1階にある、携帯電話の使用区域にて……。


 「……という事でこんな時間にすいませんね、後藤さん。 ええ、連絡くださったお陰で、別の手が打てると思いますので……。 まぁ保険はあって損はないですからね、ではでは……」


 サンタモニカはスマートフォンの通話を切り、時間を確認すると。


 「さてお願いした通り、後藤さんからもお知らせの電話が来たし、後はリーンちゃんの動きに間に合うかだな……」


 そしてサンタモニカは電話をかけ始め、手短に用件を伝えると切る、これを数件行った。

 そして電話をかけ終えると、病院の自販機に向かい、自分の分、そしてシノとマナの分の飲み物を買って、病室に戻るのであった。


 …………。


 そして、病室に静かにドアを開けて入ると、ローグの頭部横に置かれた椅子に座り、コクリコクリと眠るシノの姿があったのだが、前にコクリコクリとする度に、立派な胸が嫌でも目に入る。

 そしてサンタモニカはフフっと微笑むと。


 「これは紳士的な男として、胸を間近でのぞき込まねば、美女に対して失礼極まりないな。 英雄色を好む、つまり男のスケベは遺伝子的文化だから、うん、仕方ないな! それに美女にそういう事をしないのは、美女の美しさを否定する事にもなりかねないから、紳士としては同然だな……」


 ネクタイを締めるような動作等を行い、身なりを整え、ほんの数秒ローグに希望めいた眼差しで見つめた後、まるでゴキブリの様に素早く地面を這いながら、シノに迫る。

 そしてベットの下へ潜り、シノの足元へ向かい、そして。


 「ぐふふ、ここを抜ければ楽園の花園がぎゃあぁぁぁぁぁ!」


 ベットの下から右手を出した瞬間、右手はシノの右足に踏みつけられ悲鳴を上げる。

 サンタモニカは右手を踏みつける足を見上げていくと、ニッコリした笑顔で見下ろすシノの姿があった。


 「おや、ゴキブリがいると思って踏みつけたら、思ったより大きいですねぇ、マナ~、スタンガンを貸してあげますから、退治してもらえますか?」


 すると、スタンガンを取り出したシノの後ろから不安そうな顔のマナがスッと現れ、シノの横に立つと同時にスタンガンを受け取る、そして。


 「いいの? いいの?」

 「良いんですよ、害虫を一人で退治出来るようにならないと、後々困りますよ?」

 「待て、俺は虫じゃないって! いや、確かにスケベ虫が騒いでこうなった訳だが……、それは虫じゃない! だからマナちゃん、退治、ダメ絶対!」


 マナとシノのやり取りに対し、焦り顔のサンタモニカは、首を横に振りながら必死にスタンガンおしおきを避けようとする。

 だが。


 「良いですか、マナ? 私が先生から教わった、とってもありがたい言葉があります。 それは『変態はゴキブリ並みの生命力をもっているから、電気程度では死なない。 逆に喜ぶから、やっちゃえ!』と言う言葉です、なので遠慮はいりませんよ?」

 「えい!」

 「いだだだだだだだだ! 透けちゃう、きっと体の骨、透けちゃってるからきっと!」

 「その調子ですよ~、逃げまどうスケベ虫の治療をしてあげるのですよ~マナ~」

 「うわあぁぁぁぁ! ダメだってマナちゃん! おっさんの体がダメになっちゃうから!」


 残念ながらお仕置きから逃れる事は出来ず、サンタモニカは叫びながら病室内を逃げまどい、マナがそれを追いかけていたその時。


 「ただいま~! って何やってるのアンタたち?」

 「あら?」

 「お仕置きはもう勘弁! キャヒンキャヒン!」


 リーンの声で注目がそれた一瞬のスキに、サンタモニカは犬の鳴きまねをしながら、全力で逃げていった。

 そんなサンタモニカを見た四人は。


 「「「「何……?」」」」


 キョトンとした顔を浮かべてそう口にした。

 そんな疑問に対しシノは、呆れた様子で。


 「スケベ虫ですよ……。 それでマナに退治してもらっていたのです……」


 と答えると、キョーコが。


 「よーし、マナちゃん! あのスケベ虫はお姉さんが踏みつぶしてきてあげるから待っててね!」


 そう言ってサンタモニカを追って部屋を出て行った。

 そんな中、シノがふとローグを見ると、何となく口元が笑った様に見え。


 (笑っているのでしたら、早く戻ってきてくださいね。 皆があなたの為に頑張っているのだから……)


 シノは、フフっと鼻で笑いながらそう思った。

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