15.人生は不器用に……
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「そういえば、リーンさん。 ちびっ子スライムたちはどうしたんスか?」
「あぁ、あの子たちはモニさんが預かってくれたわよ、せっかくだしスライムとの日常を忘れて、キャンプを楽しんできたら?だって」
「あの人がっスか!? 何か、いやらしい事を考えているんじゃないっスかね……」
「へ? スライムを預かって、いやらしい事って何をやるの?」
「……うん、流石に考えすぎっスかね?」
「うんアズサ、考えすぎだって!」
リーンとアズサの二人は、それぞれヒリヒリする頬を押さえながらゆったり歩く。
だが、その表情は痛みを感じながらも楽し気で、仲睦まじい姿の例と言っても過言ではない雰囲気。
そんな様子を後ろからシノはにこやかに見ていたが、何か思いついたのか二人を抜いてローグ達のいる先頭へと走り去った。
しかしそれは。
「あ~びっくりした~……、いきなり横をスッと走り去るから、シノに何かやられるかと思った……」
「お、オイラもっス……」
二人に思わぬ冷や汗をかかせることになったのであった。
そんな中、ふとリーンの脳内に、それに関連した話題が浮かび、少々不思議そうな顔を浮かべて話し出す。
「……そういえば、シノって最近丸くなったよね?」
「そうっスか? 前と変わらないような?」
「アズサ、これを見てよ?」
「ん? 何っスか?」
リーンは、折りたたまれた2枚の紙切れを懐から取り出しアズサに渡す。
それは以前、リーンがアズサの卒論をこっそり手伝いたい思いで相談した際、シノが丁寧にメモしたスライムの生態。
それを渡したリーンは。
「それね、アズサの卒論をこっそり手伝いたくて相談した時、シノが書き上げてくれたものなの」
「せ、先輩がスか!?」
「うん。 最初ローグさんに相談したんだけど、ローグさん、そういうの苦手みたいでさ、それでローグさんがシノに相談したら、手伝ってくれる事になったって訳! それで、私の話を聞きながらスライムの生態をメモしてくれてね、それがその紙なの」
「先輩がスか……」
そしてアズサは不思議そうな顔を浮かべながら書かれている内容に目を通す。
しばらくして、目が潤みだす。
それは最後に目に飛び込んできた、狙われる理由と言う項目を読んで、リーン達がかわいそうに思ったからだ。
そして。
「うう……」
「ど、どうしたのアズサ!?」
「うわーん!」
遂には感情が高ぶり、大泣きしてしまう。
「何、何がどうしたのアズサ!?」
「だって……だって……」
「何? 何なの!?」
「だってリーンさん達スライム、すっごいかわいそうなんスもん! グスッグス……」
「そ、そうなの!?」
そのアズサの不意の一言に、リーンは感動の笑みを浮かべ、そして。
「うわーん、アズサありがとう~! 私たちの気持ちを分かってくれて嬉しい、嬉しいわ!」
「グス、良いんスよ~。 逆に今までそんな話も聞かないで申し訳なかったっス、それにこんな素敵なメモ用紙を見せてくれてありがとうっス! うわーん!」
「いいの、良いのよアズサ~」
そしてガッシリ抱き合い、固い友情を確認した二人は、仲良く話しながらコテージへと歩みだし、楽しいキャンプへの初日の夜を迎える。
…………。
つもりだった二人だが。
「あれ? ドアが開かないっスよ!?」
「ええ!? 泊まるコテージってココよね!?」
遅れてやってきたコテージの扉は固く閉ざされていた。
そしてコテージの中では。
「…………」
「そんなに楽しいのか……?」
「ええ、とっても……」
ドアのカギをかけてニヤニヤしているシノに、一人用のソファーに座ってくつろぐローグは呆れた顔でそう口にした。
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