第11話視点B


学生にとって万単位の出費はかなり痛い。部活に入らず、バイトに勤しむ者にとってもそれは同じだろう。


3万円。学生生活忙しい傍、週二でバイトに入り何とか手に入れた金。それがたった一つのくだらない願いで、一瞬で溶けて消えてしまった。


だが、後悔はしていない。

大沢彩香。


こいつの机の中にある細工を思い付いた。それは度重なる観察と俺の直感から分かった。アイツのおもいびとである南沢大河からの、衝撃すぎる手紙投入作戦。


題して南沢大河には恋人が存在していた。


某週刊誌さながらの酷いでっち上げだが、事実はどうあれこの作戦により、大沢が暴走、惨劇を起こしてくれること期待している。


しかし準備するまで中々に苦労を強いられた。なぜなら今回かなり気合を入れて、南沢大河、本人から手紙をしたためてもらったからだ。


当初俺の手書きで挑もうと思って書いたのだが、アイツの筆記とは似ても似つかぬ産物ができ上げってしまった。流石に直ぐ大沢に見抜かれると踏んだ為、それなら南沢大河本人に書かせればと思ってしまったのがいけなかった。


俺と南沢大河は当たり前だが全く接点がない。接点のない人間が突然現れて、内容関係なしに手紙を書いて欲しいとお願いしたら、間違いなく怪しい目で見られてしまい断られてしまう。


ならどうすればいいと考えた瞬間から、刑事ばりに南沢大河の友人関係を深く改めて洗いざらい調べるという無謀な挑戦が始まった。


本当に苦労した。アイツをよくよく調べると、アイツは同性より異性の友達? が多い。とんでもなく羨ましい奴だが、本人は下半身に大切な物が付いていないのか、そういった事柄に対してあまりにも疎い。


あれじゃ大沢がアイツにとり憑くのも仕方ないのかも知れない。同性の姿があまりにもなかった為に異性にお願いしようと思っていたが、アイツの周りで金で動きそうな異性は見当たらなかった。


容姿の優れた女が金に執着すると思えないからだ。


異性関係を諦め観察し続けていた所。二人の候補が上がり、より金で動きそうな人間を選んだ所、快く快諾してもらった。


やはり俺の直感は冴えている。


もう一人のイケメンを選ばなくて正解だった。


無事なんとか三万と引き換えに手紙を手に入れた。返ってきた手紙には、一点、手違いからか抜けている箇所があったのだが、些細なことだったのでこちらで修正した。


この程度なら誤差の範疇だろう。さて後は大沢が暴走を起こしてくれるのを願うばかりだ。

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