僕だけの初体験と魔女の血の契約

第11話 僕だけの初体験

 歯磨きを終えて、皆リビングの中央に帰って来た。

 「ゆたか、目を閉じて。」「おっ、おう。」僕は素直に目を閉じた。

 「こっち来て。」ルイーズは、僕の腕に胸を押し当てて、僕を誘導する。

 「じゃあ~、ここに座って。」「おーう。」

 ゆっくりと腰をおろすと、手に何か当たる。

 手触りから、どうも、さっき丸めて壁に寄せた敷物の様だ。


 「これで良い。」「うん、良いって言うまで目を閉じてて、絶対だから」

 「じっとしててね、絶対だからね。」ああーーー、緊張する。

 暫くして、僕の口に心地の良い柔らかな、歯磨きの匂いのするものが押し当てられた。

 僕は驚いてびっくっとする。「目を開けちゃダメ、お願い。」

 「そう、そうか。」


 想像通りなら、ルイーズとキスをしているらしい。

 「う~ん。」僕は正面にいるだろうルイーズを抱きしめる。「ふ~ん。」

 「あーーーーーーーーーっ、ルイーズ、何故キスしてるのぉー。」

 「目を開けちゃダメ、ドロシー、邪魔しないで、これはこう言う魔法なの。」

 魔法、まあ、とってもいい魔法なので、目は閉じとこう。


 「嘘っ、絶対嘘っ、そんな魔法絶対ないからっ。」

 「ふーん、あるんだなーこれが、それにこれ、長い時間維持いじしないといけないから、時間もかかるの、ドロシーは、そ、こ、で、もじもじしてなさーい。」

 「うっ、もうううううううううっ、嘘だったら承知しょうちしなっから。」

 「いいじゃない、ドロシーだって、魔声ませいを使うに決ってるんだから。」

 「ゆたか、続きぃ~。」

 「どっ、どんとこい。」そしてまた、多分キス。


 目を閉じたままルイーズを抱きしめる。

 そのままだと不安ていだから仕方無いよ、うん。

 「う~ん、・・・ふっ、う~ん、はあ、はあ、まっ、まだ、だから、ゆたか。」

 ちゅっ、ちゅっ。「う~~ん。」

 「おーい、まだなのかあー、ドロシーがじれてるぞ。」

 「ふん、う~ん、もっ、もうちょっとだけ。」ちゅっ。

 「う~~~ん、・・・。」ルイーズの唇が僕から離れる。


 「ゆたか、目を開けて、私とドロシーを見て、いっぱい感じて。」

 僕の目の前には、膝にまたがるルイーズ、その奥に視線を移すと、そこは僕の部屋ではなく、何処か作物を刈り取った後の田舎の風景。

 「おーーーーーーーーーーーーーーーっ、何、これ、ここ何処、凄ぉーーーっ。」

 「私の幻影魔法、ここはカンザスの田舎町、あっ、でも気を付けてねっ、幻影だから、部屋の大きさが変わった訳じゃ無いの。」

 「凄い、凄いよ、ルイーズ。」「いっ、痛いよ、ゆたか。」

 僕は余りにもリアルなこの風景に興奮して、腕に力が入ってしまった。

 「あっ、御免。」「やっ、優しくしてね、ねっ、ねぇ~ぇ。」

 ルイーズ、揺すっちゃ、こっ、これ。

 「私、ゆたかなら。」


 「ねえ、トト、この道の向こう、あの丘の向こう、そして青い空の向こうに、私が見た事も、聞いた事もない世界があって、魔法の世界もあるかもしれない。」

 「ドロシィーーーーーっ、もう少しだったのにぃーーーーーっ。」

 「ゆたか、私の事も見てて。」

 そう言うとルイーズは、僕の腕から抜け出して姿を消した。


 「そこに素敵な人が居るかもしれない。」

 「トト、私、行ってみたい、素敵な人に会いたい。」

 「♪Somewhere over the rainbow(どこか虹を超えたところ)」

 「♪Way up high(ずっと上のほう)」

 おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ、ドロシー、うっまっ。

 顔はのっぺらぼーではなく、最初に見た、可愛らしい顔、うーーーっ、素敵だ。

