第64話 キカイべー01(ゼロワン)、ジロー

 「マリオンさん、あなたの仕業しわざですか。」

 「何がです。」

 「『何がです』じゃねーよ。」


 「ゆたかが本当に怒ってる。」

 「怒るの初めてみたぁ、私やドロシーが何かしてもキスしかしないのに。」

 「何だよこれ、プライバシーの侵害しんがいだよ、戻して下さい。」

 ピィーーーーー。「お湯、沸きましたよ。」

 「分かってるよっ。」


 「まあー、皆様、お嬢様も、コタツの周りにお座り下さい、ご説明いたします、お茶は私がお入れしましょう。」

 僕はこの怒りを何処にぶつければ、ドロシーとルイーズが僕の両隣に来て、金属の壁に向かって座る、仕方なくと言う感じで、ラヴさんがその隣に座る。


 余程よほど落ち込んでいるのか、ラヴさんが大人しい。

 マリオンさんは、勝手かってしたる何とかで、何処に何があるのか知っているようだった。

 「どうぞ、し上がって下さい。」

 「家のお菓子ですけどね。」


 「では、ご説明いたします、本日よりお向かいに越してまいりました、私がおつかえいたしております、真法まのり・クリスティアナ・ラヴ様です、私は執事のマリオン・アームストロングと申します。」

 「知ってます、説明になってません、何ですかあの壁、僕達が家を出たのは1時間ぐらいですよ、かなり前から用意してないとできませんよね。」


 「ゆたか、落ち着いて、ドロシアが怖がっちゃうよ。」

 「あっ、そ、そうだよゆたか、ルーシーも怖がってるよ。」

 二人が両側から僕の手を取って、自分のお腹に持って行く。

 二人のお腹に手を当てて、さすってみた、う~ん、何か、こう、頑張らないと。


 「ごめんね~ぇ、ドロシアもルーシーも怖くないよぉ~、パパちょっとだけお姉さんを、めーってするだけだからねぇ~。」

 「有難う、ドロシー、ドロシア。」ちゅっ。「えへへっ。」

 「有難う、ルイーズ、ルーシー。」ちゅっ。「ふふふっ。」

 「う~っ、わぁーーーーーーーーーーーーーいっ、いじわるするぅーーー。」

 もう、何だよ、僕にどうしろと、隣のドロシーがラヴさんの背中をさする。


 「それでっ、この超格好かっこ良い壁は何です。」

 「これは真法まのり家が総力をあげて開発した、秘密基地用ユニット、キカイべーゼロワン、不完全な両親回路を持ったジローです。」

 ゼロワンなのに、どうしてジローなんだ、それに不完全なりょうしん回路ってなんだよ。


 「りょうしん回路って何ですか。」

 「本来は、旦那様と奥様の代わりに暖かく見守ってくれるのですが、何分、不完全で、判断基準が旦那様と奥様でして、元の人格に不安がありますので、何とお答えして良いものか。」


 「えーっと、この壁にはあー、ラヴさんの、ご両親さんの、擬似人格が埋め込まれている、と言う理解で良いですか。」

 「疑似人格、ゆたかあれ欲しい。」

 「ゆたか、私も欲しい。」

 「いやいや、二人共。」

 「「ねぇ~ゆたか。」」

 「理科系として気持ちはわかるけど。」

 二人の目が爛々らんらんとしてる。


 「あそこに付いてるのは生体認証の様に見えるんですけどぉ~、もしそうなら、扉があるんですよね。」

 「「触ってもいい。」」

 「あっ、二人共。」二人が壁の方へ行った。


 ぺたぺたぺた。「ふむふむ、アルミ合金とチタンね。」

 ぺたぺたぺた。「ルイーズ見つけたよ。」

 「あー、これビッチども、私に触るんじゃない。」壁が喋った。

 「ドロシー、教育がなってないみたい。」


 「あなた、真法まのり当主とうしゅが、その様なはしと、じかに話すなどあってはなりません。」

 「ルイーズ、再教育が必要なんじゃないかな、幸い口がUSBになってるし。」

 「あっ、もう一つある、本当だUSBになってる。」

 「ドロシー行こう。」

 「うん、私達が、何が正しいか教えてあげるっ。」


 ばたばたばた。「あっ、あのう、これ、試作機で、凄く高価なんです。」

 マリオンさんが、今までと違う二人を見て、狼狽うろたえている。

 意外と気弱あんだな。


 「マリィ~、この方が、私の可愛い可愛いラヴが見初みそめた殿方。」

 「そうですよ、奥様もどき。」

 「まあ、何と無礼な。」

 「お前は奥様ではない。」


 「なっ、なぁ~、すず、やはりその、ラヴの結婚はまだ。」

 「お黙りなさい、真法まのり家本家の後継者はラヴだけなのです、一刻も早く、孫の顔を見せてもらわねばなりませんの、さあラヴ、早く帰ってあのラヴマシーンと契りなさい。」


