13.気晴らしへの計画

 「ああ言ったが、流石にシノに任せっぱなしなのは男としてな……、何かできないものか……」


 二人と別れた後、ローグはそう呟きつつ、ゆったりと歩いて自宅へ向かう、すると。


 「おやおや~悩み事かい、ローグ君?」

 「おっさん、いきなり背後から湧くのは止めろ……、毎回軽くドキっとするんだ……」


 不意を突くようにローグの背後から湧いたサンタモニカがローグに声をかけ、そこからツッコミどころ満載の会話を歩きながら開始する。


 「そう言うけどね~、犯人や可愛い子を追いかける時、役に立つよ~! あ、あとキャバクラでの受けもいい! 嘘でしょ~なんて言われてさ~、あっはっはっはっは~」


 刑事が可愛い子を追跡行為ストーカーとは、笑えない冗談ではないだろうか?


 「犯人はともかく、刑事が可愛い子をストーカーってマズいだろ、そりゃ……」


 初期の頃、監視と銘打ってリーンを追跡していた男が何を言うと言いたくなる、実に素晴らしい言葉ではないだろうか?


 「え~おっさんそんなこと言ったっけ~、わかんなーい」


 ここまで記憶障害が酷ければ、病院に行くべきである。


 「全く、俺はどんな時でも記憶がしっかりしているからな。 まぁまだ24だからかもしれないが……」


 アズサとリーンの料理を食べた事を忘れているぞ、と教えてあげたい一言である。


 だが、こんな突っ込みたくなる会話だったが、ローグがふと零した「はぁ……」と言うため息によって終わりを迎える。


 「なになに~重いため息ついちゃって? 両親から引き継いだ資産を使い果たして不安なのかい?」

 「んな訳ないだろ? コトネの学費と生活費を余裕を持って出せる程、上手に運用してるぞ。 そうじゃなくて、シノに任せっぱなしにして申し訳ないから何か手伝えないかなって思ってる訳なんだよ!」

 「なるほどね~、ちょっと来なさい! 良いところがあるから!」

 「へ? あ? 待てって、離せって、おっさん!」


 そしてローグはサンタモニカに引っ張られ、昼の青空の街並みへと消えていった。


 …………。


 「何だ、このコテージは……」

 「ここね、妹が営業しているとこでね、ここでアズサちゃん応援パーティを計画しないかい?」

 「つまり、覗いていたんだな……」

 「おっと、市民を守るため、しっかり見守っていたと言ってくれ! だから110に電話するのは止めようよ~少年~」


 ロケットパンチを味わえる例のメイド喫茶にやってきた二人は、サンタモニカが懐から取り出したチラシを見ながら、そんな素敵な話を繰り広げるのだが。


 「俺は行くのは良いが、根本的に交通なんかはどうするんだよ?」

 「そこはアレよ、妹のマネーの力を全力でお願いしてあってだね……」

 「見事なまでに情けねぇな……、おっさん、罵倒されたんじゃないか?」

 「されたよ? でも分かってないな、ローグ君。 ドMのMっていうのは、無敵のMを意味するんだよ? そんな事で凹んでいては、名誉プロどMとして恥ずかしい限りだよ、むしろ興奮したね!」

 「恥ずかしいのは、おっさんだよ……」


 そして、サンタモニカの清々しい程、恥ずかしい発言に、ローグはため息をつきながら。


 「ホント、女性陣にばかり、色々と大変な思いをさせているのに、男って情けないモンだな……」


 と気が重くなるのであった。

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