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「お、先に戻ってたの~? 君たち~」
「お前ら、早かったな」
「ご案内、終わりました社長……」
社長室で待っていた女性陣と合流したサンタモニカとローグは、それぞれ軽い口調と平常な口調を女性陣に送り、そして後藤さんは案内が終了したことを穏やかに報告する。
きっといい日だった。
きっと7人は、この一日がなんやかんやで良かったと感じているだろう、それは皆の微笑む顔を見れば分かる事だろう。
だがすっかり忘れていた物があった、それは当初の目的である。
【 (∩´∀`)∩ 】(出来立て食べたい! 出来立て食べたい!)
「「「そ、そういえばマナ(マナちゃん)を工場内へ連れて行ってない!!」」」
「「え!?」」
本来の目的は、マナの為だった。
だが、色々ありすぎてすっかり忘れていた女性陣が、やや冷静さを失う中、シノはテキパキと工場見学へ行く段取りを組む。
「あの、先生! 食品機械を食べれる所あります!?」
「え、あぁあるわよ、確か後藤が案内していたんじゃないかと思うんだけど……」
「分かりました! 立花君、案内お願いします!」
「任せろ! 場所は覚えているからな! マナ、行くぞ!」
【 (∩´∀`)∩ 】(わーいわーい!)
シノはキョーコに確認を取ると、ローグに案内をお願いし、ローグはマナをおぶると走って、先ほどの餃子の食品機械の工場まで走って向かい。
「ま、待ちなさいよ!」
「は、早いっスよ二人とも!」
「お、おいそんなに慌てなくても……」
その後ろを、リーン、アズサ、コトネの三人はやや遅れた速さで追いかけるのであった。
そんなシノの背中を見て。
(全く、根が真面目で良い子なのだから。 ホント、可愛い教え子よ、アナタは……)
キョーコは静かに微笑み。
「……もしもし、もう一度彼らが見学するからよろしく。 あと、餃子を多めに用意しておいて!」
そう社内連絡様の電話を工場にかけるのであった。
…………。
「……では、ごゆっくり」
後藤さんは社長室から出て行った。
残ったのは、両手をポケットに突っ込んでドアの近くの壁に寄りかかる、真剣な目のローグと、社長イスに座るキョーコ。
そして二人はしばらく黙って見合った後。
「アイツ等の為に手を貸してくれてありがとう……」
「それよりいい加減、刑事を止めたら? 誰かを守る為に、いつも体をボロボロにしてさ」
「俺の生きがいだ……」
「昔からそうよね、いつも誰かの為……」
「何が言いたい……?」
「感謝してるって言いたいの。 アンタがアタシの学費なんかを稼ぐ為に、一生懸命働いて、自律神経がおかしくなるまで無理をしてくれたから。 ここに座っていられるのも、そのおかげかもしれないし……」
「そうか……」
真剣な顔で二人は薄暗い雰囲気の会話をする。
そして、またしばらく沈黙した後。
「結婚して幸せになれ。 親父も、そう願っているハズだぞ?」
「アンタが震える手を直す気になったらね。 ホント、アンタに無理してほしくないって父さん達もきっと思ってるわよ」
「お前が先だ……」
「善処はするわ。 だからアンタももう少し我慢しなさいよ、そうしたら私の……」
「……なら、なるべくアイツ等の世話を頼むぞ」
「はいはい、わかったから、少しは自分も守りなさいよ、バカ兄貴……」
ローグはその言葉を最後に、壁から離れ社長室を後にする。
そして、皆を小走りで追いかけるその表情は、先ほどまでの真剣な顔つきから、いつもの和やかな表情に戻っていた。
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