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「うえーんローグさん! 先輩酷いっスよ~、からかい方が悪質っスよ~!」
「……冷血店主さんよ。 からかうにしても泣かせたらだめだろう?」
「あ、ありがとうっス、ローグさん優しいっス!」
店に入るなり泣きつかれたローグは、ある程度状況を把握したのかシノに呆れた顔を向ける、だが。
「いやー愛情ですって~、愛情。 それも泣いてしまう程の素晴らしいものですよ」
「なるほど、なら仕方ないな」
そんなふざけた反応と、からかいがいのあるアズサの表情に、ついローグのいたずら心がうずいてしまい、そんな冗談を口にしてしまう、だが。
「ひ、ひどいっスローグさんも! うわーん!」
「じょ、冗談だぞアズサ! 俺は冷血店主と違って暖かい血が流れているからな、俺が悪かった!」
「うわーん!」
冗談と分からなかったアズサは遂に泣き出してしまい、それに驚いたローグは急いで謝罪するが、残念ながら手遅れ。
アズサは泣き止んでくれなかった。
さて、そんな鳴き声に引き付けられたのだろうか?
【 (一一") 】(眠い……)
あくびをしながら、マナが眠そうな顔をしながらカウンターの奥の階段から降りてくる。
そんなマナを見た3人は。
「よっマナ、遅い起床だな!」
「おや、起きてしまいましたか?」
「グス、グス、お、おはようっス、マナちゃん……、うわーん!」
とあいさつするが、アズサが鳴いているインパクトが強すぎたらしい。
ボロボロ涙を零しているアズサの顔を見て。
【 (; ・`д・´) 】【 ((+_+)) 】【 (@_@) 】
まったくどうすればいいのか分からないらしい。
戸惑った表情を浮かべ、視線を右往左往、足取りも右往左往、そして運悪く足を絡ませてしまい。
「ピ、ピ、ピーーーピーーー!」
頭を机にぶつけ、その衝撃で傾かせ、乗っていた皿等を全て床へまき散らして、泣き出してしまう。
そんな予想外の事態は、ローグとシノを大変困らせる。
「おいシノ! どうする、どうする!?」
「どうすると言われましても、私もどうすればいいのやら……」
「そうだ、笑わせるんだ! どうにかして!?」
「そ、それには納得します! でもどうやって!?」
「わ、分からないがどうにかして……」
「ど、どうにかってどうするんですか!?」
珍しく動揺している二人、その口調はいつもに比べやや早く、呼吸も荒い。
罵倒が趣味の二人もマナの前では形無しのようだ。
「では、こういうのはどうですか? 全力の誘い笑いで……」
「わ、分かった。 と、とにかくやってみよう……」
そして二人は、顔を合わせ、コクリと頷いた後。
「「二人とも!」」
とローグとシノは二人に声をかけ、アズサとマナの二人は、その声に反応して二人の方を見る、そして。
「「百万ドルの笑顔!!!」」
ローグとシノの二人はそう言って、笑わせる気があるのだろうか?と疑問を持たざるを得ない、迫力ある全力の笑顔をアズサとマナに送る、そして。
「わーーーん、わーーーん!」
「ピーーーーピーーーー!」
それは、二人をより激しく泣かせる事になり。
「あんた達! マナの鳴き声が聞こえたわよ!」
バンと勢いよくドアを開けて、スライムのリーダーを呼び寄せる。
そしてスライムのリーダーは。
「もうアンタにマナを預けておけないわ! その子はうちに連れ帰って……うわ、うわわわわ!」
地面に散乱した食事(バナナ)を踏んで滑り、両手を真上に伸ばした状態で、シノの前へ倒れる。
そして運悪くシノの綿パンに手がかかり、露わになるTバック。
そんなTバックを履いている人物の顔を見たリーンは顔を青ざめさせると、急いで立ち上がりサッと店から逃げ出した。
そして、静かにズボンを履きなおすと、シノは無言で
その一部始終を見ていたローグは、その時ばかりは「リーンが悪い」と擁護を地面に投げ捨て、静かに席についた。
そして、そんな追われ追いかけあう関係の二人の姿を見た社会人陸上部の監督は「と、トラック&フィールドにすさまじい新星が現れた」と腰を抜かすのであった。
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