愛してるとマックスと桜

第65話 愛してる

 あー、あったま痛い、いもちわるいぃー、・・・最悪の気分だあー。


 「うっ、うーーーん。」

 「「あっ、ゆたか。」」

 「良かったあ~。」

 「まだ早いよぉ~。」

 あ~、ドロシー、ルイーズ、泣きすがる二人を抱きしめる。

 しかし、力が思うように入らない。


 「あ~~~、・・・僕は。」

 「ゆたか様は、御三方が首にしがみ付いた為、頸動脈が圧迫され、意識を失われ、呼吸も一時止まってしまわれたのです。」

 腕に力を込める。「ドロシー、ルイーズ有難う。」

 僕はてっきり、二人が呼吸を回復させてくれたのだと思った。


 「私じゃないの。」

 「ドロシーじゃないの、ルイーズ。」

 「私も、・・・違うのぉ。」

 「じゃあ、ラヴさん。」

 「私で御座います、ゆたか様。」

 「え~、マリオンさん。」まだだるい。


 「私が、マウス・ツー・マウスを行いました。」

 「はあー、それはどうも。」


 「嘘っ、マリっ、キスしてただけじゃないっ。」

 「はいぃ、私はマウス・ツー・マウスを行いました。」


 「「 「キスよねっ。」 」」

 「いいえ、マウス・ツー・マウスで御座います。」

 「でも、そのお陰で僕の呼吸が回復したんだし、有難う御座います。」

 二人の体温を感じる事が、こんなに嬉しいとは、柄にもなく泣けてしまう。


 「いいえ、呼吸は自己回復なさいました。」

 「ゆたか、私やルイーズじゃない女の子にキスされて、泣くほど嬉しい。」

 「いやっ、ちょっ、ドロシー。」


 「ドロシー、ゆたかが、ゆたかが、ゆたかのあほーっ。」

 「ばかあーっ、ルイーズ行こう。」

 ダメだ、行かせない、行かないでくれ、僕は、力の限り抱きしめる。


 「お願いだ、行かないで、生きて、二人の暖かさを、今こうして感じる事が出来て、とても嬉しんだ、行かないで。」

 「「わあーーーん。」」

 「ゆたかあーーーっ、」

 「ゆたか置いてっちゃやっ。」


 「ドロシー、ルイーズ、大好きだよ。」

 「ここは『愛してる』って言うとこじゃないかな、ぐしゅん。」


 「ゆたかぁ。」

 二人が涙と鼻水でべとべとになった顔で覗き込んでくる。

 「お嬢様。」

 「私もあんなのが良い。」


 「ドロシー、ルイーズ、あっ、・・・あーー。」

 「「何、ゆたか。」」

 おっ、お~~~、目が、二人の目が、うるうる、きらきらしてる。


 「ではお嬢様、こう致しましょう、人口受精でお子をおもうけになってはいかがでしょうか。」


 「あーー、あ、あ、あ。」

 「「ゆたか、早くぅ~。」」


 「それなら確かに、あの男でなくても、でぇ~もう、何だかなぁ~。」


 「あー。」

 「「ゆたかぁ~。」」揺すらないで。


 「お嬢様。」


 「マリオン。」「愛してる。」


 「がこの身を持ってゆたか様から採取いたします。」


 ぱちん、ぱちん。「「もうっ。」」二人が僕の胸を叩いた。

 「ルイーズ、行こう。」

 「ううっ、ひぐ。」

 「ドロシー、愛してる、ルイーズ、愛してる、行かないで、お願いだ。」

 「「うん。」」

 「ドロシー、ルイーズ、愛してる、愛してるよ。」ちゅっ、ちゅっ。


 「ドロシーも、ルイーズも可愛いお顔がべとべとだ、お顔を洗っといで。」

 「うん、行ってくる。」

 「ほら、ドロシーも。」

 「ゆたかは。」

 「僕はもう少し、ここで横でいるよ、まだ頭痛がするし、体がだるいんだ。」


 二人と離れるのは名残惜なごりおしいが、腕を開いて行くようにうながす。

 二人も渋々と言う様子で洗面に向かった。


 「ラヴさん、マリオンさん、申し訳ありませんが、今日は引き上げてくれませんか、明日から依頼は実行しますから、ラヴさんのお父さん、お母さん、二人が通り抜けたら閉めて下さい。」


 「まあ、婿殿むこどのの体調を優先しなくては、ラヴお部屋にお帰りなさい。」

 「仕方がない、ゆたか君は死んでしまうところだったからな、今日は部屋に帰りなさい、ラヴ。」

 「お嬢様、本日は諦めましょう、ゆたか様の子種こだねは私がこの身を。」

 「マリオンさん、勝手な事言ってないでラヴさんを連れてって下さい、僕は早い目に休ませて頂きます。」

 「お嬢様。」「うん、分かりましたわ。」


 あ~、項垂うなだれて、隣の部屋に帰って行くラヴさんはちょっと可愛そうだ。

 ぷしゅーーーうっ。壁が閉じた、そこに扉があるなんて全く分らない。

 あーーー、何って落ちだよ、死にかけるし。


 でも、今までちょっとくさくて言えなかった事が言えた。

 愛してる、ふっふっふっ、死んでも付きまとっちゃおっ。

 ・・・怖がるかなあ。

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