第5話視点B
人間一人を観察するのがどれだけ大変なのかを考えさせられる1日だった。
俺の卒業後の進路の候補として考えていた就職先の一つである探偵が消えてしまうほどだ。
まぁストーカーになるにはとんでもなく、途方もないエネルギーが必要であるのを学べただけでも収穫があった一日だったとしよう。
大沢彩香を日がな一日観察して改めてわかったが、アイツの人気は凄まじい。
美人であるとこれでもかといったぐらい、コンビニに設置してある殺虫灯のごとく、青く輝く光に、男はわかるが女も虫のように群がっている。
男はあわよくば仲良くなり合体したい盛りのついた雄犬だとして女はなんだ?
純粋な思いで近づいているのか、仲良くしておけばいいことがあると思ってすり寄っているのか、それとも自身の劣等感を補う行為の自己防衛。
女性が女性アイドルに憧れる同一化や同一視か? さっぱりわからんが、アイツの周りには人が多すぎる。
正直言ってこれでは誰がアイツのおもいびとなのか全くもって分からない。俺がアイツとは別のクラスであるのことが悔やまれる。
同じクラスであればもう少し接触できるのだが・・・。
ただ、収穫が0だった訳ではない。本日三クラス合同体育の日。アイツを観察していたら、異性でアイツとよく絡む人物を見つけた。
南沢大河。
コイツの特徴を一言で挙げるなら至って普通だ。顔も普通。体も普通。おそらく性格も普通だろう。
おもいびとが南沢だった場合、平々凡々を絵に描いたような人間が何故異性にモテるのか疑問だが、恋愛は時に人を狂わすほどのものであると考えると、何もおかしいことはないのかも知れない。
とにかく南沢が大沢のおもいびとの候補として、今後大沢とセットで観察対象に入れていこうと思う。
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