4
バチバチバチとスタンガンの音色が町内を移動し続ける店外をよそに、店内では、アズサとマナがやっと落ち着きを取り戻した。
「落ち着いたか……?」
「はい、落ち着いたっス……」
【 (-_-;) 】
「なんか俺も冷静さを失っていた、すまん……」
「い、良いっスよ全然……、オイラも冷静さを失ってたみたいで……」
そして和やかな雰囲気が流れだした頃、ふとアズサの視線に時計が入る、すると。
「あ、そろそろゼミの時間っス!」
「ん、そうか。 なら行ってこい」
アズサの本日、唯一の授業の時間を受ける1時間前。
なのだがアズサには一つ心配があった、それは……。
「店、大丈夫なんスかね……」
店主が鬼ごっこに興じているこの店をどうするか?である。
そしてアズサは。
(客が来ることはほぼないっスけど、それをローグさんに押し付けるのも……それにマナちゃんの世話も考えると……、やっぱりゼミを休んでここにいた方が……)
そんな気遣いを頭の中で張り巡らせる。
だが、そんな気遣いを脳内に浮かべているであろう事は、流石にローグも見抜いていた。
「お前、店番とマナの世話は俺がする、だから行ってこい!」
「へ?」
「行ける時に行っておけ、単位落とすわけにはいかないだろう?」
「は、はいっス! ローグさん、ありがとうございますっス!」
【 (∩´∀`)∩ 】(頑張れ~)
「マナちゃんありがとうっス! オイラ、頑張ってくるっス!」
そんなローグの気遣い、そしてマナの応援を背に受けたアズサは気分を切り替えて大学へ向かうのだった。
…………。
「という事で、本日のゼミは終わります。 まだ卒業まで2年はあるけど、そろそろ卒業論文を考え始めなさいな、君達……。 まぁだからと言って、君たちの先輩みたいに考えてから一か月で終わらせる必要もないからじっくり書き上げなさいよ」
「はぁ……」
白髪の似合うメガネ紳士である白川教授のその声でゼミは終わり、アズサはため息をついた。
彼女はまだ何を卒業論文にするか?全く思いついていないのである。
(どうするっスかね~、卒業論文……)
彼女はそう思いつつ教室を後にして、バス停に向かう。
すると。
「おい、アズサ!」
「へ?」
彼女を呼び止める男の声がする、そして彼女はその声の方を向く。
一言でいうならチャラ男だ。
金髪に染め、色を大雑把にかき混ぜたような派手な服を着ているやや軟派な雰囲気を醸し出すやや細身の長身。
だが、アズサはその男が苦手だった。
「な、何……かな、黒川君……」
その為、同級生である黒川から距離を取りながら、弱弱しく話す。
その理由は。
「お前さ、今回合コンすんだけどさ、ちょっと予約とかやってくんない!」
「いや、その……」
「てか、お前無駄に可愛いから人数合わせに来いよ!」
「え~っと、その~……」
この様に無理やり幹事を押し付けたり、合コンに連れて行こうとするからである。
以前までは、学校に遊びに来てはシノが無理やり連れまわしていたので、黒川がそうやって誘うスキもあまりなかったが、シノが最近あまり学校に来ない事に気が付き、日々その回数は増えて行っている。
そんな様子を他のゼミ生は、我関せずと言わんばかりにスルーして去っていく。
「ほら、せっかく俺が誘ってやっているんだぜ! 来いよ、ついでに俺が家まで車で送ってやるから!」
「え、あ……!?」
(誰か、助けて……)
彼女はそう言う目をして静かに訴える、だが周りの生徒はそれに気づかない。
そして彼女はどんどん黒川の、黒の普通車へと連れていかれ、そして黒川はキーのボダンを押し、ドアのロックを解除する。
(あぁどうしよう……)
アズサがそう困り果てたその時だった。
「おーい、黒川~」
「ん? ぐば!」
二人の背後から現れた、黒いライダースーツにフルフェイスのヘルメットを被った人物が思いっきり黒川の股間をけり上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます