「え、えーっと……」

 「そ、その~っスね……」

 「し、シノさん、つまりだな……」


 シノと言う蛇に睨まれた三匹の正座するカエルは、震えて言葉が出なかった。

 流石に洒落にならないなと思ったローグが。


 「ま、まぁ落ち着けシノ!」


 とシノの肩に手を置いて、そう言うが。


 「……黙っててください」

 「すまん……」


 その迫力にローグも謝って引くしかなかった。

 そんな状況を打破できる存在がいるとすれば。


 「ダメ……」


 そう言ってシノの両足に抱き着き、ウルウルした瞳でシノを見つめるマナくらいだろうか?

 流石に修羅と化していたシノも、そんな徐々に優しい表情へと戻っていき。


 「……マナがそう言うなら仕方ないですね」


 と言うとマナの頭を撫で始め、マナも嬉しそうな表情を浮かべる。

 そしてローグは、三人組に対し。


 「良かったな、生き残れて……」


 と苦笑いし、リーン達三人組は互いに抱きしめ合うと。


 「死ぬかと、死ぬかと思ったわよ~!」

 「お、オイラ生きてるっス~」

 「わ、私は初めて命の危機を感じたぞ!」


 ややオーバーにも思える事を口にする、そして。


 「「「わーん!」」」


 三人のウルウルした瞳のダムは緊張と恐怖の糸が切れた事で、決壊し、しょっぱい水を頬に垂らすのであった。

 そして、それを隠してくれるように小雨、そして大粒の雨が降り出した。


 …………。


 そして、互いに落ち着きを取り戻し、いつもの雰囲気を漂わせた6人は、親子に見える前列グループと、仲良し3人組の後列グループに分かれ、楽し気に会話をしながらも、やや小走りで急な階段を上る。

 それはいつもの様に、冗談、いじられ、からかい、真面目、一生懸命、静かさが入り混じる雰囲気。

 だが……。


 「ん? 何だ?」


 パラパラとした音にローグは足を止める、そして。


 ガガガガガガ……。


 そんな音と共に、目の前の階段の一部が崩れだした。

 丸太や土が入り混じった恐怖が6人に迫る。


 「みんな、私の後ろに!」


 とっさにリーンがそう叫び、腕を変形させて大きな盾を作り、アズサとコトネは後ろに隠れる。

 そして、前列のローグたちも急いでリーンの後ろに隠れるべく急いで移動する。

 しかし、丸太の一部が先行してシノへ向けて飛んでいく、そして。


 「シノ、危ない!」


 ローグはシノを大の字で庇って丸太を受け、その衝撃で階段をゴロゴロ転がり落ちていく。


 「立花君!」


 シノはそう叫び、リーンたちを横切って、ローグを助けに行こうと駆け出すのだが。


 「シノさん、ダメだ! このまま兄を追いかけて行っては、シノさんも危ないぞ!」


 コトネが慌ててシノの右腕をつかみ止める。

 しかしシノも冷静さを欠いている為話を聞くはずも無く。


 「命であの人を助けられるなら安い物よ! アナタ、その腕を早く放しなさい!」


 と感情交じりに怒鳴りつけ、その手を払おうとするが、流石に命を捨てるマネをさせる訳にはいかない。

 それは他の3人も一緒だった。


 「先輩、ダメっス! おいら逆らいたくないっスけど、それだけはダメっス!」

 「そうよシノ! アンタ、ローグさんが生きててシノがそんな事で死んでたら何て思うと思ってるの!」

 「ダメ……ダメ……!」


 アズサが弱弱しく言いつつも左腕を引っ張り、リーンの後ろへ引き込もうとし、そしてマナもシノのズボンを引っ張り協力し、リーンはローグの事を考えてそう声を張りながら説得する。

 そして力ずくでリーンの後ろに引きずられ。


 「放せ、私を放せ! あんた達、放せ!」


 と叫ぶシノの真横を土と丸太の塊が駆け巡っていくのであった。

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