第36話 自転車屋さん

 そうして歩き出したが、やっぱり二人は目立つ、前から来る人はだいたい視線を向けている。


 うーん、落ち着かないな。

 自転車屋さんに着くと、店員さんが二人を避けている様に思えた。

 二人が近付くと、皆別の用事がある風にして離れていく。

 女性の店員さんが、避けているうちに僕の近くに来た。


 「あの~。」「あっ、はい、何でしょう。」

 「ドロシー、ルイーズ。」

 「何。」「はーい。」二人がこちらに来る。

 あー、厄介な客に捕まったと言う顔だ。


 「すみませんが、二人の話を聞いてあげてくれませんか。」

 「いえ、私英語は。」

 「二人共、言葉は話せますから。」

 「「あい。」」


 「何か希望がありますか。」

 「パンツの見えないの。」

 「踏み込みの軽い物。」


 「パンツは短いスカートだとみえちゃいますよ。」

 「え~ぇ。」

 「踏み込みは、変速の有る物ではどうでしょう、こっちにどうぞう。」


 店員さんが二人を案内してくれている、僕も語学は苦手だ、分らなくはないけど、感じ悪い。

 でも店員さんもプロ、一度ひとたび仕事に入ると、その手腕しゅわんを発揮してくれた。


 二人が買ったのは、所謂いわゆるママチャリで、僕は初めて見たが6段変速ギア。

 タイヤは26インチで、後ろに荷台、前にかご、ライトは高輝度のLED、ダイナモ付き、後輪を止めるカギも付いている。

 荷台にロープと結構太目のワイヤーのカギも買った。


 ドロシーは濃い青、ルイーズは赤、保険はルイサさんに相談しよう。

 「有難う御座いました。」

 人の少ない処に行って、ドロシーが自転車に乗ってみた。


 「あ~、私乗れる、乗れるわ、ゆたか。」

 「うんうん、良かった。」

 「私も見て見て。」

 「ルイーズも上手い、上手い。」


 「二人共、帰りはその自転車に乗って帰って、出来る。」

 「私は大丈夫。」

 「ドロシーは。」

 「私も大丈夫よ。」


 「二人共、スマホだして。」

 「「うん。」」

 「これ、このアイコンをタップして、そうそう、これを・・・、ほら。」

 僕は現在地から、家までのナビを出した。


 「「おーっ。」」

 「私もうぅ~、う~っと、・・・あっ、出来た。」

 「私も、私も、え~っと、こうして、えっと、お~っ、で~きたぁー。」

 「はい、じゃ、これ一旦いったん落として、自転車を止めて買い物をしよ。」


 「お昼はどうするの。」

 「うーん、ここで食べて行こうと思ってたけど、随分ずいぶんと混んでそうだから、どうしよう。」

 「私はお家に帰って、ゆっくり落ち着いて食べたい。」

 「ルイーズは。」

 「私もドロシーと同じ、何かここざわざわして落ち着かない。」

 「遅くなるけどいい。」

 「大丈夫。」「OK。」

 「じゃあ、お惣菜そうざいとか、パンとかを買って帰ろう。」

 「「うん。」」


 僕達は食料品や日用品の有る店にいった。

 普段の買い物に行っている店に比べると凄く大きいので色々見て回ったので時間がかかった。


 「ケーキ屋さんがあってよかったね。」

 「うん、買い忘れるところだった。」

 「洋服とケーキは僕が持って帰るよ。」

 「え~、ケーキは私が持つ。」

 「危ないよ、かごに入れたらぐちゃぐちゃになるだろう。」

 「ぶうー。」

 「きっと自転車の方が早いから、先に帰って、お昼の用意をしてて。」

 「「は~い。」」

 「じゃ、帰ろう。」


 僕は二人をナビで、近くまで道を案内する。

 「ほら、この道を真っすぐ行けば、最初にバスに乗った処に着くから、そこからは地図がなくても家までいけると思うんだ。」

 「うん、多分わかる。」

 「大丈夫、大丈夫。」

 「車、くれぐれも気を付けてね。」


 「うん、コート貸して、着ていく。」

 「私も着ていく、少し冷えて来た。」

 「はい、帽子はかごに入れてカバーを閉じた方がいいと思う、車の風圧飛ばされるかもしれないから。」


 「ゆたか心配性しんぱいしょう。」

 「とにかく注意して。」

 「「あい。」」

 「早く帰って来てね。」「待ってるぅ。」


 二人共自転車で帰路きろにつき、僕もバス停まで急ぐ。

 あっ、財布、返してもらって無い。

 慌ててポケットを探る、缶コーヒーの残り380まどか、バスは320まどか、良かったあ~。


 寒いのに汗をいてしまたが、小銭を確認して安堵あんどした。

 これで安心してバスに乗れる、早く帰って二人に会いたい。


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