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「私はあの子の事、初めての教え子だったし、唯一の教え子だった。 それに私を慕ってくれた、私もあの子の事、特別な存在だと思ってるわ」
「…………」
「だからこそ、あの子の幸せを願いたい。 言いたいことは分かるわよね?」
「分かっている……つもりだ」
二人の声が店内を包んでいた。
だが、ローグのその言葉を最後に、店内の空気はしばしの静寂を迎える。
二人は互いの言いたいことが分かっていた。
それは互いの目が、それを訴えているようであった為。
ローグは思う。
(言いたいことは分かっている、シノの気持ちに答えるべきだという事は俺も分かっている、だが……。 俺ってバカだな、こんな時に男のプライドを立ててしまうなんてな……)
そしてキョーコも思う。
(
実際、二人の付き合いなんて、1カ月程と実に短い。
だが、それでもシノを大切に思う者同士、理解し合える部分があるのか、二人は互いに自分と沈黙の議論を繰り広げる。
…………。
静寂が始まり10分ほど経ち、互いに考えは整ったようだ。
二人は互いに両指を組み合わせ。
「バカだろ、男って?」
「人間でしょ? 仕方ないわ……」
それぞれ真剣に言葉を発し、シノの話は終わった。
そこから先の空気は、明るく楽しいものへと切り替わり、二人はパーティの話を始める。
「話を変えましょ、兄貴から聞いていると思うけど、うちの会社が経営しているコテージを使ってアーちゃん卒論がんばれ! 応援パーティを開くつもりだけどさ、アーちゃんが好きな物って何か分かる?」
「アーちゃんって……もしや、アズサの事か?」
「勿論そうよ、今思いついたんだけど、素敵なあだ名でしょ! あ、せっかくだから美味しいお酒も用意して……」
「ダメだ、汚いバイカル湖を作るぞアイツ」
「ん~そうだけどさ~、あの子って酒好きそうじゃない?」
「はぁ……、あのバカ酒弱いくせに、意外と飲むの好きだからな……」
ため息交じりに口にするローグ、だがこれがキョーコの変なスイッチを入れることになる。
「なるほど、ここはキョ子エモンの四次元ポケットから秘密道具を取り出すしかないわね!」
「秘密道具? って服を脱ぐな、おい!?」
顔を赤らめ、必死にやめるよう手を無造作に動かすローグなど気にせず、上着を脱ぎ、ワイシャツのボタンを一個、二個外し、そして。
「テレレテッテレー、ハイテンションドリンク~! これを飲めば、体が熱くなり、一時のテンションで服を
「ハイテンションドリンクって、ただのスピリタスじゃないか! と言うか何する気だ! 第一その瓶どこから取り出した!?」
自身の胸元に手を入れて、物理法則を無視して取り出されたスピリタスの瓶を、まじまじとローグに見せつけながら、素敵な笑顔を浮かべるのであった。
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