 聞き入ってしまった。


 おっ、竜巻、逃げ込んだ家が、家が飛ばされる、凄い風だ、本当に吹いてる。

 もう少しでスカートが、・・・ああっ、・・・見えた、はっきりくっきり生で見た。

 「私、虹を越えたんだわ。」あっ、誰か空から来た、魔法使い、ルイーズ。

 降りて来た、スカートがめくれあがって、・・・おっ、全部見えた。

 「あなたは良い魔女、悪い魔女。」「私はカンザスから来たドロシーよ。」

 「マンチキンが東の悪い魔女を家ごと倒したって言ってるわ。」


 おわっ、いつの間にか、誰かが飛ばされてきた家の下敷きに、赤い靴が出てる。

 「私はグリンダ、良い魔女、マンチキン達は大喜びよ。」

 「マンチキンて誰なの。」「この街に住んでる小さな人達よ、出てきなさい。」

 「ほら、ゆたか、ねぇーってば、ゆたか。」

 「えっ、僕。」「そう、ゆたか、早く。」

 えーっ、これ参加型なの。


 「♪さあ、皆出てらっしゃい、星から降りて来たお嬢さんに挨拶をして。」

 「ちょっと、ルイーズ、僕台詞とか解らないよ。」

 「大丈夫、私がいっぱいキスしたから、教授の魔法、って、ラノベで読んだ。」

 ラノベって、あっ、解る。

 「♪マンチキン市にようこそ。」すげぇー。


 おっ、もう一人魔女らしい人が、・・・煙の中からじゃ、見えないよぉー。

 でも、凄いな、ルイーズ、同時二役、これも魔法かな。

 「姉さんを殺したのは誰だい。」「事故だったの。」「事故でごまかすのかい。」

 「西の悪い魔女、ルビーの靴は良いの。」「そうだったね。」


 西の悪い魔女が靴を取に行くと目の前で消え、ドロシーが履いている。

 「何処へやった、お前か、返しな。」「私、取った訳じゃ。」

 「その靴、魔力が強いから欲しがってるの。」

 「ここでは何も出来ない、返さなければ、その犬とお前の命はないよ、絶対逃がさないからね。」

 と悪態あくたいをついて去って行く。


 「西の悪い魔女を敵にしてしまったわ、オズの国を出てお家に帰った方が良いわ。」

 「どうしたら帰れるの。」

 「それを知っているのは、偉大なオズの魔法使いだけ。」

 「良い魔法使い。」

 「謎は多いけど立派な方よ、エメラルドシティーに住んでるの。」

 「どうやって行くの。」「千里の道も一歩から、マンチキンが町のはずれまで案内するわ、黄色いレンガの道をたどっていきなさい。」


 「ゆたか、マンチキンの出番。」「おっ、おう。」

 「好きにして良いからね。」

 ほぉー、好きにして良いと、むふふっ。

 ドロシーが黄色いレンガの道の上を歩き始め、僕はドロシーの前に行き。

 「♪♪僕が連れていってあげるよぉ~。」と、役を利用して、抱き着いて、お尻をなでなで、むにゅむにゅ。

 「あっ、ちょっ、ゆたか。」


 手を取って広がって、また引き寄せる。

 「♪♪僕にぶさって、連れていってあげるよぉ~。」と、しゃがむ。

 「ゆたか、そんなシーンないわ、・・・もう。」

 ドロシーが渋々しぶしぶ僕の背中に、おーーー、ドロシー、柔らかい、良い匂い。


 ドロシーと手の間にスカートがあると滑るので、上手く避けて背負う。

 「「♪♪黄色いレ」」

 「♪♪ンガの道よ。」

 「ん~の~道よ。」もみもみ、すべすべ。幸せ~。

 「「♪♪黄色」」

 「♪♪いレンガの道をたどって。」

 「い~ン~道をたどって。」さわさわ。

 「♪♪たどれたどれ黄色い道を。」


 とんとんとん。ドロシーが肩を叩く。

 「♪♪さあ、会いに行こう、大魔法使いに。」

 町はずれまで来たので、名残惜なごりおしーけどドロシーを降ろす。

 あれっ。ドロシーが降りない。

 「ばかばかばか、えっち。」

 「ごっ、御免、つい調子に乗っちゃって。」


