7.二人のテロクッキング
1
それは心地よい日差しが降る、土曜日の事。
「…………」
「…………」
実に気まずい雰囲気が流れている。
店の中にいるシノとローグは珍しく口を開らかず、そして顔を背けている。
ただ、顔は赤い。
それはほんのりと、僅かな変化を示す様に。
その原因は、それを店の隅にあるテーブルに貰い物のつまった袋を乗せ、その前に座り、素敵な笑みで窓の外を眺めるリーンにあった。
「二人とも、相思相愛なんでしょ?」
ほんの数分前に店にヒョコっとやってきた彼女が言ったこの言葉は、とてつもなく強烈だった。
なにせ二人はその後、その不意打ちによって何も言葉を出せなくなったのだから。
当然それは恥ずかしさと言う感情もあるが、リーンの言葉で、二人は互いに強く意識してしまったのが大きな要因である。
リーンが
それは先日のサンタモニカとの話のとき、サンタモニカが口にした『幸福を売ってくれた事、ありがとうと感謝しておくよ』と言う言葉がキッカケだった。
あの後、この言葉が引っかかっていたリーンだったが、その言葉が彼女の世界観を広げる鍵になった。
・この世界の人々は私を対等に扱ってくれた。
・幸福を売るという行為について。
・スライム達の未来の為に。
そんな経験の記憶をかき混ぜ、彼女は結論を生み出す。
それは。
《まず、スライムの好感度を得るため、皆に幸福を売ろう!》
《そして、最終的にはスライムと人々が仲良く暮らせる世界にしたい!》
と言う、甘く、険しく、そして素敵な夢だった。
そう決心し、その第一歩として二人をくっつけようと行動した訳なのだが、それは不器用な二人が口を閉ざしてしまう光景を作っただけだっだ。
そして、リーンは思う。
(これは言っちゃいけないんだ……、まぁこれで二人がくっつけば、結果オーライだし、別に良いかな?)
と楽天的に……。
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