか始めるとサプリ関係も色々手を出すようになるよなあ。
ニヤニヤしながらコンビニの駐車場で謎の粉を人に勧めるという完全に怪しい人になっているかずさんから俺も粉を分けてもらいにボトルにイン。
うわめっちゃ甘い。
ものすごく人工甘味料の味がする。
「慣れれば大丈夫だよーすごく効くよー」
かずさんが完全に怪しい粉の売人めいて見えてきたがこれもまた筋肉のためなのだろう。
気を取り直して再度出発。
途中かずさんの母校で突然やってくる知らないOBごっこなどをしつつ走る。
今回は多摩ライドという事でルートは俺が引いたので先頭も自然と俺が前を引くことに。
「あっちの道間違えやすくて下って気持ちいいけど戻ってくるとき死ぬよ」
「死ぬのか」
元々かずさんは数年前にロードバイクに乗っていたが、最近復帰してまた乗り出したらしい。
余力がありそうなかずさん、しかし気温のせいでお互いペースは上がらず。
ゆるゆると津久井湖へ行きゼブラコーヒーによって津久井湖を周回し北上。
旧小峰トンネルを抜けて秋川街道から檜原村方面へ、ここらへんから段々と涼しくなってきたせいかペースが上がってくる。
そのまま多摩のローディが自分が住んでる市の役場よりも頻繁に訪れる檜原村役場のカフェで休憩。
「ここだと時坂峠近くってね……」
「時坂峠ってブログに書いた?」
「そうそう」
「坂嫌いだけど行ってみたい」
「坂嫌いとかウソだろ」
しかし行きたいというなら付き合いたいけど今から行くと脚もげちゃうよ。
「ここのケーキおごるよ」
「行こうか」
そうと決まれば早めに動く。
すでに予定の時間より遅れているのでさっくり登って帰路につくかなーと走り出す。
まーダメそうならリタイアしてちとせ屋さんのソフトクリームなめながら待っていればいいかーしかしケーキセットの分は走らねばなあ。
「先行くねー」と軽いペダリングで登坂するかずさん。
その背中はすぐにカーブの先に消えていき。
ここでペースを惑わされて頑張るとすぐに息が上がるのは目に見えているので、マイペースマイペースとつぶやきつつインナーローでじっくり走る。
時坂峠は何回か登った経験があるので最初の頃の斜度がきついのはよく知っている。
なので無理せず余力を残すように最低限の力でペダルを回す。
前はここで足着いたなーとか思いながら登っていく。辛いは辛いが思ったほどではなく、これなら足つきなしで行けるかもなーと思ったカーブの先、かずさんのバイクが横倒しになっているのが目に入った。
横で立っているかずさん。
落車? バテた? 何があったのか心配した時。
「チェーンのミッシングリンクが吹っ飛んだー」
「マジカヨ」
そばまで行くと横倒しになったロードバイクのチェーンがだらんとフレームに垂れ下がっている。
「いやー踏んだらバキっていって、チェーンがね」
どうやらけがはなさそう。
「大腿四頭筋を鍛えすぎたか」
「筋肉に裏切られてるじゃねーか」
「違う! 俺の大腿四頭筋にミッシングリンクが耐えきれなかっただけだ!」
「筋肉に見合った装備にしてくれ」
「アッハイ」
幸いドライブ関係は問題ないようだし、ここは峠の途中、下るだけなら出来んべとゆっくり下り、下のバス停から輪行することに。
改めて考えると幸運が重なってるな。峠の途中で降りた先がバス停だなんて。
その後五日市駅に戻る途中でミッシングリンクを確保したり、かずさんのビンディングシューズのソールが剥がれたりトラブルは合ったものの多摩サイ経由で無事に立川へ帰還。
普段走らない日暮れ時の多摩サイはなかなか趣があって面白かったのは怪我の功名か。
ビアンキストアに寄ったりして解散となりました。
経年劣化は怖いねえ。
アラフォーオタクがクロスバイクを始めました あざらく @azaraku
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