 しゃがんでドロシーをゆっくりと下ろし、両手を取って、立ち上がらせる。

 「♪美少女と野獣、ずっと同じ。」

 僕とドロシーは踊り出す、何故か背景も変わる。

 「えっ、ちょっと、別の演目えんもく、私の魔法なのに、私、ティーポット。」

 「♪いつの世も、ずっと変わらず、確かなこと、太陽が昇るように。」

 抱き寄せてキス。「はうっ、・・・もう~~~。」

 背景が戻った。「魔女に戻った。」

 「♪♪さあ、会いに行こう、大魔法使いに。」


 そして進むと、トウモロコシの畑で賢くなりたい案山子かかしに会う。

 「♪頭を掻けば、名案も浮かぶ、脳みそがあれば。」

 「「♪♪オズの魔法使いに会いに行こう、賢さを貰いに。」」


 またまた進むと、森の中で錆びたブリキマンに会う。

 「空なんだ、ブリキ屋さんが心を入れ忘れたんだ。」

 「♪♪心さえあれば。」

 「「 「♪♪オズの魔法使いに会いに行こう、心を貰いに。」 」」


 更に進むと、何かがひそんでいそうな暗い森の中、ライオンに出会う。

 「勇気がなくて、自分の事も怖いんだ、夜も眠れない。」

 「♪♪もう大丈夫、魔法使いが勇気をくれる。」

 「「 「「♪♪もし願いを叶えて来るなら。」」 」」

 「♪♪僕は賢くなりたい。」

 「♪♪わしは心。」

 「♪♪おれは勇気。」

 「「 「「♪♪オズの魔法使いに会いに行こう。」」 」」

 西の悪い魔法使いが水晶で、様子を見ている。

 「私の警告を無視したねえー、皆一緒に殺してあげる、ルビーの靴が手に入ればそれでいいのさ。」


 そんなこんなで、エメラルドシティー到着。

 大魔法使いオズ(ルイーズ)は、願いを叶える資格があるか試すと言う。

 その資格とは西の悪い魔女のほうきを持って来る事、ドロシー達は怖々こわごわ向かう。


 そして西の悪い魔女が、案山子かかしに火を点けた。

 それを消そうとドロシーは、そばに有ったおけを掴み水を掛ける。

 案山子かかしの後ろにいた西の悪い魔女にも水が掛かり溶けてします。

 ほうきを持って帰ったドロシー達、しかしオズは、魔法使いではなく発明家だった。

 オズは、案山子かかし、ブリキマン、ライオンが欲しがっているものを既に持っている事をさとし、教えてくれる。


 「ドロシー、ここにいなよ。」

 「嬉しいは、でも、ここはカンザスじゃないの、エムおばさんが私の事を忘れちゃうかもしれない、案山子かかしどうしたらいいの。」

 おっ、北の良い魔女が空から降りてくる。


 もうちょっと、もうちょっと早く降りてルイーズ。

 「あの人が助けてくれるよ。」

 「助けてくれる。」


 あーーーぁ、今回はダメだった。

 「助けはいらないわ、自分で帰れるもの。」

 「どうして早く言わないのさ。」

 「賢い案山子かかしには分るでしょう、言っても信じないわ。」

 「どうすればいいの。」「その靴が連れっててくれるわ。」

 「今すぐに。」「いつでも。」

 「みんな大好きよ、さようなら。」「用意は出来た。」

 「トト、さよならをして。」「出来たわ。」


 「ではかかとを3回打ち鳴らして、やっぱりお家が一番って念じるの。」

 「やっぱりお家が一番、やっぱりお家が一番、やっぱりお家が一番。」


 「起きなさい。」ドロシーは自分のベットで目が覚める。

 かたわらにはエムおばさんがいて、ドロシーはオズに行った事を訴える。

 「静かにして頂戴、悪い夢を見たのよ。」

 「魔法の国に行ってたの、そして、あなたも、あなたも、あなたもいたわ。」

 ドロシーは家族のいる家に帰って来た。


 えっ、何故エンドロール。 

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