第26話 怪しいぃ~。

 『依頼をしたい』と言うので、勉強部屋兼探偵事務所の北側の5.5畳の部屋に招いた。


 この部屋は物置みたいになっていたが、二人がお嫁さんに来たので整理した。

 今は僕の机、その後ろに二つ並べてドロシーとルイーズの机がある。

 それと、ドロシーがお客さん用にソファーがある方が良いと言うので一人用の物を買った。

 部屋の大きさと予算の関係で、これ以上大きいソファーは買えなかった。


 あと、ソファーの前に小っちゃいテーブルを置いている。

 ドロシーとルイーズが、紅茶と菓子を持って入って来た。

 「どうぞ。」

 「お菓子も、よかったら。」

 僕達はそれぞれの椅子に座る。

 ソファーは、真っ直ぐではなく、僕達の居る方に傾けて置いてある。


 「あの、失礼ですが、本当に探偵なんですか。」

 「ええ、そうですよ、あなたが入って来た扉の右手の壁に額が掛けてあるでしょう、探偵業届出証明書たんていぎょうとどけでしょうめいしょといいまして、今は警察に届け出をしてないと、探偵業は出来ない事になってるんです。」


 「そうですか、もう一つお聞きしても。」「ええ、どうぞ。」

 「そちらのお二人はどう言う、・・・その」

 「私はゆたかの妻ですっ、はうっ、言っちゃった。」

 「ドロシー。」

 「私もこの人の妻ですっ、うにゅう、・・・いっ、言っちゃった。」

 「ルイーズまで、口外こうがいはしないと約束して頂けませんか。」


 「はい、約束します。」

 「私はいいもん。」「ドロシー。」

 「私も、依頼をするにあたって、お話しなければならない事がありますから。」

 「探偵には、守秘義務しゅひぎむがありますから、依頼主の事は絶対に話しませんよ。」

 彼女は“知ってます”と言う感じでお茶を飲む。


 「では、僕から一つ、依頼をお聞きする前に、お尋ねしても良いですか。」

 「なん、でしょうか。」

 彼女は怪訝けげんな顔をする。

 しかし、僕にして見れば当然の疑問なのだ。


 「僕は、大手事務所の下請けです、広告は出していません、ネットにも。」

 あっ、ネット広告があったか、この後で二人と検討しよう。

 「ここに探偵事務所がある事を何処で知りましたか。」

 彼女が“しまった”見たいな顔をする。


 「あっ、そう、えーと、もっ、毛里もうり探偵事務所にお電話したら、手が空いてないので、こちらをご紹介頂いて。」

 目が泳いでる、わっかりやすい人だなあー。


 「僕は毛里もうり探偵事務所とは、お付き合いがありません。」

 「あっ、だから、そうそう、毛里もうり探偵事務所から、明知あけち探偵事務所を紹介してもらって、そこから紹介を、頂いて。」

 「申し訳ありませんが、お引き取りを。」


 「学校です、学校の女子寮で聞いたんです。」

 どっ、何処の女子寮かな、ばっ、バレてないはず、あっ、あれは後学こうがくの為に、・・・そう、観察と尾行の練習をしてただけだから、ストーキングじゃないよ。


 「・・・どちらの学校ですか。」

 彼女が手応えあり、立場反転、見たいな顔、やだなあー。

 「私立千波大学付属です。」

 あーーー、あそこかあーーー、2年前、起業したばかりの時、尾行の練習を兼ねて、可愛い子を追いかけてたあの頃かあー。


 あそこの通いの女の子をつけて行ったら、女子寮に入って行って、観察してたら、寮の子といちゃいちゃしだして、更に観察を続けてたら、見つかって、寮のお姉様と呼ばれてた子が、目をつむる代わりに、妹と称する女の子の浮気調査をただでさせられた。


 でもおかしいな、調査報告書に、ここの住所書いたかな。

 あーーー、練習も兼ねて、正式な報告書を作成して、渡したかも。

 でもあの子、高等部の3年生だったはず、ひょっとしてあの報告書、引き継がれてるのか。

 「あーーー、そっ、そうですねえー、起業したばかりの時、寮生の方の依頼を一度お受けしましたねえ~、はっはっはっはっはっ。」


 「ゆたか、何を隠してるの。」「かっ、隠してないよドロシー。」

 「隠してないで言って、ゆたか。」「ルイーズも、隠してないよ。」

 「妻に隠し事しないで。」

 「そう、奥さんに隠し事しないの。」

 「いや~、だからね。」

 「「言いなさい。」」「・・・はい。」

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