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「…………」
個室と化した夜の病院の自販機コーナーで、サンタモニカは静かにコーヒーを飲んでいた。
だが、その顔は普段見ることは無いであろう氷の様に冷たく、そして悲しい瞳。
だがそれと同時に、誰かを思いやるような熱い、そんな不思議な瞳。
「誰が命を投げ捨てる守り方をしろと言ったんだ……」
そして、椅子に拳を振り下ろしつつ、透明な壁に向かってそう吐露する。
そんなガラスに薄っすら映るのは、ひげが無造作に伸びる一人の男が椅子に座る姿。
そんな薄っすら映る男に向けて、サンタモニカは続けて言葉を吐く。
「今、コーヒーを飲む事しか出来ないのか?」
「刑事として何か出来ることがあるだろう?」
「お前は何だ? 刑事って言うのは何だ?」
だがいくら言葉を履いても、薄っすら映る男はオウム返しの様に口を静かに動かすだけだ。
そして。
「……ん?」
「…………」
そんな男の袖を、マナが引っ張り、サンタモニカが自信を見たことを確認すると、静かに隣に座る。
「……飲み物いるかい?」
ガラスの反射越しに、マナを見るサンタモニカが静かに尋ねる。
するとマナも、コクリと頷くので、サンタモニカは古びた財布から小銭を取り出すとマナの前へ小銭の乗った手を運ぶ。
そしてマナは、そこから小銭を取ると、二人の真後ろにある自販機に向かい、小銭を入れて購入しようとする、だが目的のものに手が届かないらしく、ピョンピョン跳ねて、自販機のボタンを押そうとしている。
「とどかない……とどかない……、ありがとう……」
そんな様子のマナを、サンタモニカは両手で抱きかかえ持ち上げ、マナが目的のボダンを押したことを確認すると、マナを降ろし、また先ほどの座席に座り、マナも遅れて隣に座った。
…………。
それから10分程、静かな時間が流れた頃。
「一つ愚痴を聞いてくれないかな?」
突然サンタモニカが真っすぐ目の前を向いたまま、マナに語り掛ける。
それに対し、マナも前を向いたまま首をコクリと上下に動かす。
そして、それを確認したサンタモニカは静かに語りだす、自分の気持ちを。
「運命の神がいるとするなら、何の為にこの様な目に合わせるのだろう?なんて、思ってしまっている自分がいてさ……」
「…………」
「そして、若い連中をどう落ち着かせるか? それを冷静に考える俺もいる」
「冷静……何で?」
そんな不思議そうな顔の、マナの質問を聞いたサンタモニカは、缶の残りを口に流し込み、一呼吸置くとその理由を語りだす。
「それは、10年の価値がある物が、完全にバラバラに崩れるのを見たくない、俺のわがままなのかもしれないね……」
「?」
マナは首を傾げる。
だがそんな様子を理解しつつも、サンタモニカは話を続ける。
「いい、分からなくても……。 子供の世界という星から、大人の世界と言う星の光は見えないものだからな。 ……ただ、こんな状況に置かれると、子供も大人も関係なく、人間は無力だと思わされるよ、解決の光すら見つけられないのだから……」
そして、静かにそんな話を聞いていたマナは部屋を出て、暗い病院の廊下の中へ消えていった。
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