永遠の瞬間
勝利だギューちゃん
第1話
あの時から、僕の時間は止まった。
愛する彼女が、旅立った。
交通事故だった。
理由は相手運転手の居眠りが原因だった。
運転手に恨み節を言おうと思えば、いくらでも言えた。
でも、僕はそれをしなかった。
その運転手も、これからは十字架を背負って生きて行くので、
それで、よかった。
許せないのは、僕自身だった。
その日は僕の誕生日だった。
彼女が手料理で、お祝いしてくれると言ったので、
僕はそれに、甘えた。
僕がその時に、「どこかのレストランで」と提案しておけば、
彼女は、死ななかったものと思うと悔やまれる。
その日、僕は彼女にプロポーズするつもりだった。
でも、出来なかった。
彼女の遺族は、僕を慰めてくれた。
一番つらいのは自分たちなのに、僕を勇気づけてくれた。
でも、全ては僕のせいだ・・・
自分を非難する日が続いた。
彼女のお通夜も、葬式も終わった。
でも、僕の時間は止まったままだった。
仕事には、ちゃんと行った。
日々の生活も、きちんとした。
でもどこか、上の空だった。
ある日、彼女の両親からメールが届いた。
「娘の部屋を見てほしい」
それだけが書いてあった。
次の休みの日、彼女の家に行った。
ご両親にご挨拶をして、彼女の部屋に入れてもらった。
散らかっていた・・・
でもそれは、衣服が散乱していたためだ。
あの当日、僕が気にいるような服を選んでくれていたようだ。
ぎりぎりまで悩んで、あわてて飛び出したようだ。
お母さんには、嬉しそうに話していたらしい・・・
悲しくなった。
もう、彼女はいない。
主を失ったこの部屋も、時間が止まったままだ。
彼女の部屋には、僕がプレゼントしたぬいぐるみが飾ってあった。
全部、クレーンゲームの景品だが、彼女に頼まれてゲットした。
「娘はとても、大事にしてました」
お母さんが、話してくれた。
机の上には、彼女の日記があった。
お母さんの許可を得て、読ませてもらった。
最初は、日頃の事や僕の事が書かれていた。
だが、最後のページには、驚くべきことが書かれていた。
「昨日、産婦人科に行った。そしたら、妊娠3カ月だった。
○○くんの子だ。喜んでくれるかな」
僕は涙をこらえる事が出来なかった。
生前、彼女と話した事がある。
もし、子供が出来たら、何て名前にしようかと・・・
そこで、決めた。
「男の子なら、勇気。女の子なら、瀬梨」と・・・
そうだ。僕は立ち止っていられない。
勇気を持とう。そして、競勝とう。
生まれてくるはずだった、子供のために。
そして彼女の名前だった、太陽の陽子のように・・・
永遠の瞬間 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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