5
「な、何しやがる!?」
「何しやがるとは、随分な挨拶ですね~、黒川く~ん?」
そして、ヘルメットの人物は軽くヘルメットを揺らすと、それをヒョイっと持ち上げる。
「せ、先輩!?」
「げげ、シノさん……、ど、ど、ど、どうしてこちらに……」
すると、ニコニコしたシノの顔が現れる。
そして、シノは黒川に近づくと、のど元を掴んで。
「いや~ダメですよ~、この子は今日は私の店のお手伝いをする事になっていたのですから~、ほぼ毎日~」
そう優しさと怖さを入り混じらせたような声で黒川に話しかける。
だが黒川も顔を引きつらせながらも諦めない様子。
「へ、へぇ~そうなのですか~……、それでいつ空くので……」
「空きませんよ~、アズサはアナタと遊んでいる暇は全くないのですからね~。 遊びたいのでしたら、アナタが4股している事をバラした上で……」
「す、すいません! もうアズサさんには言い寄らないので勘弁してください!」
しかし、残念ながら弱みを握っていたシノの前にしては、撤退するしかなかった。
そして、おとなしく車に乗って去っていく黒川。
そんな車を眺めるアズサの前にヘルメットが差し出され。
「ほら、行きますよ~」
「は、はい!?」
アズサはシノの乗ってきた大型バイクで店へ向かうのであった。
…………。
それから店につき、数時間経った店内では……。
「まったく、気持ちよさそうに寝ているな……」
「グー……グーー……」
【 (-_-)zzz 】
酔っぱらって床で爆睡するアズサ。
そんなアズサの右足を枕にして眠るマナ。
そして毛布を掛けられた二人を優しく眺めつつ、酔っ払いの作った汚い湖を掃除するローグの姿があった。
あの後、珍しい事にシノがパーティをやろうと言い出し、ローグ、アズサ、シノ、マナの四人でパーティを始めた。
いつもであれば、店で酒を飲むことを禁止されているアズサだが、この時ばかりは不思議と許され、今日の事もあり、どんどんカクテルを飲み続けるアズサだったが、今日は珍しく酔いつぶれて眠ってしまった。
「素直になれない奴め、全く……」
そして今、店内にいない人物に、ローグは小さく文句を口にした。
そんな店内の外では電話をかけるシノの姿があった。
その相手は、なんとサンタモニカである。
「もしも~し、変態忍者さんのお電話ですか~」
「はいはーい、
「通報しないだけ優しさだと思いますが?」
「いやいや、そこは
「次は槍を買ってきて、天井に刺しましょうか?」
「流石に死んじゃうって……」
シノの殺気めいた声に流石にあやまるサンタモニカ。
変態でも命は惜しいらしい。
「さて、本題ですが、今日は助かりましたよ、黒川を張っていてくれて。 ストーカーと変態も紙一重ですね」
「それ普通の人には罵倒だからね、両方とも」
「いえいえ~誉め言葉ですとも~、まぁ感謝しますよ~、お陰でアズサが手を出されずに済みましたし、タイミング良くお灸をすえる事が出来ましたから~」
「なら、素直に受け取っちゃうかな、誉め言葉!? まぁ冷たく言われた方がって言うのはあるけどさ……。 ところで、何でチャラ男君が今日動くってわかったの?」
「いつもゼミの後に黒川は声をかけてましたからね~。 だから黒川の動きが読めたのですよ」
「ほほう、なら
「槍を股間に当てますよ?」
「ごめんなさい……。 アレは力の源なんです……」
殺気めいた声にビビるサンタモニカ。
そんなビビった声を出したサンタモニカの声に、フフっと笑みを漏らすと。
「さて、感謝も述べましたし、私はこれで。 電話番号は消しておいてくださいね~」
「はいはーいっと……」
その様に礼を言い、電話を切った。
そして、シノは。
「全くあの子は、流されてばかりで心配なのですから……。 本音を言えるようになれば、こんなマネ、する必要もないのでしょうけどね……」
星がきらめく漆黒の空に、優しい愚痴をこぼし。
「あ、アズサを守る事ばかり考えていて忘れてました。 明日リーンを追いかけまわしてお灸を据えなければいけませんね」
リーンの事を思い出し、真顔でそう独り言を漏らすのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます