16・異界植物は想像を超える

 「サンタモニカ、生きてますか?」

 「……寝ているだけだぞ、俺は?」


 外は雨音が静かに響く。

 そんな夜中、ローグが目を覚ますと、そこにはシノの顔があった。

 そしてシノは、ローグの前に一冊の本を差し出す。

 それはコトネが持ってきていた《山の幸入門》と書かれた一冊の本。

 それをシノはローグに渡すと。


 「実はマナに美味しい山菜を食べさせたいのですが、こっそり手伝ってくれませんか?」


 そう真面目な顔でヒソヒソとお願いする。

 すると、ローグは不思議そうな顔を浮かべ。


 「山菜、あれを取るのか? だが山菜って苦いだろう? マナが喜ぶかどうか……」


 静かにそう疑問を上げる。

 だが、シノには理由があった、依然聞いたスライムの生態から……。


 「リーンが前に言っていたのですが、スライムは草を食べていたそうです。 ですので、たまには生態を考えてその様な物を食べたほうが良いかな?と思いますので」

 「なるほどな……」


 故に、シノがその様に説明すると、ローグは首を小さく上下させ納得する。

 そして。


 「ならば、明日散歩に行くフリをして探しに行くか? とりあえず、山菜の情報を従業員に聞き込みしておこう」

 「では、お昼過ぎが良いでしょう。 それから山菜を探しに行きましょう」


 二人はそう会話を交わすと、再び眠りにつくのであった。


 …………。


 「紅茶は何にするか……。 ここは、プリンスオブウェー……」

 「ふあぁぁぁぁぁ……。 あ、ローグさんおはよう~……」

 「ん、リーンか? どうした、まだ六時半だぞ?」


 雨雫が葉に残る朝。

 ローグがキッチンでポットでお湯を沸かし、棚に置かれていたインスタントの紅茶パックをティーカップに入れたその時、寝ぼけ眼のリーンが声をかけてきた。

 だが、その足取りはややフラフラしており、やや心配か?

 そして、頭を壁にぶつけると同時に上げた「いた!」っと言う声によって、状態異常、眠気は解消され、その瞳はいつもの様にパッチリ瞳へと変貌する。

 

 「いや~ワクワクしていたら目が覚めちゃってさ~。 ねえ、ローグさんは一体何で起きてるの?」

 「何、せっかくキャンプ場に来たんだ。 とりあえず紅茶を飲んで目を覚ましたら、この辺りに何があるか見て回ろうと思ってな」

 「へえ~」


 口を軽く開けて見つめるリーンをよそに、見つめられるローグは、暖かな紅茶を口に運びズズッと啜る。

 それを見つめていたリーンは。


 「そういえば、何でローグさんはローグってあだ名なの?」

 「ん?」

 「だってモニさんはピザが好きだからその関連で、でもローグさんってあだ名の理由は何でなのかな?って思ってさ」

 「あぁあれか……」


 今更ながら、あだ名の由来を尋ねる。

 ただこの疑問は、別に前から思っていたわけではない、単に今ふと思いついただけだ。

 その為なのか、リーンの顔は何も考えていなさそうな間抜けな顔へと変貌しており、ローグはそんな顔を見ながら。


 「対した理由じゃないぞ?」


 そう照れ臭そうに言うとあだ名の由来を話始める。


 「俺は昔から真似事が得意でな。 と言っても、ある程度の動作だけだがな。 それであだ名が技術泥棒、そしてそれからRPG好きだった知り合いが、RPGの上位の盗賊職のローグから取ってローグって呼び出してな。 それであだ名になったんだ。 ちなみに、楽器全般は何でも引けるし、スポーツでも活用できる便利な特技だな」

 「へぇ~」


 そして、興味深々のリーンをよそに、再び紅茶を口に運ぶ。


 「だから前、しばらく私を付けていた時も、モニさんのマネをしていたから、私、全然気づかなかったのね」

 「ぶ!」


 が、リーンの予想外の言葉に紅茶を噴き出してしまうのであった。

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