「ところでさ、モニさん……」

 「ん? 何よリーンちゃん?」

 「あの二人って、相思相愛なの?」

 「そうだよ、だからローグ君はシノちゃんの店に毎日通ってるし、シノちゃんはローグ君がいつ来てもいい様に、ピザの準備はしっかりしているからね」

 「へぇ……」


 リーンは、二人が自身の想定を超える関係であった事に、つい驚きの言葉を小さく漏らす。

 だが、その驚きは次への疑問を生む種になり、彼女はその疑問をサンタモニカに問いただす。


 「なら何で、二人は付き合わないの?」


 当然の疑問だが、これをサンタモニカは。


 「これは刑事としての感だけど……」


 とやや不正確な言葉の始まり方で、リーンに話しはじめる。

 サンタモニカがそんな言い方で話したのは、あくまで真実としての形を成していない為、そしてそれは彼の本質として、そういう言い方になったのである。

 そして、彼は刑事として、そして付き合いのある彼らの事、それを珍しく真面目な顔に切り替え、話し始める。


 「シノちゃんは単純に素直じゃないだけかな。 表はあんなだから強気に見えるかもしれないけど、根は恥ずかしがり屋で不器用だから、きっと。 だから『好き』なんて口に出来ないし、結局不器用で遠回しな態度でしか表せないのだろうね」

 「…………」(アレって不器用って言うレベルなの?)

 「そしてローグ君、彼も告白は無理だと思うよ。 なにせ彼は……」

 「彼は?」

 「昔、結果的にシノちゃんに守られて、ケガさせちゃったって負い目があるからね」

 「え?」


 当然、驚くリーン。

 そんな彼女に対し、サンタモニカは両手を組んで昔話をやや暗い口調で始めた。


 …………。


 あれは、出会ってから3年くらいたった頃かな?

 まぁあれから何度も取り調べする事があったから、そのうち彼の専門取り調べ役みたいになってさ。

 自然と仲良くなっちゃってね。


 ただ、彼と付き合いだして分かったのが、彼は仲間の為だけに喧嘩していたってだけで、自分から喧嘩を吹っかけて、騒ぎを起こす様な奴じゃないって分かってね。

 いやぁ良い子だったのよ、ローグ君。


 そう思い始めたある日……、あの日は熱い夏の日が沈んだ夜の事だったかな。

 夜にピザとビールとパスタ楽しいパーティセット、このセットを気に入り始めた頃で、よく夜に自転車で買い物巡回に行っていてね~。

 その日も買い物サボりに出て、近所のスーパーでその3つを買う為に出ていたんだけど、その途中の道でローグ君が女の事歩いていてね。

 とうぜん俺は、やさしく声をかけた訳よ!


 「お、少年~! こんな夜に女の子と二人でデートキスフラグかい? ヒュー燃えるね~」

 「うっせぇ! つーか、おっさん何の用よ!」


 だけど、その女の子、真面目でさ~。

 とっても可愛くて委員長タイプかな、そんなローグ君に。


 「立花君! 年上にそんな失礼な口調はいけないわよ! あ、どうも申し遅れました。 私、立花君の同級生で桜井シノと申します、よろしくお願いしますね」


 なんて怒りつつ、自己紹介して……。


 …………。


 「ちょっと待って! シノって、ええ!? シノの事!?」

 「そうだよ」

 「ええ、嘘だ、絶対嘘だ~!」

 「ホントだよ」


 あまりの衝撃の大声を上げて驚くシノ、そしてそんなシノの言葉に、にこやかな表情で答えるローグ。

 そして当然、彼女はとある疑問を投げかける。


 「じゃあ何でシノは今、あんな口が悪いの!? 凶暴なの!?」

 「そりゃあ彼女、僕と別れたあの後に、ローグ君が不審者に襲われたらしくてさ。 その時庇って頭をバットで殴られたんだって。 その後からあんな感じらしいよ」

 「へ、そうなの? ならば……」

 「ならば?」

 「バットでシノを殴れば、良い人に戻るって事?」

 「君は新手の自殺をしたいのかな?」


 だが、その疑問の結末は犯行予告であり、高度な自殺をほのめかす言葉を生んだ。

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