警察に任せたいから、断り営業。

第29話 警察に任せたい

 この部屋を事務所として整理した時、ホワイトボードとプロジェクターも、事務所の備品として、経費に計上けいじょうして買った。


 まあ、依頼がないと意味がないけど、だから普段は寝室にある。

 そして80型のスクリーンで見る映画は良い、ただスピーカーが内臓の物しかないので結構残念、儲かったらスピーカーも欲しい。


 がらがら。

 「すみません、お茶とお菓子を隣の机に置かせてもらっていいですか。」

 とにかく狭いので、その都度物を動かさないと、置く場所がない。

 「はい、私は構いません。」

 お茶とお菓子を僕の机に動かしてもらい、プロジェクターを来客用の小さいテーブルに置く。


 延長ケーブルで電源を確保し、スイッチオン。

 ルイサさんが、ゲートを作った物置を半分塞いでいるホワイトボードに、ドロシーが使っているパソコンの内容が表示される。


 「それじゃ、うーんっと、お名前をお聞きしてませんでした、僕は木下ゆたか、僕の右側の可愛い子がルイーズ、左の可愛い子がドロシー、二人共僕の助手を務めます、それであなたは。」


 「あのう、フルネームですか。」

 「出来れば、契約の時も、フルネームでお願いします。」

 「私は、真法まのり・クリスティアナ(Christiana)・ラヴ(Love)と申します、私立千波大学付属高等部2年です。」


 「被害に遭われた方は。」

 「妹音いもおと百合ゆり 私立千波大学付属中等部2年です。」


 「ここまでお聞きした事柄ことがらをまとめると、百合ゆりさんが、被害ひがいににあった場所は、青い葉っぱの森公園、そしてここ一月ほど、そこでレイプ未遂事件が多発している、ここまで間違いないですね。」

 「はい。」


 「百合ゆりさんを襲った犯人は、え~っと、何てお呼びしましょう。」

 「ラヴ(Love)、愛です。」

 「襲った犯人は、ラヴさんに瓜二つの容姿ようしで男だと。」

 「そうです。」


 「で、百合ゆりさんは、ラヴさんの手の込んだ悪戯いたずらだと思い込んでいるので、被害届を出す事を躊躇ちゅうちょしている。」

 「はい。」


 「このままだと、同じ犯人に再び出会った時、百合ゆりさんは、ラヴさんと思い込んでいる為、受け入れていちゃいちゃする可能性が高いので、犯人をさがして欲しいと言う事ですか。」

 「Yes。」


 「犯人をさがして、百合ゆりさんに被害届を出させる訳ですか。」

 「説得はします、でも百合ゆりが、本当の犯罪に直面したと知った時に、怖がったら、それ以上は何も言わず、私が今以上に愛して上げようと思います。」

 じゅるり。


 「僕が口を挟む事ではないのですが、ここのままあなたの悪戯いたずらとした方が丸く収まるのではありませんか、こう言っては語弊ごへいがあるかもしれませんが、具体的な被害は、・・・無かったようですし、僕としては警察に任せたい。」

 「ゆたか。」

 「何とかならないの。」

 「僕はドロシーやルイーズを危険な目に遭わせたくない。」

 「引き受けて頂けない。」

 「そうです、現状で、全く手がかりがありません。」


 「おぞましい証拠は残してあります。」

 「僕は科学捜査を出来ません、DNAが残っていても、犯人を特定する為の比較対象がありません。」

 「何も出来ないのですか。」


 「・・・出来るとすれば、おとりを使って、現行犯で捕まえる事です、

僕の所では受ける事は出来ません、僕がお世話になっている、ホームズ探偵事務所をご紹介します、あそこなら、人員も経験も機材あります、きっと助けてくれます、お金があれば。」

 「お金ですか。」

 「ゆたか冷たくない、ねえ。」

 「私達も手伝うから。」


 「ダメ、男なのに女子高生に化ける事が出来る、しかも最も親しい人間に成りすます事が出来る奴だ、きっと男に化けるのはもっと簡単だと思う。」

 「私、ゆたかじゃない人は絶対分かると思う。」

 「私も分る、絶対。」


 「それだけじゃないよ、被害が頻発してるから、犯人が一人とは限らない。」

 「複数犯と言う事ですか。」

 「いえ、お聞きした内容からだと、模倣犯もほうはん愉快犯ゆかいはんの可能性です。」


 「警察が動いてない訳ですから、被害届が全く出されてない、もしそうなら、犯人は、どうやってターゲットと親しくしている人間の情報集めたのか、探偵より凄い。」


 「・・・十分な報酬をお支払いすれば、引き受けて頂けますか。」

 「いえ、それは。」

 「どのくらいですか。」

 「いっぱいくれるの。」

 「はい、いっぱい、お支払いします、私のから。」

 「「お断りします、帰って。」」


 「え~~~ぇ、良いじゃないですかぁ~、二人共可愛いしぃ~、わたしぃ~、殿方もぉ~、大丈夫なんですぅ~~~。」

 「帰って。」

 「お引き取り下さい。」

 「いだぁ。」

 「「ゆたか見ないのっ」」

 両側から太ももをつねられた。


 「じゃあぁ、お幾らなら、引き受けて貰えますぅ~。」

 「もう帰って下さい。」

 「出て行って。」

 「ドロシー、ルイーズ。」

 「「だってっ。」」

 一応お客さんだ、穏便おんびんにお引き取り願おう。

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