ラヴさんは帰りたくない

第61話 予想を裏切らない落ち

 多少、時間をロスしたが、始めはルイーズから、30分後にドロシーと交代する事になった。

 二人共、この前買った服装で、シャツにパンツ、かかとの低い靴、トレンチコート。

 帽子は二人が手を加えて、シャーロックホームズ・ハットと言う物になっていた。


 更に僕達は、緊急きんきゅう時に全力疾走しっそうしなければならない。

 下見をした後、手に荷物を持って走るのは、難しい事が予想され、皆で相談した結果、3人御揃いのウエストポーチバッグを急遽きゅうきょ発注した。


 大きさは13.5×7.5×26と、トランシーバーもいれるので大きめだ。

 ちなみに、ルイーズが『これが良い』と言うので本革製に、一つ1万9440まどか、×3と結構な出費だ。


 届いた品物はとても良い、ベルトはナイロン素材、これなら少々手荒に扱っても大丈夫そうだ。

 ドロシーは『絶対経費で落として見せる』と意気込んでいる。

 しかし、二人共腰が細い、パンツにベルトを通して止めている、ポーチは前。


 「ち、えっち、配置に付いた。」

 「ト、キャット、了解、感度良好。」

 「トム、ストーム、到着しました、本日、ミンチが特価。」

 「ち、えっち、ストーム、場所が特定される様な事言っちゃだめだよ。」


 「ト、キャット、明日ハンバーグにする、感度良好。」

 「トム、ストーム、御免なさい、ハンバーグは考えとく。」

 「ち、えっち、後は定期連絡をして。」

 「ト、キャット、了解。」

 「トム、ストーム、了解。」

 「ち、えっち、了解。」


 それからは定期連絡と言うより、コールサインを除けば日常会話だった。

 「ト、キャット、ねぇ、ドロシー、あの番組録画入れといてくれた。」

 「トム、ストーム、えーっ、あれはルイーズが入れとくって言った。」

 「ト、キャット、私言ってない、ドロシーが入れとくって言ったじゃん。」


 「ち、えっち、僕が入れといた、それに今日はDVDを見る約束だろう。」

 「ト、キャット、見せて。」

 「トム、ストーム、くれない。」

 「ち、えっち、御免なさい、いやでも、両隣にこんなに可愛いお嫁さんが。」


 「ろに後ろに、誰かいる、ゆたかゆたか、スンスンしてるよぉ~。」

 「ち、えっち、ルイーズ少しだけ我慢して、すぐ行く。」

 「トム、ストーム、私も行く、ルイーズ頑張って。」


 待ち伏せをしている公園は60cmぐらいの柵で仕切られ、その内側に背の高い木が植えられ、その下に背の低い木が植えられている。

 しかし背の低い木はびっしりと植えられていないので隙間がある。

 公園に到着した僕は、木々の隙間から策をまたいで、一旦いったん身をひそめ、ルイーズとその周辺を視認しにんする。


 「ち、えっち、ルイーズ、じっとしてて、後ろに人影ひとかげがある。」

 「トム、ストーム、私も視認しにん出来た、けど、暗くてどんな人かは分からないの。」

 「たか、ゆたか、早く早くコートの中に入って来てすんすんしてるう。」


 「ち、えっち、ルイーズ、もう少しだ、今近付いてる、ドロシー。」

 「トム、ストーム、私、直ぐそば、ルイーズ、コートからゆっくりと手を抜いて。」

 「ロシーーー、ゆたかぁ~~~。」


 「ち、えっち、ルイーズ、振り向いちゃだめだよ、コートから腕を抜いたら教えて。」

 「尻お尻さわあってるう~~~。」

 「イーズ、ルイーズ、落ち着て、腕ぬけた。」

 「ううっ、お尻お尻お尻に何かあたってるうううう。」

 「イーズ、コートを脱いで前に走って。」

 「いやあああああああああっ。」


 ルイーズがコートを脱ぎ棄て、前方にダシュ。

 ルイーズのお尻を襲っていた人物は、ルイーズがいなくなった事で両手を地面に付く、加えて、コートがおおかぶさり、逃走とうそうする方向を見失っている。

 「うりゃぁぁぁぁぁぁっ。」

 「やああああああああっ。」


 僕とドロシーが犯人に伸し掛かり、取り押さえる。

 「ドロシー、こいつの足首に手錠掛けてっ。」

 ルイーズが帰って来てドロシーを手伝う。


 ばたばたばたばた。「放して。」

 「こいつめ、私のお尻はゆたかだけなんだから。」


 ばたばたばたばた。「放して。」

 「ルイーズのえっち。」

 「ちっ、違うのぉ~、あほおーーーーーーーっ。」


 がちゃがちゃ、ギリギリ。「ドロシー、こっち押さえて、任せて。」

 がちゃがちゃ、ギリギリ。ばたばたばたばた。「放して放してよお~~~。」


 「ドロシー、ルイーズ、今度は両手、僕が押さえてるから、ポーチから手錠出して、こいつに掛けて。」

 「「あい、sir!」」がちゃがちゃ、ギリギリ。がちゃがちゃ、ギリギリ。


 「二人共離れて。」

 「「あい。」」二人が僕の後ろに隠れる。

 「僕の大切な人に何てことするっだあっ。」


 犯人は両手両足に手錠を掛けられ、さすがにあばれるのを止めた。

 つるるるるっ、つるるるるっ、がちゃ。

 「マリオンさん捕獲ほかく成功です。」


 「はい、それはよろしゅうございました、直ぐに車でお迎えにあがりますので、暫くその人とご歓談かんだん下さい。」

 「出来るだけ急いでお願いします。」

 「はい、2~3分お待ち下さい。」


 「ドロシー、ルイーズ、マリオンさんが直ぐに来る、まずコートを返してもらう、一体どんなやつだっ。」

 僕はルイーズに酷い事をしたやつからのコートを乱暴らんぼうぎ取る。


 ばさばさ。僕達は一瞬、声を失った。

 おどろいたからではなく、ドロシーもルイーズも僕も、心のどこかで、こんな“落ち”じゃないかなあーっと思っていたからだ。


 「「 「「ラヴさん。」」 」

 「押し倒されるってこんな感じ。」

 「「ちっがうからっ。」」

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