第9話視点C

校庭から運動部の威勢のいい声が聞こえた。窓の隙間から室内に風が入り、カーテンを揺する音がする。


心地よいと思ったのもつかの間、日暮れからくる刺激の強い光に顔が照らされる。あまりの光量に部活申請の書類から、思わず顔を上げた。


「調子が良さそうね南沢君」顔をあげた時、生徒会会長である大沢さんと目が合いそう言って微笑まれた。


相変わらず彼女の手元には何の書類もない。僕が作業を始めた時から何一つ変わっていない光景に、少しばかり腹を立てたので、文句を一つ彼女に向けて言った。


「書類よりもあなたを見ている方が重要な仕事なのよ」慣れてしまっているのか、反省していないのか分からないが、彼女は小言を受けてもいつも通りの軽やかな返しをしてくる。


ここまで来るともう呆れるしかないばかりだ。会長に構っていても仕事が終わるわけではないので、窓を少し締めると書類の束に視線を戻した。


太陽光を防げたお陰か、それとも会長を無視した賢い選択か。どちらかが功を奏したのだろう、先程の申請書類を早々と読み終える。


机に置いてあったマーカーペンを持つと、不備があった場所に線を引いた。一つ書類が片付き次の書類に目を通す。


今更言ってもせんないが、こんな仕事を引き受けるべきではなかったと後悔する。会長の少しだけ、ちょっとだけ、簡単だから、人がいないのお願い。などの言葉に二つ返事で快く応じた僕がバカだった。


嫌なことを考えたせいか自然とため息が出てしまう。「お疲れね。肩でも揉んであげよう」何が楽しいのか僕をしきりに見ていた会長が突然そんなことを言った。


肩を揉むより書類を手伝って欲しい。僕の心からの叫びを会長に伝えるが、会長は真剣に取り合わず、ただただ楽しそうに、笑うばかりだ。


そんな会長を冷ややかに見ていたのがバレたのか、会長は真顔に戻ると席を立った。そして座っていた僕の背後に回り込み、僕が逃げる間も無くいきなり、抱きついてきた。


服の上からわかるぐらい、かなりの自己主張をしていた、柔らかな二つの大福が背中に押し付けられる。あまり出来事に体がこわばってしまう。


「たまには素直に君からのエネルギーを充電しとかないとね」抱きついたまま僕の耳元で大沢さんは、笑った。

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