「……ん? どうしたんだお前たち?」


 思い出し怒りが収まったローグは、その混沌とした様子になった4人を見て、声を出す。


 常識や普通が理解できなくなり、常識と普通の渦に飲み込まれた結果、頭を抱えて絶望的な笑みとでも言う表情を浮かべるコトネ。

 暴力をじゃれ合いと読むと言われ、理解不能の末、頭から湯気を上げて真っ白な灰になるアズサ。

 それをニヤニヤ見るシノ。

 そして「なんでよ~、ワタシにも答えてよ~」とシノの胸元をポカポカポカポカいっぱい殴った結果、スタンガンで真っ黒こげにされたリーンの姿があった。


 「おや、落ち着きましたか、ニートさん? いったい何に怒っていたのです」


 そんな中で唯一喋れる状況だったシノが、ローグの声に反応して近づく。

 そんなシノにローグは不愉快そうな顔で、その原因を口にする


 「お前の先生の事だよ……、この前酷いからかわれ方をした……」

 「おや~、ドSなサービスを受けたのですか? 本来ならお金を取られるので良かったじゃないですか、ドMニート様?」

 「ドMじゃないぞ……、それより何だこの惨状は? リーンは何となく分かるが、アズサとコトネは一体どうしたというんだ?」

 「ちょっと難しい勉強をしただけです」

 「難しい勉強? 何だそれは?」

 「大人の勉強です。 まとめて話すと、非常識な常識を、暴力を行使しじゃれあいつつ、体に教えたのです」

 「大人の勉強ね……」


 そして大人の勉強と言われたローグは、一瞬イヤらしい光景が脳内に浮かんだが、3人の姿を考えて違うと結論付けると。


 「で、ホントのところはどうなんだ?」


 と尋ねる、だが。


 「キャー、鼻血出してるオオカミに襲われます~キャーーー!」


 鼻血を出しての質問はシノの更なるからかいを呼ぶだけであった。


 「仲良く……仲良く……」

 「「ん?」」


 そんな二人の会話を切るように小さく女の子の声が耳に入る。

 二人は、誰だろう?と思い、きょろきょろと周りを見渡す、だが周りはやっぱり建物だけ、6人以外の人影はない。

 そして、二人して幻聴だったのかと思いだした、その時。


 「「ん?」」

 「ここ……ここ……」


 ローグのズボンとシノの綿パンを引っ張るマナの姿、その口から声が出ている。


 「マナ、話せるようになったのか!?」

 「マナ、声を出せるのですか!?」


 そんなマナに、ローグとシノは驚き、そして笑顔を浮かべ。


 「マナ、話せるようになったのか、偉い、偉いぞ~!」

 「マナ、素晴らしい第一歩ですよ~、えらいえら~い!」


 ローグは頭を撫で、シノは頬を優しくさすって大喜びするのであった。

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