第10話 サイクリングの実績解除
クロスバイクを買って以来、週末が楽しみになっている。
今まで電車で通り過ぎていた道をクロスバイクで走ると色々な発見があった。
その日は初回点検をするためにまずショップに走った。
30分ほど待ち結果は特に問題なし、少しサドルを高くしてもらった。
店長を軽く雑談をし、ロードを勧められたりもしたが、まだ買ったばかりだからと回避して店を出発。
目的地は多摩湖。
前に一度電車で訪れたことがある。
幹線道路を走り、特に問題もなく多摩湖に到着。
ここは湖をグルリと周回するサイクリングロードが整備されていた。
この日はここを一周し、そのあと珍しいトンネルのある自転車道を走ろうと計画していた。
多摩湖サイクリングロードは多少のアップダウンと適度なカーブ、生い茂る木々の中を走るのは気持ちが良い道だった。
歩行者も多いので速度は控えめに。
次々に現れるカーブをクリアーしていくのが楽しい。
案外カーブが楽しい人なのかもしれない。
一周約10キロ、それほど時間もかからずに一周し、休憩の後に来た道を引き返す。
多摩湖サイクリングロードの途中から少し道路を走った先に野山北公園自転車道という短いサイクリングロードがあるらしいのだ。
そこはもともと砂利運搬用のトロッコが走っていた道を自転車道に整備した場所で、途中で小さなトンネルがあると知り行ってみようと思ったのだ。
しかし、多摩湖サイクリングロードから離れる場所を間違え、だいぶ手前で一般道に入ってしまった。
仕方なくそのまま車道を走り、スマホで道を確認し、そろそろここだろうという場所まで来た。
しかし、位置関係が分かりづらい。
自転車道の様な小さな道はスマホのマップでが確認しきれないことが多く、道を見失ってしまった。
どこだろうと行くか戻るか悩んだのちに、とりあえずそこに見える信号機のところまで行こうと走ったら、そこが自転車道だった。
案外近くにあるものだ。
そのままとりあえず起点まで行こうと走る。
途中、横断歩道を越えた先に突然小さなトンネルに出くわした。
どこか冗談めいた小さなトンネル。
遊園地にある小さな機関車のコースにありそうな、そんなトンネルだった。
だれ一人いないトンネルを走り出す。
中は涼しく、自分の自転車の音だけが反響して聞こえる。
トンネルはすぐに終わり、出た先は住宅街の真ん中といった風情だった。
こんなトンネルが身近にある生活とはどんなものかと思いを馳せるが、案外大した感慨はわかないのだろうと思いながらさらに走る。
その先には同じようなトンネルが続いている。
トンネルを抜けるたびに、緑は濃くなっていく。
そしてかわいらしい印象さえあったトンネルも次第に不気味に雰囲気を感じるようになった。
最後のトンネルを抜けたさき、四方を木々に囲まれた場所にでた。
しいんとした、聞こえるのは風に揺れる木の葉の音だけだった。
しばしその場で休み、そこから来た道を引き返す。
時折スマホを取り出しトンネルの写真を撮りつつ、自転車道を走る。
車道を横切るたびに出くわす車止めや信号、ずうっと走るサイクリングロードとは趣が違うが、木々の間をゆったりと走る道はまた違った楽しさがあった。
しかし、その道も案外早く終わる。
横田基地にぶつかるのだ。
今回はここから先はあまり考えてなかったが、案外疲れていたので昭和記念公園を経由して帰ろうと地図を確認して走りだす。
見慣れない車道を走る中、時折残堀川の標識が目についた。
多摩湖サイクリングロードを調べている時に見た記憶がある。
自転車で走れそうな道もあるが、今回はパスして昭和記念公園に向かおうとペダルを回した。
しかし、慣れない道は簡単に迷えるものだった。
気づくと思っていた場所とは違う道を走っていたり、進む方角が違ったりしていた。
そんな中残堀川の標識がやたら目についた。
傾く夕日に焦りながらもなんとか昭和記念公園の近くに出る。
ここらなら自宅までのルートはよく知っている。
気楽な気持ちで最高速チャレンジ等をしていると、またしても残堀川の標識が目に入った。
帰宅してから改めて残堀川を調べてみるとやはり自転車道が整備されているようだった。
さらに柳瀬川を経由して荒川サイクリングロード、彩湖の近くに出れるらしい。
サイクリング中のちょっとした発見があらたなルートを開いてくれた。
荒川サイクリングロードにアクセスするのは幹線道路を使うしかないかと思っていたのでこれは嬉しい発見だった。
オープンワールドゲームのランドマーク発見で新たなクエストが追加された。
そんな少し不思議な気分だった。
『残堀川を発見しました、あらたなルートが登録されました』
そのうち彩湖に行ってみようと思います。
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