第6話視点C

だだっ広い体育館に乾いた音が時折響く。


目の前に軌道があやふやなボールがふわりと飛んで来るのが視界に入り、僕は両腕を突き上げた。


「ナイス!」打ち上げる動作に合わせるように、品のある声が右斜めから聞こえた。


打ち上げた真っ白く赤いラインが入ったボールは品のある声に導かれるように、委員長の頭上から落下しようとしている。


その軌道を完璧に計算していたのか、委員長はばね仕掛けの人形のごとく、勢いよく飛ぶとボールを右手で叩き面白いように相手コートスレスレに弾き落した。


相手チームの人達が呆気に取られる中、ボールがコロコロと転がり壁に寄りかかるように止まる。


瞬間、体育館は大勢の人達の歓声で包まれた。


この試合を周りで見ていた人の中には、立ち上がって拍手を送る者もいる。気持ちは分かる。素人が傍目から見ていても、先程の相手コートへのアタックは惚れ惚れするものがあった。


しかもそれが一度の奇跡ではなく、3回目ときている。僕は周りの皆と同じように委員長に向けて、力強く微笑みながら拍手を送った。


「いいパスだったよ、大河!お陰で綺麗に決まった」とんでもなく高度な技術のアタックを決めた後だと言うのに、委員長は汗一つ掻かず綺麗な黒髪を優雅に指先で払うと、品良く笑った。


僕のパスが凄いわけではないのですよ。委員長のアタックが凄いんだよ。そんな当たり前の本音から僕は素直に委員長を褒めた。


僕に褒められた委員長はいきなり、顔をリンゴのように赤らめ。「ふぇ! あのななな!あ、ありがさん」など、どこかで聞いたことがある擬音を立てる。


一体どうしたと言うのだろうか? もしや高度な技術のアタックを決め過ぎて疲れてしまったのだろうか?


心配になったので委員長に肩に手を置いたら。猫のような悲鳴を上げてどこかに行ってしまった。

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