変態さん?とトラッカー トト

第69話 変態さん?

 「・・・」「うぅん、・・・みっ、道が、違う」

 「・・・」「もっ、もぉ~」

 「・・・」「かっ、・・・替え、持ってない」

 「・・・」「やっ、・・・いやっだたらぁ~」



 ドロシーの声がした途端、風が無いのに葉がかさかさと音を立てる。

 闇の中に闇が生まれ、はっきりとそこが周りより暗い事が見て取れる。

 その闇は小さな点から始まり、ずぅーと大きく広がり、光だけでなく熱も奪う。


 黒い球体の周囲にきらきらと、街灯の光を反射する物が現れる。

 闇の中に生まれた闇が瞬時に消えると、きらきらとちゅうを舞う物を押しのけ彼らが現れる。


 「よっ、久しぶりだな」「ゆたか、久しぶりだね」「がう」「わん」

 「ドロシーは」ドロシーが出てこない。


 「ほらドロシー出て来いよ」「今更だよドロシー」「がう」「わんわん」

 案山子かかしとブリキがドロシーの手を引いて、闇の中から連れ出してくれた。


 「ドロシー、僕の可愛いお嫁さん、こっちに来て」「ゆたか、怖くない」

 「正直しょうじき、一番最初に見た時は驚いた」

 「ほらなぁ~、やっぱりこいつ、チキン過ぎて動けなかったんだぜ」


 「でも今は違う、こっち来て」

 僕はドロシーの、つるつるてけてけの顔を、その頬を両手で囲む、すべすべだ。


 「素敵だよ、ドロシー、うへへへっ」ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。

 「ねぇ、ゆたか、僕思うんだ。のぺらぼーの顔を愛撫あいぶして、欲情するのは変態さんじゃないかな」


 「なっ、なんだよ。ブリキ、可愛いお嫁さんに、こぉ~、なんだ色々、色々したいって思うのは、男のさがだ、普通だ」

 「ゆたかのえっち、変態」


 「ドロシィ~~~」僕はドロシーをぎゅっと抱きしめる。

 「ひゃう」「ドロシー、ドロシー、ドロシー、可愛いよう」


 「この親にして、この子有り、って誰か言って無かったか。なぁ、ライオン」

 「がぅうぅ」「トトはどう思う」「やっ、やぁん、ゆたか、お尻お尻」


 「あのさ、ゆたか」「ブリキも後でちゅうしてあげるよぉ~」

 「いっ、いやぁ、僕は、・・・かっ、案山子かかしを先にはむはむしてあげてよ。僕、後で良いよ」


 「がうぅぅっ」「ライオンとがってるぞ、ちゅうしよう」ぶちゅ~~~~~うっ。

 「わんわんわん」「あっ、トト」トトが飛びついて来た。

 「おーっ、トト、相変わらず格好良くて可愛いなぁ~~~、ちゅうしてかみかみしちゃうぞぉ~」


 「おいっ」「案山子かかし、はむはむして欲しいのか」

 「いやっ、あのさ、ゆたか」「ブリキぃ~、君の瞳は1万ボルトだよ」

 「あ、有難う。ちなみに僕は100万ボルトだよ、ゆたか


 「おい、ゆたか」「何だよ、案山子かかし、順番だぞ」

 「順番って、ドロシーのお尻ばっかりじゃないか」


 「あ~、悪かったよ案山子かかし、さぁ~、おいで」

 「あっ、あ~、後でな」「どうしてだよ」

 「西の悪い魔女、ほっといて良いのか」



 「・・・」「こっ、・・・こんなとこ、連れて来てぇ~」

 「・・・」「ほっ、んとぅに、入るのぉ~」

 「・・・」「えっ、・・・えっちぃ、なんだかあらぁ~」

 「・・・」とんとんとん。「せっ、・・・せきにぃん」



 「あっ、あーーーーーーっ」

 ぱっちん。「ゆたかのばかぁ、ルイーズの事忘れてたの」


 「そっ、そんな事無いよ」「ルイーズに言い付けるからぁ」

「いっ、いやっ」ぽん。「ドロシーが可愛い過ぎるのが悪いんだ。う~ん」


 「えーーーっ、私の所為せいぃ~、じゃぁ~仕方ないかなぁ~」

 「ドロシー、それはあんまりだよ。可愛そうだよ」

 「さすがの俺も、それは言えないよドロシー、ゆたかも酷いなぁ~」

 「がうぅぅぅ」「わんわん」

 「悪かったよ。ルイーズの事を忘れてた訳じゃない。ドロシーが可愛いからつい」


 「ゆたか、それでどうするつもりなのさ、僕達まで呼び出して」

 「そうだ。俺達が皆こうして出て来た時は、他の人間にも俺達が見える。結構危険だぞ。誰か一人でもドロシーと一緒になっていれば見えないが、正確には人間か動物に見えるはずだ」


 「ルイーズを探すのを手伝ってくれ」

 「いいとも」「そうだね、僕も手伝うよ」「がうっ」「わんわん」


 「それでね、皆は妖精さんなの。ルイーズが特別な力を持ってるって」

 「俺達が妖精かどうかは知らないし、特別な力と言うのも持ってない」


 「そうだねぇ~、案山子かかしは耳が良いぐらいだし、僕は見た通り目玉だから目が良いくらいかな。あー、ライオンの声はどんな状態でも戻せるかな、トトは犬だから、鼻がいいかなぁ~」


 「だなぁ~、この状況なら、トトとライオンが役に立つんじゃないか。相手は姿を変えるんだろう。ライオンなら元の姿に戻せると思うし、魔女が異常な状態ならそれも戻る。トトなら何時いつも魔女の匂いを嗅いでいるから、すぐにでも追えるんじゃないか」


 「トト、何時いつルイーズの匂いを嗅いだの」

 「何をとぼけているんだドロシー」

 「そうだよ。大好きな魔女の匂いを、毎晩ベットですんすんしてるじゃないのさぁ」

 「しっ、しっ、しっ、してない、してないからあーっ、ばかあーーーっ」


 「トト、ルイーズの匂い、追いかけられるか」

 「わんわんわん」トトを下に降ろす。「トト頼めるかい」「わん」


 「OKって言ってる。じゃぁ僕と案山子かかしは、ドロシーと一緒に居るよ。それで周りに気づかれる事は無くなると思うよ」

 「俺は戻るから、ゆたか約束は守れよ」

 「分かった、ドロシーが泣いて嫌がってもはむはむするよ」「ばっ、ばかぁ」


 ドロシーも案山子かかしも赤くなった。やっぱり連動してるのか。

 「ぼっ、僕もだよ、ゆたか」「見つめるよ100万ボルトの瞳」

 「じゃあな」「またね、ゆたか

 そう言うと、ドロシーの顔が、闇をまばゆく照らし、熱風をまき散らした。

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