金以外に作家に必要不可欠なこと。

 金があれば良いのか?って話をしよう。


 金があれば良い、これは皆が思うことだろう。 無尽蔵に湧き出る金、不労収入……誰しもが憧れることだ。 なるほど、確かにそんな状況になったことはないから、なったら素敵なんだろうな。 しかしだ、意外とも思われるが、俺は金があっても仕事がないと人間腐るよって意見なのだ。 今日は僕なりのお金と仕事の話を綴っていこう。



・寝てても金が入ってくる。

 俺は不労収入で過ごしていた時期が大人になってから数回ある。 会社を辞めた後にもらえる失業保険の給付ってやつだ。 額は働くより少ないが、それでも大変な思いをして働いていたときよりも数万低いくらいだった。 もともと疲れて辞めてしまったわけだし、まぁまぁの不労収入で生活を安定してダラダラしていた。 当然はたらく気なんてサラサラないが、毎日がただ過ぎていく感じで、意味もなく散歩に行く回数が増えた。 そのときに思ったね、「あぁこれ。 大学時代と一緒だ」って。 

 

 違いがあるとしたら、身体はオッサンになっていたってことだ。 工藤新一の逆バージョンってやつだね。 俺は歩きながら「何ができんだろう?」って考えた。 その答えはすぐに出たね。 「何もねぇや」って。 


・ドトールで読書が仕事。

 何も出来ることがないあの頃の俺は、スマホと本とタバコを持って高幡不動駅内にあるドトールに良くいた。 一杯300円くらいのアイスコーヒーMと水をもらい、喫煙席でタバコと名前しか知らない誰かが描いた世界観にひたる日々。 給付日が来て、少し懐が潤ったらケーキセットでチーズケーキも頼んでいた。 


 哲学書から漫画まで、いろんな本を読んだと思うが、そのときのことを思い出そうとすると、手塚治虫の「陽だまりの樹」を思い出すのはなんでだろう。 まぁいいや。 それを読みながら、嘱託職員として学童で働いている母ちゃんから連絡があるのを待っているんだ。 彼女が仕事を終えたら、国立まで迎えに行かなくちゃいけないから。 それだけが家族が無職の俺に任せた仕事だったわけだ。


・ 陽だまりの樹を読みて想う。

 陽だまりの樹はハードカバー文庫で全8巻くらいある漫画だ。 幕末から明治に変わる激動の時代に、武士としての生き様を変えられずに死んだ伊武谷万二郎の生き方と、新しい時代を切り開こうと奮戦する蘭方医の手塚良庵……その2人を主人公として漫画の神・手塚治虫が描いた長編だ。 ソイツを読みながら、俺は昼過ぎからドトールに待機し、夕方近くにかかってくるであろう母ちゃんからの電話を待っているわけだ。 ただ、それだけでは暇になるから、窓の外を歩く人達を眺めては人生を想像する遊びを始めるのだ。


・見知らぬ少年の背中にエールを。

 高幡不動駅は文字通り高幡不動尊金剛寺があるから出来た駅。 行き交う人々の年齢層は高い。 正式名称も売っているのも見かけたことがない手押し車を押しながら歩くおばあちゃんと、杖をつきながら歩くおじいちゃん。 彼らは自らの人生にある程度の答えを出した人たちで、その顔は福々しかったり、諦観を讃えていたり、苦虫を噛み潰したかのような顔をしたり十人十色。 


 俺は勝手に彼らの半生を想像したり、なんで手押し車っておばあちゃんだけしか持ってないんだろう? おじいちゃんは手押し車を利用しないのかな?なんて考えていた。 時折学校をサボった高校生や真面目そうな大学生が通りかかると「俺みたいになるなよ」と、頭の中でエールという名の武勇伝を語ったりしていた。 要するに暇だったのである。


・暇で金がないと想像くらいしかしない。

 暇だし別に金を使ってやりたいこともなかった俺。 ネットでYOUTUBEを見るのも飽きており、ひたすら散歩と空想を繰り返す。 当時の百草団地は10棟くらいあって、両親が住んでいた7号棟は小高い丘の頂上に建っていた。 屋上からは新宿の高層ビル群を見渡せて、俺はそれが気に入っていたから、アイポッドとチーズバーガーセットを持って良く日光浴をしていた。 


 顔を合わせる度に「お前は駄目なやつだ、お前を必要とする会社なんてない」などどフリースタイルラップバトルをしかけてくるニートのオヤジに「まぁ、お前の息子だしな。 おふくろの遺伝子だけだったら良かったのに余計な血を入れやがったな。 お前の息子はダメ息子。責任とって死ぬまで働けくそオヤジ」と言い捨てる毎日。 そんなサイファーに飽きたら屋上でダラダラ。 


 思うのは「あそこでは皆働いてんだよなー。 俺、どうしようかなって。 なんか楽しいことしたいなー」って思いながらも、これkらダメになっていくであろう未来に倒錯にも似た快感に酔いしれる日々。  しかし、それにも飽きるのである。 そろそろなんかするかって思い始めるのである。 


