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「……とりあえずだ、話を整理していくべきだと思うが、異存は無いな?」
そんなローグの言葉に、同じくカウンターに座る、笑顔、戸惑い、酔っ払いの三人は。
「私はニート様の考えに賛成します、ニート様の!」
「え、え? 何、何、スライム買ってくれるの? くれないの?」
「あう、あう、あうあ〜……、先輩、オイラ気持ち悪いので水プリーズっス……」
と皆がゆっくり右手を上げて皆納得の模様……。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ! 納得します、スライム買う事とか後にして、納得します!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ! ごめんなさい、オイラ納得、納得するっス! そして吐かないっスから! だから先輩、スタンガンを押し付けないで!」
シノの説得によって、二人ともしっかり手を上げて、納得の模様。
そんなスタンガンを使った平和的な説得を行ったシノを見てローグは。
(まったく……)
呆れた顔を浮かべ、天井を見つめた。
…………。
そして30分ほど、皆で話し合い理解された事がある、それは。
リーンの目的。
リーンがスライムである事。
シノはとっても口が悪いこと。
ローグが意外といい人であること。
アズサはちょっと残念な事。
という情報。
そしてこの情報が皆で共有されて、初めに口を開いたのはローグだった。
「さて、とりあえず皆で状況は理解できたと思う……、解散!」
「ちょっと! スライムの話はどうなるの!?」
「リーン……、解散!」
そう言ったローグの頭の中には今。
・それは本当なのか?
・シノとアズサに危険は及ばないのか?
・侵略等の恐れはないのか?
・監視の必要があるか?
等、さまざまな疑問や警戒心が脳内を支配している、そんな思いを感じさせない、柔らかな笑顔を浮かべつつ。
そして、解散という結論を出したのには、シノとアズサをこの得体のしれない出来事から離すため、その後こっそり監視を行い、発言が真実なのかを見極める為と言う理由がある。
それは彼の正義感や表に出さない優しさ、その辺りの感情なのだろうが、そんな気持ちなど分かるはずも無いリーンは。
「何で、何で解散なのよ、ローグさん! もう少し話を聞いてよ!」
とやや激しい声で、顔をローグに近づく。
リーンだって必死だ。
前の世界では、スライムは多種多様の目的の為に利用され、激減してしまった。
そんな中、スライム達の中でも飛びぬけた再生能力や変身能力等を持っていたリーンに、仲間たちの「助けて」と言う悲痛な声が彼女の耳に一杯届いた。
だからこそ、一生懸命で心優しい彼女は、そんな彼らを少しでも早く助けるためにここで話を終わらせたくなかった。
だが。
「最もオール・ユー・ニード・イズ・ラブが似合わなそうな雰囲気で面白いですね~」
「先輩、オイラはそんな先輩の言葉にヘルプを出したいっスけどね」
「……あ~、私はア・ハード・デイズ・ナイトを聞きたい気分ですね~。 ビコーズ、それはあなたが吐いたからでしょうね~」
「……オイラが悪かったですから、話をジ・エンドにしてくださいっス」
そんなピリピリした二人の様子を見ながら、先輩後輩コンビが呑気に曲名を入れた会話を繰り広げ、そんな会話が不意に聞こえたローグは「ふふっ!」っと鼻で笑ってしまう。
「へ? 何? どうしたの?」
だが、突如ローグが笑うという状況から発生した小さな和やかさは、リーンを置いてきぼりにし、どう反応するべきか分からなくなったリーンは、キョトンとした目でそんな三人を見る。
念のために言っておくがリーンは決しておかしくはないのだ、これが一般の反応なのだ。
故に。
「いやね、アレだよ。 リーンちゃんはね、こっちの世界の事をね、分かってないからね、そんな反応しちゃったんだよね? 大丈夫! かわいい子は何でも許されるからさ、男ってそんなもんだよ!」
「「「「!?」」」」
いつの間にか缶コーヒー片手に席に座っていた、このくりっとした目が印象的な純日本人の中年男、通称サンタモニカもリーンをそう言ってフォローするのであった。
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