「ちょっと待っててください、コレはサービスです」


 そんな一言の後、シノはリーンに軽食としてフレンチトーストと紅茶を差し出すと、カウンターの下からA4サイズのメモ用紙とペンを取り出し、店の隅で何かを書き始める。

 そしてリーンはフレンチトーストをかじりながら、シノの様子をチラチラと見る、そしてふと感じたことがある。

 それは。


 (不思議といつもの雰囲気と違うんだよね……、優しさとかじゃないけど、悪い気持ちじゃない何か……)


 という曖昧なもの。

 だがすぐに。


 (うん、分かんない!)


 と彼女は考えるのを諦めた。

 そして、それから数分して。


 「良いですか? コレに貴女の話の要点を書きました、これをアズサにヒントとして伝えるといいでしょう」


 シノはそう言ってA4用紙程の大きさの紙を2枚渡す、そこには。


 ・種族全体の傾向

 ・食事、および汚い食事を取った結果

 ・スライムが狙われる理由


 とやや大きな字で書かれた項目、そしてその下に手短に書かれた項目の説明が綺麗な字で書き記されていた。

 それを眺め終えたリーンはシノを見ながら。


 「ありがとうシノ! 今日ほど頼もしいと思ったことはないわ!」


 と嬉しそうに手を振りながら、立ち去って。


 「ぎゃん! イタタタタ……」


 ドアにぶつかり、数秒怯んだ後、冷静にドアを開けて去っていった。

 そして、そんな後姿を見送ったシノの顔は、ゆっくりと曇り。


 「アナタが羨ましく思いますよ、リーン。 貴女は人を信じ、今を失う事を恐れず、誰かの為に一生懸命になれる、立派ですよ……。 それに引き換え私は、立花君との関係を失うかもしれないのが怖くて……」


 そう希望を見るかの様に、静かに呟いた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る