16・異界植物は想像を超える
1
「サンタモニカ、生きてますか?」
「……寝ているだけだぞ、俺は?」
外は雨音が静かに響く。
そんな夜中、ローグが目を覚ますと、そこにはシノの顔があった。
そしてシノは、ローグの前に一冊の本を差し出す。
それはコトネが持ってきていた《山の幸入門》と書かれた一冊の本。
それをシノはローグに渡すと。
「実はマナに美味しい山菜を食べさせたいのですが、こっそり手伝ってくれませんか?」
そう真面目な顔でヒソヒソとお願いする。
すると、ローグは不思議そうな顔を浮かべ。
「山菜、あれを取るのか? だが山菜って苦いだろう? マナが喜ぶかどうか……」
静かにそう疑問を上げる。
だが、シノには理由があった、依然聞いたスライムの生態から……。
「リーンが前に言っていたのですが、スライムは草を食べていたそうです。 ですので、たまには生態を考えてその様な物を食べたほうが良いかな?と思いますので」
「なるほどな……」
故に、シノがその様に説明すると、ローグは首を小さく上下させ納得する。
そして。
「ならば、明日散歩に行くフリをして探しに行くか? とりあえず、山菜の情報を従業員に聞き込みしておこう」
「では、お昼過ぎが良いでしょう。 それから山菜を探しに行きましょう」
二人はそう会話を交わすと、再び眠りにつくのであった。
…………。
「紅茶は何にするか……。 ここは、プリンスオブウェー……」
「ふあぁぁぁぁぁ……。 あ、ローグさんおはよう~……」
「ん、リーンか? どうした、まだ六時半だぞ?」
雨雫が葉に残る朝。
ローグがキッチンでポットでお湯を沸かし、棚に置かれていたインスタントの紅茶パックをティーカップに入れたその時、寝ぼけ眼のリーンが声をかけてきた。
だが、その足取りはややフラフラしており、やや心配か?
そして、頭を壁にぶつけると同時に上げた「いた!」っと言う声によって、状態異常、眠気は解消され、その瞳はいつもの様にパッチリ瞳へと変貌する。
「いや~ワクワクしていたら目が覚めちゃってさ~。 ねえ、ローグさんは一体何で起きてるの?」
「何、せっかくキャンプ場に来たんだ。 とりあえず紅茶を飲んで目を覚ましたら、この辺りに何があるか見て回ろうと思ってな」
「へえ~」
口を軽く開けて見つめるリーンをよそに、見つめられるローグは、暖かな紅茶を口に運びズズッと啜る。
それを見つめていたリーンは。
「そういえば、何でローグさんはローグってあだ名なの?」
「ん?」
「だってモニさんはピザが好きだからその関連で、でもローグさんってあだ名の理由は何でなのかな?って思ってさ」
「あぁあれか……」
今更ながら、あだ名の由来を尋ねる。
ただこの疑問は、別に前から思っていたわけではない、単に今ふと思いついただけだ。
その為なのか、リーンの顔は何も考えていなさそうな間抜けな顔へと変貌しており、ローグはそんな顔を見ながら。
「対した理由じゃないぞ?」
そう照れ臭そうに言うとあだ名の由来を話始める。
「俺は昔から真似事が得意でな。 と言っても、ある程度の動作だけだがな。 それであだ名が技術泥棒、そしてそれからRPG好きだった知り合いが、RPGの上位の盗賊職のローグから取ってローグって呼び出してな。 それであだ名になったんだ。 ちなみに、楽器全般は何でも引けるし、スポーツでも活用できる便利な特技だな」
「へぇ~」
そして、興味深々のリーンをよそに、再び紅茶を口に運ぶ。
「だから前、しばらく私を付けていた時も、モニさんのマネをしていたから、私、全然気づかなかったのね」
「ぶ!」
が、リーンの予想外の言葉に紅茶を噴き出してしまうのであった。
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