リーンの感じたままに

リーンの感じたままに

 「私さ、こっちの世界の人間を見てると、なんかあっちの世界の人間と同じに感じないなぁって思うようになってさ~」

 「「へえ~」」


 帰りの車の中で、最後部座席の中央に座るリーンはそう呟き、その両サイドに座るコトネとアズサは興味深そうに声を上げる。

 リーンがそう思うのも仕方がない。

 前の世界の人間は、スライムたちを狩る事しか考えない者たちばかりだったのだから。

 しかし。

 ・前の世界と違い、リーンの話を聞いてくれる人間に出会えた。

 ・前の世界と違い、マナと言う小さなスライムを、大切にしてくれる人物に出会えた。

 ・前の世界と違い、自分を気遣ってくれる人物に出会えた。

 この様に前の世界と比べると、そんな言葉が彼女の口から出たのは自然な事だろう。

 そして彼女は語りだす、自分の思いをアズサとコトネと言う仲間たちに。


 「だって、こっちの世界では私の話を聞いてくれるもの。 あっちの世界だと、私がスライムと分かった瞬間襲ってくるしさ~」

 「何と言うか……。 その言葉だけで、リーンの世界の人間が野蛮なのはなんとなく分かるな」

 「ほんと、リーンさんの世界でスライムに生まれなくてよかったって思うっスよ、そんな話を聞くとっスね……」

 「だけどさ~、こっちの世界に来て思ったわ、環境が何もかも変えるのだって。 きっと余裕があるのだから、ここの人たちは優しいから、私に物をくれたりしてくれるのだって」

 「む? だが近所の鍋島と言うご婦人が言うには「荷物を運ぶのに困った時があると、いつもリーンちゃんは自分のやっている事を辞めてまで助けてくれてくれるとってもいい子なのよね~。 だから、あの子は助けてあげあられるだけ、助けてあげないとダメだと思うのよ~」と言っていたぞ、つまりリーンの行いが良いのではないか?」

 「言われてみればリーンさん、たまにお手伝いしてるっスよね? 良いんスか、自分のやることを放っておいても?」

 「だって、目の前で困っていたら助けない訳にはいかないでしょ? ほおっておく訳にはいかないじゃん!」

 「うむ、実に素晴らしいなリーン。 その精神を兄にも見習わせたい限りだ」

 「でもお人よし過ぎるようなっスね……」

 「でも、ほおっておけないもん、困っている人! だから私は……」


 そして、その会話に自然と二人は引き込まれ、明るく会話を繰り広げるのであった。

 そんな三人の前では、熟睡するマナ、そして。


 「おっさん、感謝するぞ……」

 「何、こんな一生懸命な子を助けないと、男としてね~」

 「なら、何故私にはセクハラするのですか~?」

 「それは良い女性にはセクハラするのは男の本能と言うか……うぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 「おっと手が滑って変態刑事にスタンガンを当ててしまいました~」


 年上三人は、そんな物騒な光景を繰り広げた。


 …………。


 喫茶店に戻り、スタンガンで痺れる一人を除き、皆それぞれ自分の住処へ戻っていく。

 そんな中、家へと歩くリーンは。


 スライム達と仲良く住める世界を目指す思い、それも大切だけど、こんな人たちも大切にしたい。


 そんな思いを胸に、夕暮れの赤い空を見上げた。

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