第10話視点A

嘘ですよね?

あのキチガイ女に何かされているんですよね?

そうですよね・・・・・・。


私が中々煮え切らないばかりに、キチガイ女とくっ付いてしまうわけないですよね?


付き合ってしまうわけないですよね?


アイツが一方的に言っているだけですよね? でもアレ、でもアレ。あの手紙は、手紙は、手紙・・・・・・。


昨日私の机の中に真っ白な手紙が一つ入っていました。とても怪しいですよね。普通は捨ててしまいますよね?


でも手紙を開けて最後までお読みいたしましたの。何故だか分かりますか?


手紙を掴んだ時ほんのりとあなたの匂いを感じたからです。


大好きなあなたのにおい。


男性なのに臭くなく、汗と甘い石鹸を割ったような匂い。あなたの匂いを嗅ぐたびに私はいけない思いを抱いてしまう。そんなステキな匂い。


人にはその人特有の匂いがあるのを知っていますか? あなたは気づいていないかもしれませんが、あなたの周りにいる、あのキチガイ女も薄汚いハエのようにあなたの匂いにつられている一人なのですよ。


私は不安で哀しいのです。だから今すぐに匂いを変えてください。今すぐに。


そうそう、手紙の裏面にはちょっとしたイタズラがしてありましたね。あなたらしいと言うのか・・・。楽しませようとしてくれた、大好きなあなたには申し訳ないですが、私はすぐにあなたのイタズラと分かりましたの、何故だか分かります?


手紙からあなたのにおいがしたからです。


あなたの手紙を開封する前の私はとても嬉しかったのです。こんな手の込んだことをしてくれたあなたの姿を想像しながらワクワクしていました。


その時は。

嘘ですよね?

冗談ですよね?


手紙を読んだ時あまりの中身に金縛りにあったように動けなかったの。だって聞いてください。あなたがね。あなたが。


あなたにおもいびとがいるって内容だったんです。


あまりに馬鹿らしいですよね?そう思いますよね?そうですよね大好きなあなた。あまりの内容の馬鹿さ加減に、私思わず手紙を両手で引き裂いてしまいましたの。


だってそうでしょ?あり得ないですもの。手紙の内容は初めから何か違和感があったんです。


でも、それでも匂いはあなただったの。

何故ですか?

なぜあなただったんですか?


私は確かめました。あの女の仕業に違いないと思って。あのキチガイ女を呼び出しましたの。幸いあの女は授業が終わっても学校におりましたから、直ぐに呼び出した場所に来ました。


動転していたんでしょうか?私はアイツを殺せるナイフを持っていくのを忘れてしまったの。本当に悔やまれます。


呼び出したキチガイ女に事の真相を問いただそうと致しましたのに、あの女。私の話を途中で遮りなんて言ったと思います?「なんの話かわかりませんが、立場上まずいんではないですか?」なんてしらばっくれて、ふざけたことを告げましたの私に。


そんなことを言われたら私がどんな行動を取るか分かりますよね? 大好きなあなたなら分かってくださりますよね? ええ、その通りです。キチガイ女に手をあげましたの。


悲しみから。怒りから。いいえ、あなたとの今までの思いを軽々と踏みにじったからです。


衝動的に手をあげるのはとても簡単ですね。


この時、ナイフを持っていなかったのが悔やまれます。それとあと少し周りの人達が来るのが遅かったら、アイツを殺せていたのに・・・・・・。とても悔やまれます。


同族嫌悪なのでしょうか? 女の悲鳴は高々と嫌になるぐらいとても大きいですね。もしかしたら、あのキチガイ女は計算してあらかじめ廊下に人を立たせていたのかも、知れません。


キチガイ女が部屋から出ていく時、周りの人達に取り押さえられた私を見ながら、憐れんだ目で私を見ていたの忘れません。憎い、殺してしまいたいほど憎い。


ねぇ。大好きなあなた。あなたは私に嘘なんてつかないですよね? あなたが他の女を好きになるわけないですよね? だって言ってくださいましたもの。


私を見ながら好きだと。

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