「帰る! 生きた規則と話を続けられるか!?」

 「兄よ、会話は終わっていないぞ! 話は最後まで………全く人の話は最後まで聞くものだろう……」


 開けて外へと飛び出したローグを、コトネはそう言って呼び止めようとするが、言葉をすべて発する前に扉はしまった。

 そんな扉に向けて「全く、全く……」と呆れたと言う意思表示を口にするコトネに対し。


 「まぁ男はバカじゃから、ほっとけほっとけ」


 と祖父の源三がコトネに目を向けながら口にし。


 「バカ……」


 そう小さく動く扉を見ながら、シノは小さく呟いた。

 シノがそう口にした理由、それは店内に一番の面白みがなくなったという不満が口から洩れたようなものだった。


 …………。


 「散歩でもするか……」


 さて、店を出たローグは適当にふらつくこうと思い立ったのだが。


 「おやおや、良いのかいローグ君? せっかくの家族との再会、話さなきゃ損よ?」

 「おっさん、逃げたんじゃなかったのか?」

 「ん~ローグ君とイヤらしい話をしたくなってさ~、戻ってきた!」

 「俺はおっさんと違って変態じゃないぞ……」


 ドアの直ぐ横にうっかかってローグを待っていたサンタモニカは、茶化すような口調でローグに話しかける。

 そんなサンタモニカに対し、ややめんどくさそうな表情をしながらも、適当に会話をしてあげるのだが。


 「お、変態って誉めてくれて、実に嬉しいなぁ~。 よーし、おっさん奢っちゃうぞ~、美味しいごはん、奢っちゃう~」

 「お、おっさん! 俺は別にほめてないぞ、だから手を離せ! 俺は一人でいたい気分なのだか……」

 「オッサン、イタリア人ダカラ、日本語ワカリマセーン!」

 「嘘をつけ、純日本人の癖に、はーなーせー!」


 とても強引にローグはサンタモニカに連れていかれるのだった。


 …………。


 場所は商店街の一角にある、とある店の中。

 様々な色が目に付く派手な店内の個室に案内された二人がメニューに目を向けていた時、扉を開けて金髪メイドが注文を伺いにやってきた。


 「イラッシャイマセ、ご主人様! ご注文はお決まりデスか?」

 「そりゃ、ロボメイド君、君のパンツを……ごふぁ!」

 「キャー、ご主人様のエッチー! ところでそちらのゴ主人様は、一体何ヲご注文ナさいますか?」

 「……サンドイッチのセットを頼む」

 「少々オ待チ下さい、ご主人様!」


 人とうり二つの金髪メイドロボに注文した後、ローグは呆れた表情でサンタモニカの悪趣味に苦言を呈する。


 「おっさん、良い趣味してるな……」

 「だ、だろう……? 可愛いメイドのロボットが接客してくれて、その上イタズラしたら、お仕置きをしてくれるんだぜ! もう最高だろ……!?」

 「あぁ、メイドカフェでメイドロボに顔面パンチを食らって冥途に行きかけてるのに興奮するなんて、ホント最低だな……」

 「ちなみに、Mシュランガイドで星3つを貰った凄い店なんだ! ちなみにコレが今月号ね?」

 「あぁ凄いな。 グルメガイドに全力で喧嘩を売る、このドMガイドを書いた奴は……」


 そう言ってサンタモニカから差し出された一冊の雑誌には『夏に流行る、ドM向けロープワーク術』なる最低な文字とロープをもった体毛の濃い男が移っている。

 だが、そんなことをしてもローグのサンタモニカの評価は下がらなかった。

 それは下がりようがないから当然だが……。


 「ところで……」

 「ん?」


 ため息をつきかけたローグにサンタモニカが珍しく真面目な顔をして話しかける。

 そんな表情に「どうせ冗談だろ?」と思いながら、気楽に話を聞く体制を取ったその時。


 「ところで、シノちゃんの気持ちに答えないのかい?」

 「…………」


 不意を突かれたローグは静かに固まった。

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