「社長さん、何でここにいるんだ!? と言うかおっさん何処だ!?」


 突然消えたサンタモニカ、突如現れたキョーコに驚いたローグは机をたたいてキョーコに問い詰める。

 するとキョーコは満面の笑みを浮かべ、体をフラフラ左右に揺らしながら。


 「おっと、ダメよ~そんな慌てたら~。 話は落ち着いて聞くものよ~、あ、もしやお姉さんに惚れちゃった? うーん、お姉さんって罪な女か・も?」


 等と言うと、ローグは机に手を置き、呆れた顔で。


 「自意識過剰って知ってるか?」


 と口にする、これが口喧嘩の狼煙となったようだ。


 「へ、へぇ……、ホントの事を自意識過剰って言うのって失礼よね~、何、童貞ニートって異性の前ではカッコつけて悪口しか言えないの? え?」

 「いや、自意識過剰はホントだろ? と言うか童貞言うなよ、第一俺は童貞じゃないからな」

 「つまり、幾多の女の子たちを毒牙にかけて、傷物にしてきた森のオオカミさんって事!? 何、まだまだ血気盛んな欲望の塊を、私やシノに押し付けようと言うの!? 不潔よ!」

 「何だ? その言い口だと、童貞以外は皆オオカミって言いたいのか!」

 「なら何で『男はみんなオオカミなのよ』って歌があるのよ!? 皆オオカミだからでしょ! そしてオオカミさんの欲求をここで私に!?」

 「そんな事する訳がないだろ!」

 「何を言うのよ! どうせこの後シノを呼んで、師弟関係の私たち二人を美味しく味わうのでしょう!?」

 「いい加減にしろ! シノに対してそんな事が出来るか!? アイツは俺の中で最も大切な存在なんだぞ!」


 最初はローグも落ち着いていたが、目を血走らせたキョーコの言葉に徐々にイラつきを見せ始め、遂には大声でシノに対しての思いを叫ぶ。

 だが、それがキョーコの狙いだった。

 その言葉を聞いた瞬間、先ほどの血走った目つきはどこへやら、満面の笑みを浮かべてローグに話しかける。


 「へぇ、やっぱりあの子の事、大切に思っているのね~」

 「な、なんだよ……」


 突然の空気の変化にローグも戸惑いを隠せない。

 だがそこからの空気は、徐々にニコやかな感じに変化しながらも、真剣な雰囲気を醸し出す。


 「まぁ、さっきの言葉は冗談よ、遅れながら謝っておくわ。 アンタの本音が聞きたかったのよ」

 「あ、あぁ……」

 「まぁココからは、まどろっこしい言い方はしないわ。 アナタ、シノの事、好きなの?」

 「な、何をいきなり……」

 「これは真剣な質問よ。 シノの事は異性として好きなの? YES、NO、どっち?」

 「…………」


 腕を組んで真剣な顔のキョーコを前に、ローグの口は止まる。

 恥ずかしさ、照れくささ。

 それが彼の口を止める原因だ。

 だが、その様子が逆に質問の答えと感じたキョーコは。


 「良いわよ、もう言わなくても。 気持ちは分かったわ……」


 と首を小さく上下に振りながら、小さくそう口にしたと思うと、自身の本音を語り始めるのだった。

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