・それすらも飽きる。

 さて、何をするかって話だが、これがね、出来ることがないと「何もできない……」ってなって、働く気がなくなるんだ。 んじゃ漫画喫茶行くか、ドライブ行くかってなるんだけど「働くか」って気になるのは、それもダルくなってきたあたりなので行く気にならない。 働く気にもならない。 すると趣味を増やすか、なんか資格を取ろうかなと思うわけです。「なんの資格がいいんだろ。 手っ取り早く取れて、見栄えがして、食えるやつがいいなー。」って、本屋とネットでダラダラと検索する。 で、めんどくさくなるわけです。 


 早い話、どんな資格でもそれなりに勉強したり、努力を費やさないと取れないし、取ったとしてもそこから食えるとは限らない。 ギャンブル脳になった今では「20%の期待値があるならやる!」ってなるのですが、当時の俺は70%以上の期待値がないとやらなかったのです。


・パチンコから人生が動き出す。

 ダラダラとした毎日に少しの刺激が欲しくて、パチンコ屋にいくわけです。 そこで4円パチンコを打ってしこたま負け、金が心もとなくなったら一円パチンコを打って少しずつ取り戻して4円に挑戦する。 

 

 結果的に一円で10万くらい負けて、次の支給日までダラダラと過ごす。 支給日が来たら金を握りしめて4円を打つ……その繰り返しで立派なパチンコ脳になっていき、気がついたら手元には0円。 親からは出て行けと激怒され、本当に出ていって一人暮らしが始まるわけです。 するとどうなるか? 家賃が発生するわけです。 支給額だけでは足りないから消費者金融から借金するわけです。 返せなくなって日雇い派遣を始めるわけです。 


 返済が追いつかないから金利だけ払ってを繰り返して、徐々に働く日数が増えて、ついに「このままじゃずっと辛いだけだ……今後を考えないとダメだ。 俺に何が出来る? 何も出来ない……いや、ギャンブルは出来ていたじゃないか。 下らないギャンブルに時間を使うより、人生をかけたギャンブルをしたほうが建設的じゃないのか? そうだ! 物書きになろう! 珍しい経験もしているし、毎日のようにウソや下らないことを考えているし、俺ならできるんじゃないか?? 物書きならセンスだけでなんとかなる! わーい!俺の将来決まった!わーい!」となるわけです。 


本当に浅薄な男でございます。


・だから今になる。

そんな決意をして5年目。 宮本武蔵さんは言いました。「千日の稽古をもって鍛となし、万日の稽古をもって錬となす」って。 まぁ3年を修行とし、30年を経て一人前ってことでしょうか(刃牙道)。


 あれから5年。 いろんなジャンルの記事を量産できるようにはなったけど、映画の脚本は書きまくったけど、未だに完結した小説はないなぁ。 こんなんで良いのだろうか?こんなはずじゃなかっただろ?と思いながら、今日も元気にパチンコ屋でハンドルを握っているわけですが。 


 でもまぁ良いんです。 宮本武蔵さんも言ってます。「心、常に、道を離れず」「身を浅く思ひ、世を深く思ふ」「打ち込む態勢をつくるのが先で、剣はそれに従うものだ」と。 自らを大きく思わず、物書きになると決心して好奇心を持ちながら生きることが重要なんです。 自分自身の生き様を貫徹していれば、おのずと文体に出るのでしょう。 それが面白いと言われるまで書き続けるだけです。


・仕事は金を生む。 

 小見出しの通りだと想うんですよ。 金に囚われたらずっと金を稼ぎ続ける生き方になるし、仕事に没頭したら金は出ていくし入ってくる。 つまり、どんな仕事をするのかってことです。 お金と仕事のバランスって大事ですよ。 いくら高収入でも仕事内容と見合ってなかったら「こんなんで良いんだろうか?」って疑問とか焦りが出ますし、逆なら「ふざけんな! 俺の仕事を安く買いやがって!」とかなります。 対価と労働が見合ってたら文句はないんでしょうけどね。 そこってなかなか難しいでしょう?

 

 自分のやりたいことをやれてる人って幸せなんだろうなぁって思います。 ただ、やりたくなかったことをやりたいことに変えるセンスってあると思うんです。 それが才能なのかもしれないですし、やりたいことを仕事にしましたけど、ずっと頭の中でクエションマークが付いてますよ。 「これって俺がスゴイんじゃなくて、媒体力と広告の力だよね」とか「これが書きたいんじゃないんだけどなぁ……」「やべ、仕事途切れた! 明日からどうしよう!?」って。

 

・終わりに。

 金と仕事を考えていて出た結果は、仕事をしていて生まれる疑問やストレスを霧散させるだけの手段を持っているのが続ける上で必要だってことです。 それって趣味とか恋愛とかって呼ばれるわけですけど、マイナスを留めないようにするのが重要になると思うんです。 仕事で抱えたネガティブをポジティブに置換するためには「子供のため」とか「両親のため」とか使っても良いんじゃないかな。 ただ、物書きはマイナスに向き合って分析、検証、構築をしなければならないので、やっぱり病みやすくなりますよね。 


 ダラダラ書いちゃいましたね。 まぁ、書くことが楽しめているうちは全然大丈夫でしょうけど「書かないと死んでしまう状況になったら楽しいだけじゃ辛いですよ。 モチベーションを保てる手段が必要になりますよ」ってことで結びましょうか。 途中で文体が変わっていくのは、時間経過で現在に近づいているってことにしておいてくださいませ。 では、ご精読、誠にありがとうございました。

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