森の中の砂利道を進み、古い橋を渡り、彼らがたどり着いたのは新しく建築されたであろう真っ白なコンクリートの建物の本館、そしてその前には広い駐車場が広がっている。

 ここは、ATINユニバーサルキャンプ場、水道施設、自家発電施設、通信施設、そしてスーパーがある、現代風のキャンプ施設である。

 そして今回、皆が止まるのは施設内にあるコテージの中でも、とびきり大きいコテージ、しかも広いプールや露天風呂も付いた特別なものである。


 「「「おぉ~~~」」」


 そんな施設を見た皆はそう揃って声を上げ、その声が6人しかいないキャンプ場に響く。

 当然それは。


 「あれ? 何で客が私たち以外誰もいないの?」

 「そうっスよね、何でいないんスかね?」

 「二人とも、もしや事件かもしれないぞ?」


 と三人の疑問の声を招くが。


 「あぁそれは大丈夫だ、持ち主の心遣いだろうからな」


 その理由をローグは知っていた。

 そしてローグは思い出す、その時の事を。


 …………。


 それは、キョーコと二人で話した時の事、ふとリーンの目的等の話を始めた時リーンについて「くだらない」と言った時に話は戻る。


 くだらないと言ったキョーコは、呆れながら言った。

 

 移民問題を見てみなさい。

 移民を受け入れて幸せになった国があるのかしら?私の知る限り失敗だらけよ。

 なぜだと思う?

 安住の地に満足した後は、同じ境遇の仲間と集い、自分たちの世界を他国に作るからよ。


 キョーコは冷たく言った。


 そんな世界を見た元の住民達の意見は分かれるわ。

 未知の世界に興味を持つもの。

 未知の侵略に恐怖するもの。

 そしてそれが限界に達すれば争いが起き、その国の世界は内部から壊れていくのよ。


 キョーコは苦笑しながら言った。


 スライムと人々が仲良く暮らせる世界にしたい?

 そんな夢物語、考えてみても笑い話も甚だしいわ。

 第一、何で私がアズサにスライムの論文を書くように提案したと思う?

 あの子を通じて、この世の現実を教えるため。


 ローグは声を荒らげて言った。


 何でそんなことを俺に言ったんだ?

 不思議と仲良くなっているあの二人の仲を裂いて何が良いんだ!?と


 キョーコは真面目に答える。


 何を勘違いしているの?

 私は、あの子にスライムとの共同生活できる可能性を、この世界に人々に教えてあげるって意味よ?


 当然、ローグは「は?」と戸惑いを口にする。

 そんなローグにキョーコは微笑みながらこう話す。


 貴方は兄に似て、相手を思いやる仲間重いのバカね、だからあの子シノはあなたのそんな所に恋心を抱き、兄は自身に似ているからあなたに気をかけているのかもしれないけど……。

 だけどフフ……良いわよね、スライムと人々が仲良く暮らせる世界にしたいなんて。

 笑い話にしかならない夢物語だけど、そんな夢物語も悪くないわよね……。

 それに兄が大切に思うアナタやシノの気持ちを大切に思えば、手を貸さない訳にはいかないわ。

 だから今は、私の考えに大人しく従いなさい。

 夢を現実へ引っ張り込む、次元を超える私の一手なのだから。

 そして状況を見て、最善の一手を打ってあげるわ!


 そしてキョーコは……。


 しかし、やっぱアンタ馬鹿ね~、同じ日に同じような手に二度も引っかかるなんて、バーカバーカ二度も引っかかるバーカ! ギャハハハハハ……ぎゃあぁぁぁぁぁ、いだだだだだだ!


 壁を叩いて大爆笑した為、ローグは生まれて初めて怒りに任せ、女性の頬を強くつねったのであった。


 …………。


 「やっぱあの人……。 思い出すと腹が立つな……と言うか、最善の手を打つどころか、風邪の魔の手に引っかかりやがって……」


 が、ローグはその事を思い出した結果、拳を握りしめて怒りに燃えるのであった。

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