「ぐ~~~……、ん? へ? ん?」


 シノに揺らされた事でソファーに寝ていた美女は、寝ぼけながら体を起こして足をソファーから降ろす。

 そして、少しボーっとした後、目が覚めたのか目がパッと開き、嬉しそうな声でシノに話しかける。


 「ん? アンタ、シノでしょ? どうしたのアンタ、綺麗になっちゃって!」

 「えへへ、先生のおかげですよ~」

 「よーし、良い子はナデナデしてあげるわよ~おいで~」

 「は~い!」

 「よーし、ワシャワシャワシャ~」


 そして嬉しそうな笑顔で、猫の様な仕草をしながら甘い声を出すシノを、キョーコに頭をワシャワシャ撫でられる。

 だがその異様な様子は。


 「し、シノが頭を撫でられているんですけど!? ど、どういう事よローグさん」

 「し、知るかリーン! 俺だって驚いているんだからな、もしかしたら世界最後の日かもしれんぞ!」

 「き、気持ち悪いっス! サンタモニカさんは何か知らないんスか!?」

 「妹の交友関係妹フレンズまでは知らなかったからなぁ……。 あぁ、先生って事はもしかして……!」

 「おっさん、もしかしてって何だ?」

 「落ち着きなさいってローグ君。 キョーコは昔、家庭教師をしていたんだよ、多分その時の教え子だったんでしょ」

 「「「え!?」」」


 その一言で、シノに近い関係のリーン、ローグ、アズサは、気味の悪そうな表情から、声をそろえて驚く表情へ変える。

 そんな様子を(驚く事なのか?)と不思議そうにコトネがジトっとした目で3人の姿を見て、更にその様子を(面白い子たちね~)とキョーコはシノの頭を撫でながら、笑顔を浮かべてそう思った。

 

 …………。


 「んじゃ、あ、ら、た、め、てぇ~。 ワタシ、サンタモニカコレの妹で本名キョーコさん、よろしく~!」


 社長椅子に座り、机に脚を乗せたキョーコは、独特のイントネーションで『改めて』と口にすると、サンタモニカを指さしながら楽し気に自己紹介する。


 改めてキョーコを見直しても、やはり美女だ。

 見た目は少なくとも20代前半。

 長い髪に、活発さを漂わせる瞳、そして楽しそうに微笑む口が顔を見るたび目に入ってしまう。

 そして、シノよりもやや身長が高いが代わりに胸は平均的、だがそれが程よく見局的な体のバランスを保っていると言える。


 そんな姿を目にしてしまったローグは珍しく。


 『きれいだな……』


 と不意にボソッと呟いてしまう。

 それが隣にいたシノの耳に入り、大変不愉快そうなオーラを放ってローグを睨む。


 「よーし、女性陣は今回特別に、アタシ自ら案内するわよ~! あ、野郎どもは後藤、アンタよろしく~」

 「畏まりました……」


 そして、それを察したのかキョーコは、男女でグループを分け、それぞれ別行動で案内を始めるのであった。


 …………。


 「あの……」

 「ん?」

 「先輩とどんな関係なんですか?」

 「へ? サンタモニカアレから聞いたと思うけど、家庭教師と生徒の関係よ?」

 「なら、なんでいつも理不尽な事をするシノ先輩が、素直に人の命令なんてきいているのですか!?」


 後列で、空腹のあまりリーンの右足に噛みつくマナと噛みつかれ『ぎゃあぁぁぁ!』と悲鳴を上げるリーン、そしてマナを取り押さえるコトネをよそに、前列にいるアズサは、嬉しそうな表情のシノにおんぶされるキョーコに不思議そうな声で尋ねたが、その回答は彼女が求めていたものではなかった。


 …………。


 ほんの数分前、いざ移動しようとした時、キョーコは。


 「あ! 歩くのってさ、めんどくさいわ……。 シノ、おぶって!」

 「は~い!」


 そんな言葉をシノに言うが、シノは笑みでそれを受け入れる。

 当然だが、シノを良く知る人物達が。


 「天変地異が起きるかもしれん……」

 「私たち死ぬっスか!?」

 「嫌よ、私は目的を達成するまで死ねないのに!」


 と冷静さを欠く事になったのは言うまでもない。

 彼女が知りたかった答えは、このシーンにあった。

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