第2話 入学式

『皆さん、ご入学おめでとうございます。この対機獣特殊機関養育施設施設長、いわば学長になります。的場勇といいます。必ず皆さんを立派な戦士、技師、そして術師にすると誓いましょう。我ら職員一同、そして生徒一同、貴殿方を歓迎します』


 入学式が始まり、学長の長い話も比較的コンパクトに進んでいった。そして話は基本規則となる。


『初めまして。生徒会長を務めさせていただいてます。檜山志恩です。この校内での基本規則となりますが、まず、支払いは全て校内専用カードでの支払いとなります。これは毎月自動的にチャージされ、買ったものなどはしっかり記録されていきます。…次に、皆さんには寮生活をしていただくわけですが、原則二人一部屋となっています。そして、その組がこの学校生活でのペアとなります。いいですか、一人で何でも出来るとは思わないでください。困ったとき、他人に頼ることをしてください。それが、貴殿方の身を滅ぼさないための鍵となります。……では、よい学校生活を』


 時間は九時をとうに過ぎていたが、学校側も何らかの事情があったらしく、入学式は予定より約一時間後の開始となった。

 会長の話に気になるところがあったが、何の問題もなく、入学式は終わった。


(一人で何でも出来るとは思うな、ね。……そんなこと、一人で解決する努力すらも怠る奴の言葉だろう)


「宗方! 次、教室移動だろ? 一緒に行こうぜ」


(こいつは、さっきの)


「勝手に行けば良いだろう」

「つれねえなぁ。俺は宗方と一緒が良いんだって」

「俺は誰かとつるむ気はない」


 宗方の明らかな拒絶の言葉に、周防は気に障ったかのように眉を潜める。


「つるむって……俺はお前と仲良くなりたいんだけど」

「俺はそんな感情持ち合わせていない」

「……はぁ、宗方さ。そんなんだと、この閉鎖的な学校で独りになるぞ」

「別に構わん。むしろ本望だ」


 電気でも流されたかのようにビクリと震えて以降、下を向いて動かなくなった周防を気にする様子もなく、宗方は自分の教室へと歩いていった。

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