第12話 魔女の血の契約

 ぱちぱちぱち、ひゅーっ、ひゅーっ、ひゅーっ、ぱちぱちぱち。

 「ブラボー、ブラボー、ブラボー、凄い、凄いよ、ドロシー、ルイーズ。」

 皆が出て来て、僕に向かってお辞儀をする。

 ぱちぱちぱち、ひゅーっ、ひゅーっ、ひゅーっ、ぱちぱちぱち。

 「最高、最高だあーーー、素晴らし、素敵だよ、ドロシー、ルイーズ。」


 「おうっ、俺達のお芝居はどうだった。」

 「皆、凄い、素晴らしいよ。」

 「いやー、褒めてくれて、有難う。」「ガゥ。」

 「わん。」「おー、トトもすっごく良かったぞ。」

 「ゆたか、私は。」「ねっ、ねっ、私は、私は。」

 「二人共とっても素敵だったよ。」「そう、良かった。」「でしょでしょう。」


 「ドロシーも、良い魔女に何か言われてここまで来たの。」

 「私は竜巻で飛ばされて、ルイーズのいるところに落ちたの、そこであったのが、ルイーズのママなの、あの時は良い魔女のグリンダと思ってた。」

 「そうなんだけど、ママの占い余り当たらないのよね。」

 「そうなの。」「適当なの。」

 「今頃言わないでルイーズ。」


 「私に言わないで、何て言われたの靴もあげちゃうし、追いかけるの大変だったんだから。」

 「黄色い道を行けば、あなたを『知る』素敵な人がいる都市か、町か、村か、まあ、何処かに着くから、その人と出会った時、自分の事が分るわ、って言ってた。」

 「何それ、意味わかんない。」

 「確かに。」

 「もうーーー、そんな事言われても。」


 「まあいいじゃない、それでゆたか、私達の何処が良かった。」

 「特に風が吹いた時とか、魔法使いが、空から降りて来る時とか、素晴らしい。」

 「何それ。」「「んん。」」「・・・風。」「・・・空。」「「はっ。」」

 二人同時に両手で前を押さえ、見る見るうちに全身がかになた。


 「・・・見た。」「見えたぁー。」

 「ああ、ん、はっきりくっきり全部、初めて生で見た。」

 「うううっ。」ドロシーが座り込む。

 「なっ、何で言わないの。」

 「こんな凄いの勿体もったいないじゃないか。」

 「いや、違うな、こいつのことだから、見える機会きかいうかがってたんだぜ、劇中のトラブルと言ういい訳が出来るからな。」

 「そうなの、ゆたか。」

 「いやあ~、はっはっはっ、・・・御免さない。」


 「う~っ、お嫁に行けない。」

 「ん、はっ、あーーーっ、これは大変だあー、お嫁に行けなーーーい、そうだあー、ゆたかに責任を取ってもらおうー、ドロシー、・・・ドロシーーーーっ。」

 「・・・あっ、こほん。」手を打った。

 「あーーー、困った困った、お嫁さんにいけないよおー、どうしようかなあー、あーーー、そうだあー、ゆたかに責任を取ってもらおうー。」


 「・・・えーっと、僕にどうしろと。」「「責任取って。」」

 「いや、でも。」「見たよね。」「見たんでしょう。」

 「遮るものは髪の毛一つありませんでした、はい。」

 「「うっーーー。」」「絶対許さない。」「そう、許さないから。」

 「僕はどうしたら、許してもらえるのかな。」

 「じゃあ。」「「私達をお嫁さんにして。」」

 「いやあ~、僕。」「私達じゃ嫌っ。」

 ぶるぶるぶる。「それは絶対ない。」「「本当。」」


 「でも僕、金ないから。」「私も働く。」「私も。」

 「ここは働かせてくれないんだ。」

 「僕のアルバイトだけじゃ、二人が餓える。」

 「え~、何それー。」

 「うんーーー、僕の本業のお手伝い、・・・ぐらいしか思いつかない。」

 「ゆたか、お仕事してるの。」

 「今、大学3年だけど、大学に入ったと同時に起業したんだ。」

 「何にしてるの。」


 「探偵さ。」

 「「手伝う。」」「だからお嫁さんにして。」「せ、き、に、ん。」

 「でも探偵業は危険だし。」

 ルイーズが近付いてきて、僕の腕に胸を押し当てる。

 「ゆたかぁ~、お嫁さんにだったら見るだけ、・・・じゃないよう。」

 「ドロシーも、私達最強の武器を使うのは今。」ドロシーも来た。

 おーーーっ、両方から。

