俺達の証明の完結に添えて2(ささやかは結局どうやって書いたのですか?)

 噓をつくついでに息をはく。ささやかです☆


 前回ささやかさんはかなり大層なことを仰いましたが、「最初からああいうふうに考えて書いていたのですか?」という問われればNOです。勿論NOなのです。書きながら考えさせられています。

 

 今回一本書くにあたって、最初に考えていたのは「初心にかえろう。初心にかえって男性一人称でおもくそ暗い話を書こう」ということだけでした。初心がどこにあるかは見解が分かれるところですが、私にとっては唐辺葉介が初心だと思ってます。まあそういうことにしてます(本当に初作品とかだと甘ったるい恋愛系になっちゃう)。好きなので。

 最近の私は小説を書くというか、創作をする気がすっかり萎えていて(ご覧のとおり書いているけど)、それよりも自分の人生を生きねばという思い(証明執筆時ではなく現時点での具体的な話をすると、まずはジムに通ってダイエットに励まねばという思い)が強く、じゃあまあ小説を書かない話にしようと。別に書いても書かなくても人生なんて変わんねーよ安心してクソして寝てろよみたいなやつを書こうかなと思ったわけです。

 

 そうしてなんとか書き始め、最初のさし飲みのくだりを書き終え(だから実はこの時はまだ主人公の名前があった)、無味乾燥な労働パートを書く際に、主人公の仕事をどうしようかなと考えました。一つは何か普通に働かせる、二つ目は痴漢とかを殺させるお仕事。で、悩んだ末に後者にしました。

 理由は、3話のタイトルに出てくるとおり、アイヒマンを引き合いに出したかったから。ナチスドイツにおいて命令に順じてユダヤ人虐殺を遂行したアイヒマンと同じようなことを、歴史的名前もない「俺」もしているのだけれど、その自覚などない。

 主人公には愛も希望も夢も金も熱中する趣味もやりがいのある仕事もなく、その上歴史的価値すらない。数多の屍を踏みにじったその上に立っているのに何もないとはなんておそろしいことでしょう。ね、そうでしょ。屍の上。

 あとは、失敗する可能性が濃厚なのだけれど、殺人(犯罪)という破滅的救済のルートを塞ぐ意味合いもあります。これは述田さんが実際に失敗してくれていますね、ありがとう。


 それと、医者とか弁護士とかだとわかりやすいと思うんですけど、仕事って社会との関わりだし、誰かとのつながりだし、誰かを救うことじゃないですか。だから途絶させたかった。主人公の仕事は行き過ぎた倫理で人生を断絶させることで、そこには正しさもやりがいも救済も喜びも未来もない。そういうことです。

 ここの仕事をどうするかというところを決める過程で述田さんの処遇を決定し、恋愛的関係構築の断絶を明確化するために植村さんを利用し、ついでに佐野さんに殺す側の社会意識を語らせておくという感じで奥行きを持たせ、証明のラストシーン。最低限のピースを組み合わせると、はい、完成☆彡


 ラストのくだりをどこで決定したのかは覚えてないのですが、少なくとも「俺たちの証明」というタイトルをつけた以降だと思います。

 以前書いた詩に同名のものがあって、こっから採用してるからです。詩のほうは若干意識が本作とずれているようなところがあるので、対比するのも一興やもしれませんね。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887016358


 先も述べたとおり、本作は、俺達――愛も夢も希望も何も待たない社会的敗残者――であっても、あっても、大丈夫と、一瞬に過ぎなくても幸福があり、人生に価値があるのだという立証作業みたいなもので、自作の分析でいくと素晴らしき結婚の一歩向こうにあり、死人までの抗いの具体化なのかなと思います。まあ、小説を書くなんて人生の途中式に過ぎません。だからこそ、いつかもっと良い証明をしたいなと思います。でも現時点で私が提示できるものは提示したかなと。

 


 反省点というか、本作の欠点としては圧倒的にエンターテインメント性の欠如でしょうか。暗い。動きもない。というか動いて何かを得ないようにしている。もっと面白さにこういうものを挟める力もつけていきたいですね。どちゃくそ難しいし、そうしないほうがよい場合もあるでしょうけど。

 あとはもう少し丁寧に長く書いてあげてもいい作品なのかなとは思ってます。

 それとディストピアのタグは、わかりやすくするために付けたもののちょっと余計だったかなと迷いはあります。私、この世界をあんまりディストピアだと感じてないんですよね。だって、現実とあんまり変わらないじゃないですか。きっと同じようなこと、もうやってますよ。現実は既にディストピアだというのならば首肯することではありますが。

 作品を絞る意味ではアイヒマンを引き合いに出すのは余分だったかもなという迷いはあります。でも出したかったから仕方ないね。ここら辺の世界観とかは私の趣味なので分析はするが後悔はしない。


 ついでに講評が出たので、それについても言及を。Twitterとかで流れる感想も含めて、正直もっと賛否両論というか、意気込みは認めてやるぜくらいで後はネガティブなものが趨勢を占めるからなと思っていたので、嬉しい誤算でした。

 なので受賞はしねーだろと思っていたので、それはさておき、講評ですら良く評価してもらえたのは嬉しい限りですね。

 

 次に、いつ、どんな小説を書くかは、わからねーですが、まあ今回はこのくらいで。


 

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