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店の前に止まる一台のトラックと軽自動車、そこから女性社員が数名降りてきて、清掃用機械、そして様々な下着と服と鏡を降ろして店内へと運ぶ。
これはシノの話を受け入れたキョーコが。
「冷静に考えたら歩くのってめんどくさいわよね~。 あ、そうだ、どうせなら服を運ばせてココで試着とかやっちゃいましょ! ついでに、清掃用の機械でこの店の汚れた床を掃除しましょう! うん我ながらナイスアイディアね!」
と明るく言った事から行われたもの。
そしてキョーコが電話をして数十分後には、ドラックが到着し、更にその数十分後には床の掃除や片付けが綺麗に終わり、服が店内へと押し込められていた。
押し込められた服は様々だ。
キョーコが普段来ているようなラフな格好から、可愛らしい恰好、果てはアイドルがテレビで着ているような派手な衣装まで様々。
だが、そんな服を着る前にやるべき事がある、それは。
「ずっと思ってたけど、下着ってなんか慣れないわね……、特にブラジャーってさ、後ろをくっ付けにくいと言うか……」
「だ、大丈夫スか、リーンさん?」
リーンの下着選びである。
だが、リーンの言葉を聞く限り、リーンの世界には下着の文化が無いらしく、その動きも何かぎこちない感じ。
仕方がないので、アズサが手伝って貰い、何とか下着を纏った訳だが、下着を纏うだけで6分近くかかっているところを見ると、彼女がいかに慣れていないかが良く分かる数字だ、故に。
「しかし、こんな物。 よくこの世界の女の子達は平気で付けれるわね……」
と驚きを隠せなかったのは当然の事なのだろう。
さて、ひと段落が済んで、服の試着の時間、だが店に押し込む様に置かれた大量の服、選ぶだけでも結構な時間が経ちかねない。
特にリーンはこっちの世界の服に興味深々である、目を輝かせて数えきれない服を手に取り試着し、鏡で見る。
「うーん、この服なら髪を長くしたほうが良いかしら……」
「これなら、胸を大きくして、セクシーにしたほうが……」
「これは元の服に近い感じ! でも何だかなぁ……」
彼女は服を着て、それに合わせて髪や体を変形させる、だが顔つきや肌の色は変えたくないのか、変えられないのか?分からないが、その部分に関しては変化は無かった。
そんなスタイルや髪の変化を、同じく色々服を試着中のアズサが。
「良いっスよね、リーンさん……。 オイラなんて中学生から体の変化が無いっスから……」
と親指を加えながら、羨ましそうに眺めていたが、服に夢中のリーンはその羨ましそうな視線に気が付かなかった。
…………。
「何を考えているんですか、先生?」
「ん?」
そんな様子を服が置かれていない唯一のスペースであるキッチンから、着替える二人を見守る挑発的な下着の二人は、そんな様子を見ながら、顔を微笑ませていた。
「先生の事ですから、何かあるんですよね? こんな行動をした理由」
「あぁ、単純にお人よしってだけよ、シノ」
「欲望のままにですか?」
「そうね、私がしたいからそうしただけよ。 アンタもそうしたら、彼を落とせるんじゃないの?」
「……たまに思うんですよ、今の姿が彼に好まれているのか?なんて。 正直不安なんですよ、今の私は彼に好かれているのか?って」
「不安なの?」
「不安ですね……」
「そう……」
初めは和やかな雰囲気だった。
だが、途中から徐々にシノの顔は、やや暗い表情を浮かべ、目の視線も下に下がり、今は不安に押しつぶされそうな表情を浮かべている。
今の私を
もしダメなら
それ以前に、私をどう思っているのか?
シノはそんな考えで、胸がいっぱいだった。
(全く、この子の根の真剣さは変わらないわね。 頭は良くて真面目で、何処か猪突猛進なところがあって可愛らしい、ホントこの子は変わってないわ……)
そんな彼女を見た後、キョーコは腕を組むと、前を向いて目を瞑る。
可愛い教え子の為に、何が出来るのかを考える為……?
そして、楽しさと羨ましさと真剣さが要る交る店内の空気に、店の電話の音色が仲間入りした。
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