「…………」

 「まぁ、ドンマイとしか言いようが無いですよ、少年が怪我したのは……」

 「…………」


 外の自販機の横で落ち込んでいる宮城に若い刑事、高岡はそう声をかけるが、宮城の元気は戻らなかった。

 少年は、宮城のピザの件を重くみたのか、上層部の意見で結局釈放となり、当の宮城は3カ月の停職となった。

 だが、この判断に違和感を感じていた高岡は、宮城を励ます。


 「正直、今回暴行を行った訳でもないのに暴行扱いって、ホント妙ですよね……、正直、宮城さんのお陰でどれだけのヤマを解決したか……」

 「高岡……、いい、良いんだ別に……」

 「宮城さん……」

 「だって達川の親父の奴、所内でのピザの飲食を禁止にしたんだぞ! 酷いと思わない!?」

 「へ?」

 「よーし、ならば休みの間にピザを思う存分食べてやる! ついでにお姉さんたちとイチャイチャしてやるんだ!」


 が、正直そんな事どうでも良かった宮城は、そう言ってピザとお姉さんを堪能するべく、お店巡りを再開するのであった。


 …………。


 「おい……」

 「ん?」

 「……なぁ、何でいきなり、出会った頃の昔話を始めたんだ?」

 「ん~聞きたい友達オーディエンスがいると思って~」

 「一体何の話だよ……」


 さて現代に戻り……。

 突然昔話を始めたサンタモニカにツッコミを入れるローグだが、サンタモニカは謎の言葉を口にし、ローグの戸惑いを生む。

 そんな呆れた様子のローグに対し。


 「何、単純に話を聞き出すコツは、回り道してグダグダ展開で聞き出せってね」

 「おっさん、本気で何をいっているんだ……!?」

 「あれ~、まーた俺の口、言っちゃいけない事喋ったな? メッメ!」

 「口を叩くなよ、何か投げキッスしてるみたいで気持ち悪いぞ……、まぁいい、俺は帰るよ。 まったく何考えているんだか……」


 そう言って席を立ち、ローグは立ち去ろうとする。

 だが話を聞けていないサンタモニカは。


 「あ、ちょい待ってよ! 話聞けないと、おっさん寂しくて死んじゃうって! だから人助けすると思って、一緒に女の子の話をしようよ~」

 「ゴリラジジイみたいなマネすんな! まったく……」


 右手を伸ばし、そんな悲痛な声をわざとらしく出して止めようとするが、当然その効果は無かった。

 そして扉の向こうからローグを見送る『ありがトウございました!』と口にするロボメイドの声を聴くと、伸ばした右手をゆっくりと膝に起き、呼吸を一つ起き。


 「どう? 昔話は面白かったかな、リーンちゃん?」


 そうニッコリした表情で声を出す、すると先ほどローグを見送ったロボメイドが部屋に入ってきて、それはグニャグニャと姿を変え、メイド服はそのままの状態で、リーンの姿に変わり、そして。


 「いや~どうせ嘘かなって思ってたけど、ホントだったんだモニさん」


 軽くニッコリとした表情でそう口走り、向かい合うように席に着いた。


 …………。


 種を明かせば、前日の事。


 「……って出会いがあってさ~、そっから宮城君イケメンお兄さんこと僕と、少年だったローグ君との熱くねっとりした、運命の物語が始まったのよ! それから、ローグ君との相思相愛熱い友情の熱い物語が……」

 「絶対嘘でしょ、モニさん? うさん臭さ満点じゃない」


 間違いなく問題の始まりは、サンタモニカの胡散臭い言い方だった。

 当然、そんな話を聞いたサンタモニカは真面目な声で。


 「ホントだって! 第一僕は刑事さんポリスメンだからね、100パーセント正直ウソ優しさうさん臭さで出来ているに決まっているじゃない!」


 と自信たっぷり、うさん臭さたっぷり弁明するが。


 「でもイタリア人って嘘ついたよね……」

 「あれはジョーダンだからノーカウント……」

 「…………」


 日ごろの行いが悪い為、まったく信用が得られずリーンの冷たい目線を受けるハメになり。


 「な、なら明日それを証明するから、えーっと商店街出口の『マラッカ』ってカフェに来てよ。 そこの店長さんイイオトコには話を通しておくからさ! 何、そこの店長とは、男と男の熱い仲で結ばれ……ちょっと冷たい目線止めてよ~」


 そして今日、そんな言葉から始まったこの計画で、そのような事をわざわざ証明するためにサンタモニカを巻き込んだのであった。

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