晩御飯はルームサービスで食べる事になった。

 机の上には、マナが頼んだ食事の数々、通称マナセットが並ぶ。

 まずは前菜にサラミとハーブたっぷりのピザが届き、それをローグが笑みを浮かべ。


 「ピザが前菜のサラダとは、すばらしいな。 マナが選んだ前菜、メインディッシュ、デザートは健康のバランスも考えてすばらしいな!」


 と口づさむ。

 次にメインディッシュのとんこつラーメン、しかも野菜たっぷり乗ったもの、それをシノが笑みを浮かべ。


 「野菜たっぷりとは、女性にしっかり気を使っているのですね~。 ホント、マナの選んだ前菜、メインディッシュ、デザート、どれをとっても素晴らしいですね~」


 とコメント。

 そしてデザートに大量の餃子、それもそれぞれ具が微妙に違い、クリームチーズが入っていたり、野菜が入っていたり……。

 そんな餃子を、マナは美味しそうに。


 「おいしい……おいしい……! マナセット、誉められた……」


 と笑みを浮かべて、橋を器用に使い、口に運ぶのであった。


 「なぁ兄よ……」

 「ん、何だコトネ? 何か追加で注文したいのか?」

 「いや、そうじゃなくてだな……」


 そしてコトネは、冷静にローグに一言。


 「メインディッシュが3つ無いか?」


 と当然の疑問をぶつけた。

 そんなコトネの後ろからは。


 「今こそ私たちの仇を取って、勝利するのよ……。 そして私たちの未来いじられ役卒業のため、頑張って妹……」

 「おいら達の人権はコトネちゃんにかかってるっス、だから頑張って買ってほしいっス……」


 と黒焦げースの二人が、弱弱しい声援を送るのであった。

 そんな声援を受けたコトネは、黒焦げーズの二人を見ると、右手を握りしめ。


 「私に任せろ!」


 胸を張って返すのであった。

 そして兄弟の意味の無い闘いが今、切って落とされた。


 「メインディッシュが三つだと? 何を言うんだコトネ?

 「兄よ、ピザはピザだ、サラダな訳が無いだろう?」

 「ピザの上に、ハーブがたっぷりあるじゃないか? どう考えても前菜のサラダだろう? お前は一体何を言っているんだ?」

 「つまり何か? 植物を乗せれば何でも前菜になると言うのか?」

 「その通りだ、野菜が乗れば何でも前菜のサラダになるんだ。 今世界ではそうなったんだ!」

 「ならば雑草を乗せてもサラダになると言うのか?」

 「なる!」


 ローグの屁理屈は止まらない、だがここでコトネが、ローグが答えづらい言葉で攻めに入る。


 「ほう? ならそのピザの上に雑草を乗せて食べて見せてくれ。 なに、雑草は至る所に生えているだろう?」

 「ぐ、わ、分かった……」

 「ほほう? なら今から兄の携帯の中に入っている連絡先の相手全員にそう宣言してもらおう。 何、世界の常識になったのだろう? 問題はあるまい?」

 「ぐ、うぐぐ……」


 ローグは根は常識人だ、いくら相手をからかおうが屁理屈をこねようが、常識の範囲を超えて言う事は無い。

 なので他人を巻き込まれ、社会から冷たい目で見られかねない結果を生む行動には自動的にブレーキがかかる、それは兄弟故にコトネは良く知っていた。


 「良いわよ妹、そのまま一気にローグさんを攻め立てるのよ! そうすれば次にシノに直接言えるダイレクトアタックできるわよ!」

 「そうっス、コトネちゃん! ローグさんはダウン寸前っス、追い詰めるっス!」


 そして、後ろから拳を握りしめ、声援を送る黒焦げーズの二人。

 それは二人の私たちの未来いじられ役卒業の為。


 「おや、私に直接攻撃ダイレクトアタックとはどういう事で?」

 「「へ?」」


 だが、ダイレクトアタックと言う曖昧な言い方が悪かった。

 おかげで、二人はスタンガンを構えたシノによって、新たな黒焦げーズへ生まれ変わろうとしていた。

 私たちの未来いじられ役卒業へ到達するのはまだ先の様だ。

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