18.リーンとマナ

 事故発生後、アズサは急ぎキョーコに連絡を取り、その間にリーンとコトネは階段を下り、ローグを探すと、川辺近くの岩場に傷だらけの状態のローグを発見し、二人でローグを抱えると、急いで階段を登って行った。

 そんな中、シノは「ヒヒ……」と気味の悪い笑い声をあげながら、その場にしゃがみ込むだけだった。


 そして数十分後、ローグはキョーコの手配したヘリで急ぎ病院に運ばれ、残った5人は、急いでやってきたサンタモニカの白いSUVに乗り込み、ATINが経営する病院へ向かった。


 …………。


 「危ない状態ですね……、体力が落ちた状態で手術をするわけにもいきませんし……、今は神に祈るしかない状況と言いますか……」


 夕日が沈み、闇が大地を覆う頃。

 ローグが入院する個室の病室の外にて、白衣を着たメガネの医者が、深刻そうにサンタモニカ、キョーコ、アズサ、リーン、コトネの五人へ向けて状況を説明する。

 だが、それは医者が言わなくでも何となく分かってしまう。

 何故なら、ローグは目を覚ますことなく4日たっているのだから……。


 そして、医者が去ったあと、心配そうな表情のサンタモニカは口を開く。


 「4人とも、一度帰るべきだよ……」


 サンタモニカがこう言ったのは、4人の様子を見ての判断だ。

 リーンは、ローグを助からないかもしれない不安で、いつもの元気を失っている。

 コトネは、状況を考えて兄を見捨てる発言をした事を後悔に襲われている。

 キョーコは、望まぬ結果を生む原因を作ったのだと、自分を責めるせいか、食事がのどを通さず、身体が痩せてしまっている。

 そしてアズサは……。


 「ローグさん……先輩……」


 ただ眠り続けるローグと、それを魂が抜けたような無の表情で見つめ続けるシノの姿が痛々しくて、胸を締め付けられる思いを感じに苦しむ。

 そのおかげで4人は明らかに寝不足で、元気もない。

 故にサンタモニカは帰るように言ったのだ。


 だが四人は、それに対し無言の抵抗として黙って立つ。

 睡眠不足などで頭が回らない今、それが四人にとってせめてもの抵抗なのだろう。

 そんな様子に。


 (言っても無駄か……)


 と思うと、静かにその場を立ち去って行った。

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