 「ゆたか、お嫁さんは、すっ、・・・凄いんだよ。」

 「わっ。」「「わ。」」

 「・・・いや、僕のお嫁さんになって下さい、お願いします。」

 「「やったー、いぇ~ぃ。」」ぱん。二人してはハイタッチ。


 「じゃあ、決まりね、ゆたか、ドロシー、魔女の契約書にサインして。」

 ルイーズのリュックから、紙、違う、極薄のかわ、の様だ。

 それと、細く短い針金、見たいな物が飛んで来て、ルイーズの手に届く。

 「じゃ、私から。」ルイーズが細く短い針金で指を突く、血が出るよね。

 その血を反対の手の親指に満遍まんべんなく付けて、革に押し当てる。


 「次ドロシーね。」「痛い。」

 「ちょっとだけ、でも暴れないでね、これ銀製の針だから、凄く柔らかいの。」

 ドロシーが顔をしかめる、のぺらぼーだけど眉間みけんの辺りにしわが寄った。

 「これでいいの。」ルイーズと同じようにする。


 「最後はゆたかね。」「痛くしないでね。」

 「それは、・・・ゆたかのあほ。」「あたっ。」

 僕もルイーズにならう。


 「天と地と精霊のみなの前で、婚姻の契りをおこなう。」

 「ドロシー、もっかい血を出して。」「うん、これでいいの。」

 ルイーズとドロシーが、針で突いた指をこすって無理やり血を出す。

 「はい、ゆたか、私達の血を飲んで。」「うへへっ」

 ぱっく。「ひゃ。」「うっ。」

 「・・・放して。」「ふぁ~い。」


 「はっ、はい、今度は私とドロシーね。」「また血を出すの。」「そう。」

 ルイーズとドロシーが、また血を出し、お互いの口に入れる。


 「次、ゆたか、私とドロシーに血を頂戴ちょうだい。」

 僕はさっきルイーズ達がした様に、指から血を出す。

 「ドロシー、先に飲んで。」

 「うん。」ぱく、・・・ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー。

 「こらーぁ、ドロシーーーぃ、私の分も残しといて。」えっ、そんなに。

 「てへへへっ、おいちぃ。」「ドロシーのあほーっ。」


 「最後は私、もっかい血を出して。」「えーっ、出るかなあー。」

 「出すの、いっぱい出すの。」僕は指からちょっとだけ血を出す。

 「はい。」ぱく、・・・ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー。

 「ルイーズ、ゆたかが死んじゃう。」

 「げっぷ、ごっめ~ん、つい。」

 「ゆたか、大丈夫。」

 「うん、大丈夫、血の気が抜けて丁度良かったかも。」

 「で、でもゆたかの血、おいちぃ。」「ちょと、ドロシー。」

 「う~ん、くせになっちゃうかも、吸血鬼の気持ちがわっかるぅ~。」

 「るっ、ルイーズ、僕これ以上、血を失ったら本当に死ぬ。」


 「次ね、ゆたかに罰を与えます。」

 「ちょっ、ちょっとルイーズ。」

 「ここが本当の契約、もし私とドロシー以外の女の子と、いっやらしい事をしたら、チョッキンされるか、・・・その私達が許すまで、・・・いっぱいするか、選びなさい。」

 選択肢なんてないじゃないか。

 「ドロシーとルイーズにいっぱいえっちな事をする方を選びます。」

 「ちっ、違うからぁ~。」「ぅぅぅっ、ルイーズのえっち。」


 「違うのぉ~、・・・ゆたか、選んだから、私とドロシーの足に口づけをして。」

 「たがいの血によるちぎりは最も強い、この口づけをもって、婚姻の証とする。」

 僕は膝を突き、ドロシーとルイーズが、恥ずかしそうに突き出した足の甲に、それぞれ口づけをした。

 僕の頭上で、ルイーズの持つ革が赤く発光する。

 「じっ、じゃあ、儀式はこれで終わり。」「でも戸籍とか。」

 「うーん、今のドロシーにも、魔女である私にも関係ないかな。」

 「必要な時は、世界中の魔女達が助けてくれるわ。」「そうなの。」

 「とにかく、これで私もドロシーも、ゆたかのお嫁さん。」


 何と、たった数時間で、僕にめちゃくちゃ可愛いお嫁さんが二人も来た。

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