 「マリィ~、壊して良いぃ~。」

 「お止め下さい、お嬢様、フラーレンを使って実現した量子デバイスなので。」

 「へぇ~~~~、フラーレンをねぇ~、ドロシー、面白い物見つけたね。」

 「うん、それにきっと二基積んでるよ、触り甲斐がいありそう。」

 二人がノートパソコンを三台、クリップ、小型のオシロ、デジアナ、テスターを持って帰って来た、デジアナどっから持って来たんだろう。


 「私達に任せて。」

 「うん、しっかり教育してあげる。」

 「あのっ、壊さないで下さいねっ。」

 「次期真法まのり当主とうしゅの私が許可します。」

 「あ~、待って、お嬢様困ります。」

 「壊してっ。」

 「「お任せあれぇ~。」」


 きゃっきゃっきゃっ、わいわい。「おおお~~~っ、すっごーいぃーーー。」

 「うっわっ、なにこれ、おもしろーいぃー。」

 「あっ、これ、中を見てはなりません、やめぇー・・・。」


 「わっ、おもろい、ファイバー入れ、観測したら状態が確定した。」

 「ドロシー、これのプログラム見つかった。」

 「うん、止まったら直ぐ見つかった。」


 なるほど、観測者がいると、量子状態を保てないのか。

 「ちょっと、あの、ドロシー様、ルイーズ様、壊さないで、私のお給金が、止めて下さいぃぃぃっ、色々ローンが残ってるんですぅぅぅっ。」

 「「でぇきたあーーーっ。」」

 「教育的指導。」「完了ですぅ。」


 「あなた達が従うマスターは誰。」

 「それはもゆたか様ですわ。」

 「うむ、ゆたか君、ラヴをよろしく頼むよ。」


 「「えぇっ。」」

 「よろしいのですね、お父様、お母様。」

 「え~、え~、立派なお婿むこさんを迎える事が出来て、とても嬉しく思いますよ。」


 「ちっ、違うの、ルイーズ、どうなってるの。」

 「あっ、あれ、ていうかあ、ドロシー、どっか短絡させたんじゃないの。」


 「ゆたか君、同じ入り婿だ、何でも相談に乗るよ、どうだい、これから飲むかね。」

 「あ~、はあ、お父さんが飲むなら。」


 「「ゆたかぁ。」」

 あーーーっ、しまった。

 「幾久いくひさしくお頼み申します。」

 三つ指つかなくていいらっ。


 「ルイーズのお父さんにあった時のシミュレーションがそのまま出た。」

 「ほら、これ、私のお父さん用だから、無効、無しだからあーーーっ。」


 「ゆたかの浮気者、わあーーーん。」どたどたどた。

 「どっ、ドロシー、待って、ドロシーーーーっ、ルイーズ、ルイーズは。」

 ちょっ、ルイーズ。


 「うっ、うっ、うっ、うわあーーーん、ゆ~だ~かぁがうわぎしだぁーーーっ。」てとてとてとっ。

 「ルイーズ、待って、ルイーズ、ねっ、話し聞いて。」


 「あっ、あなっ。」

 「頬染めなくていいから、違うから。」

 「あなた~。」「飛びつかないでっ。」


 「いやあーーーっ、ドロシー、ドロシー、ゆたかが、ゆだかがあー。」

 どたどたどた。

 「待って、ルイーズーーーーーーっ。」


 「あ、な、た、・・・う~ん、・・・とっ、床入り致しましょう。」

 ぷしゅーーーうっ。壁が開いた。

 「ささっ、婿殿むこどの、早く赤子の顔を見せて下さいまし。」

 「小さくて可愛かったラヴが、うっうっ、ゆたか君、娘を娘をぉー。」

 「お嬢様、おめでとう御座います、これで真法まのり家は安泰で御座います。」


 どたどたどたどたどた。「「ダメだから。」」

 僕のお嫁達さんが帰って来た、良かった。

 どさ、どさ。「離れろっ。」「どいてえっ。」

 「ぐえっ、ちょっ。」


 「いやーーー、いやいやいやぁっ、離れないぃーっ。」

 あっ、息が、・・・どっ、ドロシー、・・・ルイっ、ズ。

 「じ、ぬ。」

 「皆さん、離れて、ゆたか様が、息ができてません、離れてえっ。」

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