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「はぁ……」
「おや、どうしました? どうせ単位は二年間で殆ど取っていて、割と暇でしょうに?」
「あ、いや~っスね……」
「今日の昼からのゼミの事ですか? 全然間に合うでしょう?」
「いえ、その~っスね……」
「ん~?」
「オイラ、手伝う必要があったのかなぁ……っと思ってっスね」
「そんな事は気にしなくてもいいから、朝食を取りなさい。 食事は暖かいうちに頂くのが礼儀ですよ~」
営業時間が店主の気まぐれである店を朝六時に開店して早2時間、店内には昔の曲が流れるだけで、一向に客は来ない。
そんな、二人しかいない店内では今、木製の皿に乗った、シーザーサラダ、ポタージュスープ、焼きたての食パン、程よく半熟になった二つのゆで卵、そして食後のデザートのバナナが店の隅のテーブルに2人前並べられて、その前に二人が座る。
これが、アズサが来た時の店の平常である。
「いや、そうじゃなくてですね……、お客が基本あまり来ないじゃないですか、その、とっても失礼な話っスけど……」
「本当に失礼ですね、アズサは~」
「お、怒ってるっスか!?」
「起こる気にもなりませんよ、事実ですから」
「ほっ……、でしたら、オイラは手伝わなくでも……。 あまりお客が来ないのに、毎回ボランティア代とか言ってお金貰うの、なんか申し訳ないっスよ?」
「良いんですよ~、それくらい……」
「先輩……」
この時初めて、アズサは先輩シノの優しさに感謝した。
それはシノに対する恐怖の光が強すぎて、優しさと言う闇が見えずらかった為だろうか?
それが偶然逆転した今!
「だって、そんなお金でおもちゃになってくれるのであれば、安いものですし~」
「お、オイラおもちゃじゃないっス! さっきまでの感動を返して欲しいっスよ!」
そこからの落差は、通常より大きい衝撃を生む。
その為、アズサの瞳には涙が溜まり、それは今にも零れ落ちそうになっているのだが……。
「ぷ、ぷくく、くくくくく……」
シノは、それすらも楽しそうに笑っているのであった。
そしてその時、救いの光が舞い込むように、店のドアが開いた。
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