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「…………はう!?」
「スケベ虫、見っけ! 缶踏んだ」
真剣な顔を浮かべ、自販機でコーヒーを飲んでいたサンタモニカの股間を、キョーコが楽しそうな笑顔で蹴り上げ、サンタモニカは自販機の前で
そんな、蹲るサンタモニカと、腕を組み首を左へ傾けた姿でその背後に立つキョーコは、普段他の面々と接する時に見せない態度で会話を始める。
「お前……缶は缶でも、股間を蹴るなよ! 俺も年だし洒落にならないし、第一センサーが壊れたらどうする!」
「わざとらしく兄貴がキャインキャイン泣いて逃げていくからでしょ? そんな輩は皆、蹴ると喜んだわよ? それに兄貴のセンサーって常にフル稼働でしょ?」
「ま、全くお前は……、親父たちが知ったら泣くぞ……」
「でも『自分の思う通り好きなように生きろ、俺が金は何とかしてやる!』って中学生の時の私に言ったのは兄貴でしょ? だから兄貴のせいよ、ワタシ100%悪くない!」
「当時はそう思ったが、今は後悔している……」
「…………」
そしてしばらくの沈黙の後、椅子に座りなおしたサンタモニカが口を開く。
「何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
「……思い違いじゃないの?」
「お前の兄であり刑事である俺をなめるなよ。 嘘をつく時の癖があるからすぐ分かる」
「何よ、それじゃ私の発言って、いつも嘘かホントか丸わかりだったって事なの? ならその癖、直すから教えて!」
「そんな癖は無い、カマをかけただけだ。 全くお前は油断すればすぐ引っかかるんだ……いだだだだだだ! 頬を引っ張るな!」
「自分の好きな通りにしているだけよ! 自分の好きな通りに!」
「分かった、からかって悪かったから! 謝るから離せ!」
だが、サンタモニカがからかった為に、キョーコはサンタモニカの右の頬を思いっきり引っ張るのであった。
…………。
「実はローグ少年には言った後、嘘って言って誤魔化したんだけどさ……。 リーンの言うスライムと人間が暮らすなんて夢物語だって、現実を理解させる為に、アズサに論文を書かせるように提案したんだって、つい言っちゃったのよ……」
「……どうせ、移民の話でも絡めながら言ったんだろ?」
「そうよ……」
「でも、一生懸命なリーンちゃんを見ていて分からなくなった……。 そんなところだろう?」
「まぁ……」
「新たな世界の道に踏み出すか迷っている訳か……」
椅子に座って頷いたキョーコに対し、隣に座り、右の頬を押さえながら真っすぐ前を見るサンタモニカは、大きく息を吸うと、優しい声でサンタモニカ個人の意見を述べ始める。
「生きてきた世界、歩んできた人生によって正義なんて全く違変わって来るだろうし、当然、世界が違えば正義が相いれないなんてのは、普通の事だからな、仕方ない……」
一度そう言い終わると、サンタモニカは口にコーヒーを含み、口をモゴモゴさせるキョーコをチラ見した後、また話を再開する。
「だから俺が思うに、お前は
「そうよね! 私の思った通りに……!?」
本来であれば、良い話で決まるはずだった。
だが、サンタモニカが言い終わると同時に頭にポンと置こうとした手は、拳を握りしめて勢いよく立ち上がったキョーコのお尻を見事に触って固まると、沈黙と共に、互いの顔を徐々に赤面させていく、そして。
「あ、そのだな……、わざとじゃないんだが、悪い! だが良い尻をしていると俺は思うぞ? うん、素敵だ!」
「変態、兄貴の変態! 死ね! まったく義理の妹に発情とかおかしくなったの、ホント……」
「痛! ぎ、ぎゃあぁぁぁぁ……!」
それが真っ赤に染まった瞬間、キョーコはサンタモニカの顔面に強烈なビンタをお見舞いし、倒れこんだ所で股間を思いっきり踏みつけて去っていった。
「わ、わざとじゃないのに……!」
さて踏みつけられたサンタモニカは、まるで芋虫が丸まっているかのような姿でかすれた声をあげた。
痛みのあまり漏れた涙を数滴、瞳から漏らしながら……。
だが、それと同時に。
「だが、ドM心をくすぐる良いキックだった、良いセンスだ……」
その痛みに興奮し、楽しんでいる姿もあった。
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